42
本当に良かった…今この時を噛み締める。
サチルさんと一緒に封を開けた手紙、そこには私に宛てたハクレ様からの計画書。
私に託してくれた、頼ってもらえた、それだけでも私の気持ちは満たされ、幸せ…
そして、彼は無事である証拠。
内容は簡潔に描かれ、読めば読むほどあの人の知識と創作力に惹かれていく…
『イシュト、何が書いてあるの。私にも説明してよ』
『サチルさん、せっかく幸せな気分に浸っていたのに…あなたには難しい内容よ。簡単に言えばハクレ様は無事。準備していることがあるから秘密裏に手伝って欲しいって事よ』
『なんか馬鹿にされてる感じしかしないけど。無事ならいいわ。私は何をすればいいの』
『残念、あなたのことは書いてないわよ。1つ書いてあったのはあなたは隠し事ができないから、もし計画のことを知ったら私に頼むってことだけね』
『ハークーレー…後で覚えてなさいよ…』
ギリギリ歯軋りしながらでも飛び出していかないだけ出会った頃より成長しているのかしら。ふふっ、まあいいわ。あの人のため手綱は握っておきましょう。
クラッチにあの者達を引き渡し私の役割は当日までは無し。城の者が余計なことをしないように忙しく働かせるだけ。
それにしても、処刑当日の細かいことは見てのお楽しみとは…何を見せてくれるのやら…
ハクレ、マケイジ…まさかあの2人が。
私は一言も言葉を発しない2人の兵士を連れて店の自室へ招きいれた。
沈黙が続く…
いつもなら、時間がもったいないと思うところだろう…どうでもいいがな今は…
『旦那、俺達のことがそこまで大好きかい。もう駄目だ、ハクレこれが笑わずにいられるか。あの旦那が本気で凹んでる姿が生きてるうちに拝めるとは』
全身鎧を脱ぎ捨て床に転がり込みながらマケイジが私を指差して笑っている…
状況が掴めない、俺は幻でも見ているのか…しかし、この馬鹿さ加減。間違いない。
『クラッチさん、僕は止めようと言ったんですよ。でもマケイジさんがどうしてもって』
『お前、俺だけ悪者にする気か』
『やめてくださいよ、まるで共犯みたいに言うのは』
私は何も言わずにマケイジの頭を力いっぱい殴った。
床に転がりながら、うめき声をもらしている奴を無視してハクレに向き合う…
『ただいま戻りました。クラッチさん』
私はハクレの頭に手を置き。
『お帰り』と言った…
床を転がる奴が落ちついたころハクレの口から出た計画は私の好奇心を強く刺激し、私の眠っていた思考をフル稼働させる内容であった。
『必要なものはすぐにでも用意させよう。私の全力で支援する』
『ありがとうございます。それでは場所と資材の手配がすんだら、僕の店に手紙でお知らせください』
『わかった、これからどうする』
『一度店に戻ります。アンナさんにこれから書く手紙をイシュトさんに渡してもらえるようにお願いします』
『差出人は不明で。だな』
『はい』
2人は深夜の闇にまぎれて出て行った。
それからは毎日時間との戦いだった、処刑当日の日にちを変更するわけにはいかない。新皇帝の誕生、国全体の混乱が収まる前に事を起こすには7日、この日程はギリギリ。
翌日にはクラッチさんからの連絡で作業の為の場所と資材の大半が用意された。
僕は寝る間も惜しんで作業に没頭した。
『あー、暇だー』マケイジさんはやることがないのでゴロゴロしている。
『暇なら、これを馬車に塗ってくださいよ。ただ、火気厳禁ですから万が一火がついたら命の保障はできませんよ』
『その黒いのそんな物騒な物なのか、て言うかそういうことは先に言っとけよ。もう、あぶねーな、俺は寝るから気をつけろよ』
逃げましたね…
断頭台の仕上げもあるのに…
そんなこんなで処刑当日。
前日にクラッチさんに連れられて王城に戻り、人気のない王城に戻る…
『準備は出来たのか』
『はい、滞りなく』
『私は何をすればいい』
『今から私の言う通りに当日発言をお願いします。あと、何があっても取り乱さず、驚かず、平然としていてください』
『何が起こるかわからないのにか』
『はい』
『無理ばかり言う奴だ』
処刑前夜…
明日の仕込みの最終段階をマケイジさんに再度確認を取る。
『マケイジさんは喋らない。これだけです。あと、あまりゴソゴソすると服の下に仕込んである赤い液体が噴出すので注意してください』
『へいへい、子どもじゃねーんだからそれくらいのことわかるぜ。ただ、あの断頭台…理屈はわかったし、実際に動いたところも見たが…縮み上がるぜ』
『あれの仕組みは実際に見せたでしょう。ルートの切り替えで隠し刃が落ちて貫通したように見える。それに合わせて首もとの紐を引けば真っ赤な液体が噴出しますから』
『動揺している隙に首を抜いて立つ、だったな』
『その後、クラッチさんが民衆に向けて赤い液体を打ち上げ動揺を広げますから』
『そこで、ハクレの演説がはいって、退場だろ』
『最後は広間の後ろまで歩いて、イシュトさんが黒塗りの馬車をスタンバイしてあるのでそれに乗り込んで、街外れへ走り火をつけて下水の出口から僕の店でゴールです』
『あいよ、そろそろ出番じゃねーか。黙っていくぜ』




