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どこで間違えちゃったんだろう、私はただハクレに強くなって欲しかっただけなのに。
パパやママから聞いたハクレのお父さんの話し、私のパパが敵わないぐらいすごい剣の使い手だったって、いつか勝ちたいって思ってたって。
ハクレのお父さんがそんなに強かったなら、きっとハクレも頑張ればきっと私よりもずっと強くなるってそう思っただけなのに…
確かにお世辞にも剣術の才能があるとは思えなかったけど、それでも走ってばっかりの姿を見て、それじゃだめだって思ったの。でも結局、私はハクレを傷つけただけ。
もう、ハクレに無理を言うのはやめよう、その分私が強くなればいい。私がハクレを守ってあげればいい。なんでかな、ほっとけないのハクレのこと。
『どうしたハクレ、走りに行ったんじゃないのか』
じいちゃんの問いかけに僕はサチルに完全に負けたことを話した。じいちゃんは何も言わずに話を聞いてくれた。
また悔しさがこみ上げてくる。
しばらくしておじいちゃんは言った。
『ハクレよ相手の得意とするところで戦う必要は無いではないか。ハクレはハクレでいいではないか』
そのひと言は僕の迷いを晴らすのに十分だった、それからも僕は走り続け、足腰を鍛え続けそして古い文献をもう一度読み漁った。サチルとは普通の話しはするようになったけど、剣術のことと、僕が走っていることについては話さなくなった。たまにエヌディさんが剣術を勧めてくるけど僕は断り続けた。
月日は流れていく。僕も、サチルも大きくなっていった。
僕はじいちゃんの道具屋の仕事を本格的に継ぎ。
サチルはギルドに勤めだした。
それでも、隣同士5人で食事をしたり、お酒を飲んだり。それなりに楽しい日々だった。
じいちゃんは僕が道具屋としてギルドに出入りするようになった頃から道具作りの指導が厳しくなっていった。
そして、ある朝、じいちゃんは起きてこなかった。
僕は1人になった…
エヌディさんもモフィーさんもサチルも一緒に泣いてくれた。
一緒に住まないかといってくれたけど、僕は断った。
じいちゃんの残してくれたこの店で1人でやっていくことを伝えた。
ソフィルさんが亡くなった。俺はハクレに一緒に住まないかと誘ったが断られた。ハクレにとって唯一の肉親が亡くなったんだ、思い入れのある店を続けたいと思うのは当然とは思う、ハクレも道具屋として1人でやっていけるまでに成長したことは認める。しかし、親友の息子が心配なのも正直な気持ちだ。あいつ、頭はいいが力が無い、万が一何かあれば友に申し訳ない。
俺はハクレに何がしてやれる。頭の悪い俺には何も考え付かない。王都ギルドの取締役をやっていたって、俺にはハクレの考えていることは分からない。
『なあ、モフィー、俺はハクレに何をしてやったらいいと思う』
『あなた、ハクレ君はもう一人前よ、お店だって1人で切り盛りしているじゃない』
確かにそうなんだが…あいつとの約束もある…
『親友の息子が一人になった。何か力になりたいと思うじゃないか』
『あなた。気持ちは分かるけどハクレ君も、サチルだってもう大人よ。あなたは子離れしなさい』
女には男の友情はわからんのかな。
『ハクレ君は賢い子よ、うちの子よりよっぽど色々考えているはずよ。見守るのも私達の役目じゃないかしら』
うーん、モフィーにそこまで言われるとそんな気がしてきたな。
『どんと構えるのも大人の役目か、それもそうだな』
もし困ることがあればその時動けばいいことか。そうするとしよう。
おじいちゃんの評判のおかげで道具屋は僕1人が食べていくのに不自由の無いくらいには営業できていた。もちろんエヌディさんがギルド絡みの仕事を無理ない程度に回してくれているのを僕は知っている。一度お礼を言いに行ったら『ギルドの取締役が個人の事情で便宜を図ったりなどしない』っていってたけど、商品の流れを見れば分かる、明らかに大手向きの大量な取引をあえて複数に注文している。表向きには公平に取引する為との名目だけれど、必ず僕の店にも少し発注が入ってる。実際とても助かる。
商売用の窓口での僕のランクは銅ランク、これはおじいちゃんの功績も加味されている、ちなみにおじいちゃんがやっていたときのランクは金ランクだった。代替わりしたのでランクが落ちた、商売用は個人というよりは店に与えられるからこの結果になった。
最低ランクまで落ちなかっただけでも儲けものだって思っている。
今日も依頼の品を商売用窓口に運んできた。
『今日もこつこつご苦労さんだなハクレ』
『僕の店は1人だからね。こつこつやらないと手が回らないよ』
『ハクレの作る品物はどれも出来がいいのに、勿体ねーな。弟子か人を雇えばいいのに』
『まあ、1人があっているんだよ僕は』
窓口の男はそんなもんかといって僕の品物のチェックを始めた。品数が少ないからすぐ終わった。
『じゃあ、この傷薬5個は依頼分でギルドに納品、残りの半分はギルド印つけたから自分ところの販売用っと。それでよかったか』
『問題ないよ、それじゃまたよろしく』
窓口はじゃあなといって次の仕事に移っていった。僕も自分の店に帰ろうっと。




