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『待ちましょう。今は…』


落ち着かない様子で私の部屋を歩き回る…気持ちは分かる…




どれくらい時間がたっただろうか、その時はきた。

いつものところから手紙が届く。


いつもより量が多い、アンナからの報告用の封筒から中身を見る。内容は短く、私を落胆させるもの…


「クラッチとの面会できず。封筒を預かるのみ」

新しい情報をアンナが手に入れることは出来なかった…渡された封筒、これが最後の手がかり…



意を決してその封筒の封を切る…






そして、王都に公開処刑の告知が知れ渡り、2台の処刑台が民衆に良く見えるように設置され、その日はやってきた。



処刑当日…



私は民の前に立ち、一同を静める。


『民よ、新皇帝エリザである。今から皆の前で処刑する者は偉大なる15代皇帝の意志を継ぐ者であると、王城に侵入した。私はこいつらの言い分をこの場で聞こうと思う』


ざわめく民、家臣たちも、わが子も動揺しているようだ。


『静まれ、この者たちは7日間飲まず喰わずの状態でもこのように生きている…さあ、話すがいい、化け物』


手足に頑丈な鎖を繋ぎ、異形の面に黒装束。静かに立ち上がり私の横に立つ。


『聞け、この国に住む全てのものよ。我々は物申す…偉大なる皇帝によって多くの血が流れ、今このときがある。忘れていないか。我々はこの場で宣言する…平和ボケした馬鹿共に奇跡を…』


『たわけたことを、そこまで言うなら見せてみるがいい…奇跡とやらを』


処刑台の最前列は王族、つまりは私と息子。木で組まれた高台に2つの断頭台。



それを軽く見上げるようなこの位置。奴らが首を出せばさぞかしよく見えることだろう…


『その首がよく飛ぶよう、確認を行うように』

私の号令で断頭台に藁の束が差し込まれる、次の瞬間。


藁の茎がつぶれることなくその綺麗な断面が民衆に晒された。


湧き上がる歓声、まるで見世物。これから、命が刈り取られるというのに…


隣の息子も興奮気味、マルスのしごきのせいで遊べない不満もあるだろうが、命はそんな軽いものであったのか…少し前の私を見ているようで辛いな。



『それでは、2人を断頭台へ』

今日の2人は金属に目と口の部分に穴を開けただけのシンプルな面をつけている。表情のないその面はまるで死者のよう…




静かに、2人は首を差し入れる。迷いも恐れもなく…その動きには優雅さすら感じられた。



『最後に何か言うことがあるか』

私は尋ねる…


『…』


返事は無い。


『始めろ』




いよいよ始まる瞬間にあれほどのざわめきは静寂へ


ただし時間は止まらない。刃は音もなく断頭台の下まで行き着く。




多量の真っ赤な液体が最前列に降りかかる、私は身動き一つせずに浴び続ける。

『ママー血が血がぁ』

息子は突然の出来事に錯乱し始め、恐怖に腰を抜かした…


『あいつら、い、生きてる。やっぱり化け物だ』


高台には真っ赤な液体を吹き上げながら2人が真っ直ぐに歩いてくる。



民衆は大混乱。高台の上の2人は静かに手をあげる。


民衆の後ろから何かが空めがけて打ち上げられた。破裂音と共に赤い雨が降り注ぐ。

立て続けに起こる出来事に民衆も兵士も動きを止める。いや、もうどうしていいのか分からないのだろう。



『愚かで、未熟な前皇帝よ。守る意味を忘れた兵士達よ。平和に溺れた民衆よ』


『私が築いた平和の意味を、そのために流れた多くの命を忘れるな』


『皆がそれを忘れなければ、地獄の底からこの国を守るとここに宣言しよう』



私は台の下で片ひざを着き頭を下げる。


『15代皇帝。あなたからの言葉を忘れないと誓います』


私に近いものから順に断頭台に膝を着き頭を下げて行く…



2人は静かに全身を真っ赤に染めたまま、台を降り、息子に近づく。


『私は多くの血でこの身を染めてきた。道半ばで逝ってしまったこと許してほしい』


息子の頭を真っ赤な手で撫で、言葉を続ける。


『平和を維持することは難しい、皆の力を借りて守ってほしい』




『地獄へ帰る時間だ。通してもらおう』

広間の人間が真っ二つに割れる民衆の最後尾には黒塗りの馬車が待っていた。


2人はそれに乗り込み南へと走り去っていった。




その後、馬車は町の外れで激しい火柱を上げて燃え尽き、その中に死骸などはなかったとその現場を目撃した兵士から報告が入り、その話もすぐに王都中に広まった。

町中ではあれは本当によみがえった15代皇帝だったのではとの話しで持ちきりだったが、真相は誰にも分からずにしかし、平和を案じ、現状を憂いた15代皇帝が道を示してくれたのだと多くのものが信じる結果となった。



それをもっとも強く信じているのは息子だろう…



『ママ。各地の様子を実際に見に行きたいのだけど。いいかな』


『なんでそう思ったの』


『パパが巡ったこの国を、平和な今僕の目で確認したいんだ』




『わかりました、では皇帝として各地域の現状を把握していきなさい。一緒に連れて行く者は自分で選びなさい、それと…』

『勉強や、訓練は当然続けるよ。マルス、人選をするからついて来て』


嬉しそうにマルスと誰にするか相談しながら玉座の間を出て行く息子の後ろ姿を見ながら、私は目に涙を溜めていた。


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