6
今日は夜勤、夜は窓口に来る人も少なくて暇なはずだった…その夜はいつもの夜とは違っていた、1人の男の登場によって…
黒を基調とした、服に丸腰で口元をマスクで隠し、よくわからない言葉で話しかけてくる。
受け答えもなんかぎこちない…怪しい。それが彼に対しての第一印象だった。
一通り説明を終え、目の前の彼が用紙に記入したスタイルに私はまたまた、困惑した。
にんじゃ…初めて見るスタイル。いったいどんなものなのかまったく分からない。
『あの~すいませんがこのにんじゃってスタイルはどういったものなのでしょうか』
分からないものを登録するわけにはギルド職員として絶対にあってはならない、目の前のカクレという人に聞いてみた。
『にんじゃとは闇にまぎれて弱きを助けるスタイルでござる』
カクレと言う人は心なしかとても嬉しそうににんじゃの説明をしようとしてくる。このままではこの人のペースになってしまうことを恐れた私は相手が話す前に次の質問をぶつけた。
『冒険者は魔物退治などもあり、数人で行う依頼もあるので使用武器を教えていただけませんか』
『それには答えることが出来ないでござる。拙者はにんじゃであるが故』
だめだ、これでは話にならない。このままでは登録できないことを伝えると目の前の人はとても悲しそうにおろおろしだした。ちょっとかわいいと思ってしまったのは秘密だけど。
『じゃあ、これでだめでござるか』
そういいながら、短剣のようなものに紐がついたものを取り出した。
説明を求めると、また嬉しそうに話し始める。
『これはクナイというものでござる。投げてよし、短剣のように切ることも出来る代物でござる』
『その紐はいったいどのように使うのですか』
知らない間に私は目の前の彼に興味がわいてきていたようだった。質問して興味を持ってもらったことが嬉しかったのか彼は嬉しそうにクナイの紐について語りだした。
『この紐は投げてしまった時に手元に手繰り寄せることが出来るうえ、接近した相手に絡めて動きを封じることにも使えるのです。紐は特殊な素材で出来ているので簡単には切れないので用途は多岐にわたるのです』
夢中で話しているせいか、始めの妙な喋り方はしなくなった。
『普通にも話せるのですね』それとなく指摘してみる。
彼は、ハッとしてクナイを仕舞って。
『拙者としたことが、まだまだ修行が足りないでござる。登録は無理でござるか』
すがるような目で私に聞いてくる彼に私は負けた。
彼の目の前でにんじゃ文字の横に(短剣)と書き加え。これなら登録できますよと伝えた。
『かたじけない、恩にきるでござる』
私は鉄ランクのプレートを作成し彼に渡した。
危なかった、サチルに正体がばれるばれない以前に冒険者登録自体が出来なくなるところであったとは、盲点だった。
しかし、これでにんじゃデビュー、冒険者デビューと2つの新しいことが始まる。頑張って人を助けることが出来るにんじゃを目指のだ。一人喜びに浸っていると、声をかけられる。
『今日は依頼を受けていかれますか』
『おお、依頼の受け方についても分からぬゆえ、説明をお願いしたいでござる』
『はい、分かりました』サチルは始めの疑いの眼差しではなく、自然な笑顔で説明をしてくれた。僕の正体には気付いていないと確信した。
『依頼は自分と同じランクかそれより下のランクを受けることが出来ます。あとは個人やチームに対して指名依頼という制度もあります。ボードによってランクが決まっていますので間違いないように、依頼書とプレートを持って窓口に来てくだされば依頼スタートです。期限や条件に適合できなかった場合は罰則もありますので十分気をつけてください。』
『ふむふむ、よくわかる説明かたじけない。では早速見てくるでござる』
鉄ランクの依頼ボードの前に立ち色々見て回る。町の人の手伝いや、探し物の依頼が多く、魔物退治や護衛といったものは少なかった。
その中のひとつが目に留まる。
「お母さんの形見の指輪を見つけてください」明らかに幼い子供の字、期限は無いが報酬は子供のお小遣い程度…にんじゃとしての初仕事はすぐに決まった。
依頼書を持ってまた、窓口へ…
『この依頼をお願いしたいでござる』
『本当によろしいのですか、報酬も少ないですし、子供の依頼ですけど』
『問題ないでござる。お気遣いには感謝するでござるが、拙者はにんじゃであるゆえ。弱き者を助けるのが定め。お願いするでござる』
『分かりました、依頼者へは明日、依頼が受託されたことを伝えますのでそれ以降に会いに行ってください。その依頼書が証明になりますので紛失しないよう取り扱いに気をつけてくださいね。何か依頼者にお伝えすることがありますか』
『拙者、事情は話せぬが夜しか活動できぬ故、明後日の日が落ちてから伺いたいと伝えて欲しいでござる』
『了解しました。そのように依頼者にはお伝えします』
『では、親切な対応感謝するでござる。これにてごめん』
僕は依頼書を懐に仕舞い、夜の街を街外れに向けて走り出した。




