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さてさて、静かに、かつ派手に。ドーンと行くか…
確かハクレの話ではこの玉に火をつけたら空に思いっきり投げて、ダッシュ。それを繰り返すだけの簡単なお仕事とか言っていたが…とりあえず一個やってみるか。
ハクレに借りたライターで火をつける…空に軽く投げてみる。
軽く走って、距離をとる…
耳の奥に響く轟音。色とりどりの火花が城の中庭を眩く照らす。これは美しい、ただし真下でなければだが…熱い、熱すぎる…ハクレの奴、もっとちゃんと説明しとけ。
もう、ミスらねえ…2つ目に火をつけ、全力で空へ投げると同時にその場を全力で離れる。ギリギリだ、本当に火花を避けるためには全力が必要か…
最後、3つ目。
よし、最後は城に向かって投げてみるか。
仮面の下でにやりと笑い。思いっきり投げる…
城の壁面に咲く大輪の花、ハクレの奴、これだけでも食っていけるんじゃないか。
『何事だ、中庭の方だぞ』
『ぐずぐずするな、兵士を集めろ』
動きがおせーな、兵士のレベルも落ちたもんだ…あいつがトップだった頃じゃ考えられねーな…
中庭に繋がる通路にちらほら兵士が姿を現す、俺はゆっくりと刀を抜いて刃を反対にして持つ。
徐々に増えて行く兵士達、その数50程度か…
ある程度集まったところで俺はベールを取り、般若の面で立ち、殺気をみなぎらせる…
『わが名は、ウンギョウ。殺しはしねーが。ちっと痛い目みてもらおうか。どっからでもかかってこいや』
見た目の異様さと殺気によって誰一人俺に近づかない…腑抜けばかり、つまんねーな…
『来ないなら、こっちからいくぜ』
兵士が集まるに連れて灯りが増え、灯りのゆらめきが俺の姿をより浮かび上がらせる。
『消えた。どこに行った』
『うぎゃー』
囲みの一角から苦しそうに呻く声が漏れる…
『あっちにいるぞ』
動揺する兵士達の中を駆け抜けながら1人、また1人と地面に沈めて行く…
周囲を一回りしたところで約半分程度の兵士は動けずうめき声を漏らしている。
手ごたえの無い…つまんねーな。
『俺を楽しませてはくれないみたいだな、用事があるんでとっとと片付けさせてもらう』
『一気にかかれー』
今頃おせーよ…
押し寄せる兵士達を近い者から叩き伏せて行く、数分後立っているのは俺1人…
『さてと、俺もそろそろ上に行くかな』
呻く兵士達を見下ろしながら城の最上階へ向かう。こっちには腕の立つ奴はいなかったがハクレは大丈夫かな。
薄暗い廊下をゆっくり歩きながら奴に貰った篭手を見る。お前も出番が欲しかっただろうに。
誰も出てこない階段をゆっくり上りながらついでに城見物としゃれ込む。
あいつが生きていれば、こんな派手な城内にはなっていなかっただろうな…
昔あんなに熱望して、この手で敵をと思っていた俺が今の俺を見たらどう思うだろうか、皆殺しにしろと怒鳴りつけるか、すべては過去のこと…今の俺にはどうでもいいことだな。
上に行くにしたがって倒れている兵士が数人…面白い格好で転がっているな…
『アギョウの奴はもう上か』
俺は歩みを変えずに進む。
中庭から大きな音がする。マケイジさんちゃんと言ったとおり全力で投げたかな…ちょっと心配だな。結構威力上げといたから、よっぽど大怪我はしないと思うけど。
人の心配よりも自分の事、自分の事。あの人は強い、ただ信じればいい。
僕は柱の影に隠れて、下へと急ぐ兵士達をやり過ごした。
少し間があいて、2回目の破裂音。
思ったより兵士の動きが悪いな…そして、3回目の破裂音。窓から飛び込む色とりどりの光り…派手にとは言ったけど、やりすぎじゃないか。
しばらくして、殆どの兵士は中庭に向かったみたいだな。
柱の影から様子を伺い、上へと続く通路を慎重に進み始める。
初めの階段、さすがに兵士はいるな。でも1人か、壁沿いに様子を見ながら徐々に距離を詰めて行く…
階段のそばまで近づき…後ろから口に布をかまして引き倒す。
後手に紐で締め、両足も紐で縛る…
『これはプレゼントだよ』
ひょっとこの面を頭にしっかりと固定する。よし、地面に這いつくばるひょっとこ…いい作品だ。僕は満足感を胸に階段を上る。
この城の構造は各フロアーの階段が一直線に繋がっていない。攻められた時に時間を稼ぐためにこのような作りになっている。僕らのように忍び込むにはこの方が都合がいい。
万が一上から発見されないように壁と柱を上手く使い次の階段を目指す。
『距離があるな…』
階段のそばには隠れるような場所が無い、懐から小さなおもちゃを取り出す…
左右の車輪の大きさが若干違うおもちゃのゼンマイを巻き、柱の陰から走らせる。
ゆっくり円を描きながら兵士の近くを通りこちらへ戻ろうとしている。
『何だ、ねずみか』兵士はおもちゃを追いかけてその後を付けてくる、ゼンマイが止まり。
『こんなところにおもちゃがなんでだ…子どもに持って帰ってやるか』
さっきの様に口に布をかまして壁際に引き寄せる…
今度は身体を反らせて両手足を1つにまとめてっと。パンツの中にさっきのおもちゃをゼンマイを巻いて入れて、口の布を再度締めなおす。
『おもちゃは子どもさんにあげてね』
股間から微かに聞こえるゼンマイの音が切ない、シュールな作品になったな。うん、満足。
そんなことを繰り返しながら皇帝とその母がいるフロアーにたどり着く。情報通りとはいえ僕でも困らないくらい順調に無力化出来たな…
皇帝の母の部屋の前に立つ…




