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『お仕事お疲れさまです。本日皇帝陛下に謁見させていただくクラッチと申します』


兵士としては体の重そうな男が部下らしき人間を4人ほど従えて近づいてくる。

『うむ、話しは聞いている。上からの命令でな荷物を全て確認してから通すように言われている』


『皇帝陛下の安全のためには必要なことです。その前に隊長様とお見受けしますが、これを…』

『ん、これは…』

『この国で安全に商売ができるのも、すべて兵士の皆様のおかげでございます。今日この門でお会いしたのも何かの縁。日ごろの感謝を形にしただけのこと。お納めください』


にやにやと嬉しそうにしている、まったく無駄な投資だな、仕方がないが…


『さすがは王都一の商人、我々の価値をわかっているな』

『部下の皆様と一緒に飲んでいただこうと上等な酒もご用意してありますのでお待ちください』


馬鹿共め、横一列に並んで物欲しそうに突っ立っているわ。荷馬車に近づき、2人に合図を送り、ふり返る。


『東の国の銘酒、残月の特級でございますよ』

これほどの一品は兵士の安月給ではコップ1杯も手が出まい。兵士達は私を取り囲み高級な品物の登場に手が出せずにいる。考え通りの反応だな。


『実はこの酒、飲み方にコツがありまして、紙と書くものをお借りできれば…』


この馬鹿共は無価値だな。全員で私を詰め所まで案内するとは、実に滑稽。




旦那はうまくやったみたいだな。俺はハクレと目で合図を送り、予定通り使用人用通路を一気に抜け、奥へ抜ける。本当に人一人いねーな、あの嬢ちゃんが持ってきた情報通りか。


『第一段階は成功だな』

『そうですね、クラッチさんのメモでは1人位は荷馬車の近くに残るかもとのことでしたが、嬉しい誤算でしたね』


旦那も残月特級とは思い切ったな、あれはいい酒だ。暗くなったら2手に分かれて作戦開始だな。俺は皇帝の部屋の下からハクレの作ったこの玉に火をつけてから、兵士を殺さずに玉座まで特攻する…


ハクレは皇帝と皇帝の母を挑発して玉座の間へおびき寄せる…どうやんのか聞いてみたが、ハクレ曰く、情報が確かなら、あの玉座には強い思いがある。必ず守りに来る、だそうだ。


なんにせよ、もうしばらくは待ちだな…旦那の謁見どうなるかね。




2人は上手く行ったようだな。

『よし、荷物の確認も出来た。通っていいぞ』

『ありがとうございます。それでは失礼いたします』


城の中庭まで進むと煌びやかな衣装に身を包んだ皇帝と、その隣には黒を基調としたドレスを身にまとう皇帝の母エリザが大勢の兵士を左右に従えて待っていた。


私は、馬車から降り、その場で片ひざを着き深々と頭を下げる。


『王都一の商人クラッチよ、顔を上げるがよい』

『このたびは、急な謁見の許可を頂きありがとうございます。後ろにあるもの全て皇帝陛下への献上するためにお持ちしました。どうぞお納めください』


『念のため再度中身を確認せよ』

数名の兵士が荷馬車の荷物をチェックする。皇帝は早く見たいのか近衛を連れて荷馬車の近くで終わるのを心待ちにしているようだ。


『皇帝陛下、本日はここらでは手に入り難い品を中心にご用意いたしました。喜んでいただければ幸いでございます』


『お前はなかなかいい奴だね。クラッチっていったかな。覚えておくよ』

『ありがとうございます、皇帝陛下』



『クラッチ、こちらへ』

エリザが椅子とお茶の用意された机へと私を呼ぶ…


『皇帝のあの喜びよう、ご苦労でした。本題を伺いましょう』


『新しい王城の建設にこの街の有力商人は一切の協力をお断りいたします』

『それが、どういう意味かわかって言っているのですか』

『それは、王都から商人を排除するとおっしゃっておいでですか』


『帝国において皇帝の意志は何よりも優先されるべきものです』

『わかりました。それでは、私から申し上げることは何もありません』


エリザに頭を下げその場を後にする。


『クラッチ、色々ありがとう。また、遊びに来い』


私は深く頭を下げ。

『また、お会いできる日が来ることを楽しみにしております』


1人、歩いて城門から出る。私の役目はここまで…後は無事を祈るのみ…




あの男は、協力することはないだろうな。すべてを失っても…

他の商人も同じであれば、あの男の言ったとおりこの王都から商人が消えることになるな。


それでも、やらなければ、商人に屈するわけにはいかない。皇帝の母として、あの人の妻として…




日は落ち、辺りを静けさが支配する…さあ、狩りの時間だ…


『ウンギョウ、派手に頼む。くれぐれも兵士を殺さないようにね』

『アギョウ、聞き飽きたぜ。お前こそ俺より弱いんだからやられんなよ』


僕らはハイタッチをしてそれぞれに動き出した。

見張りの兵士の配置は頭に入っている。僕は暗がりを城の上を目指して進みだした。


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