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『昨日の騒ぎ、たった2人の侵入者を止められず。この玉座を切り落とされる事態…』


一同、下を向いたまま顔を上げることも無く、沈黙だけが存在する空間。


『ママー、僕も無事だったし侵入者もママが捕まえたんだからいいじゃない』

1人いつもの調子は我が息子のみ…あなた、ごめんなさい…



『皇帝。この事態の責任はあなたにもあるのですよ。わかっていないようですね。どうするつもりです』


『どうって言われても、僕は皇帝だよ。いつもみたいにママに任せるから適当にやっておいてよ』


『それは、私に全権を与えるということでいいのですね。皇帝陛下』

『よくわからないけど、ママの好きにしたらいいよ』



誰も口を挟まない、親子の会話のみがこの静かな部屋の中に響く。



『それでは、今この瞬間。私が17代皇帝として帝位につきます。異論は認めません。16代皇帝にはこれから人の上に立つものとしての再教育を行います』


『ママ、僕は皇帝じゃなくなるの。なんでこんなことをするんだよ』


『私はあなたを甘やかしすぎた。あなたのお父様に顔向けができないわ。これからは容赦しません。お父様を超える人物になるよう努力なさい。マルス、遠慮はいりません。これからみっちりと息子をしごくように』


マルスは一度頭を上げ、私に深々と頭を下げた。


『皇帝として最初の命令を伝えます…昨日の侵入者を公開処刑とします』


私は皆に侵入者との話を伝えた。


侵入者は15代皇帝の意志を継ぐため、死者の国から来たといっている事。この国の民を守るために今回の襲撃を起こしたこと。信じるに値しないことばかりであったので、逃げられない民衆の目の前での処刑を考えたことを伝えた。


今、侵入者は窓の無い部屋に閉じ込めてある。危険な相手なので扉を開けることは禁止。食事の提供もしないこと。処刑は7日後…



『準備のために王都一の商人クラッチを至急呼び出すように。皆のものは城全体の状況を確認しなさい。私の警備は不要です。各自取り掛かりなさい』



皆がそれぞれの持ち場に散らばっていったあと。私は1人背面が斜めに切り落とされた玉座に腰をかける。


『あなた…』





あれから連絡がない…予定では、皇帝とエリザと話しをして城作りをやめさせ夜のうちに城から抜け出す算段だったが…


『クラッチ様、城からの至急の呼び出しです』


なんだと、まさか2人ともしくじったのか。考えていても埒があかないなとにかく行くとしよう。


『私の馬車を急ぎ正面に持ってくるように。私は城に向かう』


とにかく、現状を把握しなくては。


『クラッチ様準備ができました』

『よし、誰か色町のアンナに伝言を頼む。仮面が戻らないと言えば分かる』



王城は兵士達が忙しそうに動き回っている。その中の1人を捕まえて声をかける。


『至急城へ来るように仰せつかったクラッチと申します。どちらへ伺えばよろしいのでしょうか』


『新皇帝のエリザ様がお待ちだ。玉座の間に行け』


新皇帝エリザ…何が起こっているんだ。馬車を中庭に止めそこらの兵士や使用人に聞きながら玉座の間へたどり着く。



『クラッチお申し付けにより参上しました』

『中へ入るがいい』


扉越しに許可が下りる。扉を開け目の前にはただ1人欠けた玉座に座るエリザの姿。


『クラッチ、私は17代皇帝となりました。昨日の侵入者2名の公開処刑を7日後にとりおこないます。その準備をお前に任せたい』


公開処刑…まさかあの2人が捕まるとは、考えられない。


『返事はできないか。クラッチ』

『いえ、仰せの通りにいたします』


こんなことになるとは、どうしたらいい…ハクレ、マケイジ…

金があってもどうにもならないこともあるのだな。


『処刑は町の広場で行う。王都中に知らせよ、ギルドの方には私から連絡を入れておく』

『…了解いたしました…』


『クラッチ顔色が悪いぞ。働きすぎではないか…後、この間の城の件は無くなった、喜ぶがいい』


喜べるか。しかし表情に出してはならない。絶対にだ…クソが。


『細かいことはこの2人から聞くように。では、楽しみにしているぞ。下がれ』


エリザは軽く手を叩くと柱の影から全身鎧の2人組みが出てくる。エリザに頭を深く下げ私の後ろを黙ってついてくる。


私は軽く目眩を覚えながら、後ろの2人を連れて自分の馬車を目指して歩き出した。


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