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街外れの下水の入り口に僕は立っている。にんじゃとして正体を隠す上で堂々と玄関や裏口から出るわけには行かない。僕の店にはなぜか下水へ直接下りるふたが作業場にあった。これを使わない手は無い、移動は結構遠いがこれもにんじゃの定め。


僕は王都地下の通路を調べたことがあった。この下水はかなり古いもので今の王都が使っているシステムよりも深いところにあり、全容の解明はまだできていない…ある意味古代の遺跡といってもいいこの下水がなぜ家と繋がっているのかもじいちゃんが亡くなった今では知る由もない。都合がいいから利用させてもらっているけど。


『よっこいしょっと、ここを閉めて』

一人になってから、独り言が増えたな、と思いながら夜食を食べながら依頼書を見る。


依頼書は誰も見向きもしなかったせいか若干劣化が見られた。字の感じだと年のころで4歳、5歳くらいだろうか、まだ見ぬ依頼主の姿を想像していた。



翌朝、僕は今夜に備えて店を休みにしようと店の入り口の看板を休みにしていると後ろから声をかけられる。


『ハクレ、今日は休みなの。調子でも悪いの』


振り返るとそこには夜勤明けのサチルの姿があった。

『夜勤明けお疲れ様』何気なくいったひと言。僕はしまったと思った。


『ハクレよく私が夜勤だったってわかったわね』

『いや、いつもより眠そうだからさ。そうかなって』

『ふーん、そう、そんなに眠そうに見えるかしら』

『ま、まあ店は休みだから、お茶でも飲んでいきなよ』


僕は強制的にサチルを店の中に入れて、お茶とお菓子の用意を急いでした。お茶請けは手作り、リンゴのコンポートに卵たっぷりのふかふかパン。

怪しがっていたサチルも店の中に漂う甘い香りによだれをたらしそうにして待っている。

即席のお茶会を進めながら他愛の無い話をする。


『ハクレは、お菓子の店とか食べ物のお店やればいいのに』

食べないなら頂戴といって、僕のパンをひょいっとつまんで食べてしまう。


『そこまでの腕前は無いよ、それに1人じゃお客さんの対応まで手が回らないじゃないか』

『なんで、ハクレは何でも1人でやろうとするのよ。なんなら私が一緒にやってあげてもいいのよ…』


『ギルドの職員なんてエリートじゃないか、それを辞めるなんてもったいないよ。お給料そこまで出せないよ、サチル』



『そういう意味じゃないのに…』


『何より、エヌディさんが怖いよ僕は』

『パパのことはほっといていいのよハクレ。私が守ってあげるわ』


胸を張って任せなさいといったポーズをとるサチル。

『そういうわけにはいかないよ』

僕は昔を思い出して少し暗い気持ちになった。


僕の様子の変化にしまったと思ったのかサチルは急に話題を変えた。


『そういえば、昨日の夜にね変わった人が窓口に来たのよ』


僕はドキッとしたがなんでもないように『どんな人なの』と聞いてみた。


『何から話したらいいのか分からない位だけど、まずは冒険者窓口に来たのに、武器の類を持ってないように見えたの、しかも見たことない服装でね。見た目で十分怪しかったのに、変な話し方をするのよ』


そうか、僕はかっこいいと思っているのにな、サチルにはあのかっこよさが分からないのか…


『ねえ、聞いてるハクレ。しかもスタイルを書いてもらったら、これまた聞いたこと無い「にんじゃ」とかいうのを書くのよ。このままじゃ登録できないっていったらおろおろしだしてね』


確かに、あの時は焦ったな…どうしようかと思ったからな…


『ハクレ、ちゃんと聞いてるの。そういえばその人の名前、カクレっていったわね。なんかハクレに似た名前だったわね…』

『サチル、それでどうなったのその人』

危ない危ない、急いで話しの続きを促す。


『そうそう、それでねその人、紐のついた短剣を出してきたのよ、その説明をしている時あまりに嬉しそうに話すの。その時に悪い人じゃないって思ったわ。喋り方が普通ですねって言ったら慌ててね。わけあって夜しか活動しないそうよ』


『へー、そうなんだ』


『だから私、しばらく夜勤専門にしてもらったのよ』

『なんでそうなるの、サチル。意味が分からないよ』

まさかこんなに興味をしているとは想定外だ、困ったな。


『何、興奮しているのよ。私、あの人に興味が沸いたの。調べてみたいわ。パパにはもう話を通しているの。さてとご馳走様、今夜に備えてしっかり寝ておくわ。おやすみハクレ』


食べるだけ食べて、言いたいことだけ言ってサチルは颯爽と帰っていった。


ああなったサチルは止められない、気を引き締めていかないと。



僕はこれからに大きな不安を抱えたまま、夜の準備を始めて、サチルと同じように眠りについた。


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