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私のところにギルドの職員から連絡があったのが、今日。私自身も忘れていたあの依頼…


その冒険者は明日の夜に訪ねてくるみたい、私は家の裏手にある秘密の通路を通ってある部屋を目指す、薄暗い通路の突き当たりで小さな呼び鈴を鳴らす。扉は音も無く開かれる。


『アンナ、仕事よ』

煌びやかな部屋の中に豪華な装飾品、派手なドレスの女。


『イシュト様、なにを調べればいいのですか』

『情報は少ないわ。カクレという冒険者のことを明日の夕方までによ』

『わかりました、確認できている情報はありますか』


『昨日の夜ギルドに登録した新人で夜しか活動できないそうよ』


アンナは難しい顔をして考えている様子。

『わかりました、明日の昼にはいつものように連絡いたします』

『頼んだわ』


私は来た道を戻り自分の部屋へと進む。

子供のお小遣いを稼ぐ為に依頼を受けた冒険者、明日の報告が楽しみだわ…



翌日、私は驚いた。

いつものように手紙が届き、そこに書かれている情報の少なさに、そして不思議な内容に驚いた。

『アンナ達でこれだけしか情報を集められないなんて…』つい、口からこぼれてしまった。


見たことのないような格好、力なきものが淘汰されるこの世で人知れず人を助けることを信条としているような言動、それに変な話し方。


『にんじゃね…』

ギルド窓口の子も苦労したみたいだけど、これは直接見極めるしかないようね…楽しみだわ。



約束の日、私は楽しみに待った。

第一印象は頼りない細身の優男。その手は柔らかく、荒事には向かないかな。


話してみたら、頭の回転は速そうね。女性慣れしていないところも私的には高評価。

ちょっと照れているところがかわいい。

扱いやすいのか、扱いにくいのか判断に困るわね。でも、心配になるくらいお人よしね。

私を警戒しているのに話を聞くなんて…素直にせまられると断れないか…


にんじゃが何かわからないけれどそうとうこだわりがあるのね。



面白い子…この子なら本当にあの男も興味を持つかも知れない…



『拙者であなたの助けになるのなら、可能性があるのなら引き受けるでござる』

『本当に…本当にいいのですか…』

『拙者はにんじゃでござるゆえ、泣いている女性を見放したりはできないでござる』


あの男にぶつけてみましょう…


『ありがとうございます、カクレ様。それではあの男に話をつけてみます。やはり夜のほうがよろしいでしょうか』

『そのほうがありがたいでござる、イシュト殿』


『どこへ連絡をすればよろしいでしょうか』

『ギルドのほうに拙者宛に依頼をお願いするでござる』


用心深いわ、もしかしたら所在がわかるかもと思ったけど、仕方がないわね。


『では、おっしゃるように致します。その場にはもう1人同席させていただいてもよろしいでしょうか。カクレ様』


『イシュト殿、拙者に様付けはいらぬでござる。カクレと呼んでほしいでござる。同席の件も了解でござるよ』


『ありがとうございます。でもカクレ様と呼ばせていただきたいですわ』

『イシュト殿の好きにしてよいでござるよ』


これでアンナも連れて行けるわね、あとはあの男が乗ってくるかどうか…



『ところでイシュト殿、同席する方と相手のことを教えてほしいでござるが』


同席するのはアンナさんという私をかわいがってくれているこの色町の代表をしている女性であること。相手は商人街のトップに君臨しているクラッチという男であると説明した。


『カクレ様のことを調べてくれたのはアンナ姉様なんです。私が依頼を受けてくださる方が出てきたことを伝えたら調べてくださったんです』


『イシュト殿はすごい方とお知り合いなのでござるな』

『今、私が身体を売らずにすんでいるのもアンナ姉様のおかげなのです』


『ふむふむ、クラッチとは紛れもなくあのクラッチでござるな。確かに一筋縄ではいかない相手でござるな』


『知っておいでなのですか、あの男のことを』


『この街にいてあの男を知らぬものはおらぬでござろう。金のにおいのするところにクラッチ有り、有名でござる』


やっと情報をこぼしたわね。カクレは流れ者じゃない、この王都に住んでいる誰か…

この情報は大きいわ。


『それではアンナ姉様にお願いしますので、3日後にはギルドに依頼が出せると思います。よろしいでしょうか、カクレ様』


『承知した、では3日後の夜に依頼書を確認に行くでござる。それでは失礼するでござる』


『お気をつけてお帰りください、カクレ様』



彼を送り出した私はその足でアンナの元に向かう。彼と話したことを伝え、あの男に時間を作らせるように指示を出した。


『いったい何者なんでしょうか。こんなに情報が集まらなかったのは初めてですよイシュト様』


『そうね、でも悪い人間ではなさそうよ。本当に私を助けようと考えてくれているみたいだったしね、個人的にも興味が沸いたわ。アンナ、彼はこの王都の住人よ。引き続き調べを続けなさい』


『イシュト様がそうおっしゃると思って1人跡をつけさせています』


私はアンナの対応に満足して自分の部屋に戻った。久々に面白いことが起こりそう…


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