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『マケイジさん、皆さん腕のいい職人さん達ですから。料金の話ですけど…』

『前に言ったとおりだ、いくらかかってもかまわない。人が増えれば金がかかる、当然のことだからな』

『ありがとうございます』


『ハクレ、いくら位で考えているんだ』


クラッチに促され、坊ちゃんはわしらを集める、そして色々数字を書き込まれた紙を広げ少し困ったように話し始める。


『人に仕事を頼んだことが無いので、皆さんへの金額を多めに考えてみたんですけど…』


ん、わしらに対してはちょっと多いじゃないかと思うぐらいだが…

『坊ちゃんの取り分はどれになる』

わしは合計以外の部分を指差しながら聞いた。

『この一番上にある奴ですけど』


わしは、シゲとガンと顔を見合わせ3人で大きくため息をついた…


『皆さんの分、やっぱり少ないですか。それとも僕の分多いですかね』


坊ちゃん…きっとシゲもガンも同じ気持ちだろう、わしらが呆れているとクラッチが割って入ってくる。


『ハクレ、これは何の冗談だ』


奴は坊ちゃんを睨み、その紙を真っ二つに引き裂いた。


『お前は、自分の価値を一度再認識する必要があるな、それにこの方達の腕に対しての冒涜だぞ。そもそもどんな方法をするつもりか分からんが、あれでは材料代を抜いた工賃としても不足だ』


よく言った、なかなかわかっているじゃないか商人トップは伊達じゃないな。いささか興奮しすぎだが、まだまだ若いな。


『坊ちゃん、物には適正ってもんがあるぜ。今回の件は誰もやったことがない、しかも一点物を扱うんだ。わしらの分はさっきのでもかまわないが、坊ちゃんの取り分についてはわしら3人とも不満じゃ。あのままなら仕事はできん』


シゲもガンも大きく頷いている。気持ちは一緒のようだな。


どこか納得のいかない表情の坊ちゃんに奴が紙を要求する。目にも留まらない速さで数字を書き上げて行く。坊ちゃんが作ったものより細かく、丁寧に書かれた紙をわしらの前に広げて見せた…ほう、さすがだな…


『これが、私が考える適正だ』


合計金額は坊ちゃんが作ったものの3倍。一番多い取り分はもちろん坊ちゃん。これならわしらも仕事ができる。


『これはあくまで、工賃、技術料のみだ。ハクレ、材料代は別、もしここにいるお三方と同等の職人が参加するなら、この段の金額を人数分上乗せ、これが私の答えだ。金額に問題があるか、マケイジ』


『いや、ねえ。俺はそれでも頼みたい』

この金額にぐだぐだいわねえで職人にしっかり任せるとは、ただの馬鹿じゃねえみたいだな。腕が鳴るぜ…



『坊ちゃん、依頼人がこれでも頼みたいっていってんだ。後は仕事で答えるのが職人ってもんだろ。なあ、みんな』


『そうだぜ』『久々に燃える仕事じゃの』


『ハクレ、材料については私も一枚噛ませてもらえないだろうか』

『クラッチさん、是非お願いします』


この男は…坊ちゃんにも少しでもこの抜け目の無さがあればな…




自分の価値か…それはさておき、確かにゲンさん達に対して失礼だったな…でも、クラッチさんのおかげでみんなもやる気だし、いいもの作るか。やるぞ。


『ところで、ハクレよどのような方法を考えているんだ』


クラッチさんは興味深く、焦る気持ちを抑えながら訪ねてくる。


『簡単に言うと、持ち手を1つの部品で覆い、固定する方法でいきたいと思います』

『そんな方法で重心を変えずにできるのか。バランス取りが難しいと思うが…』


大体の説明を聞いている、ゲンさん達は考え込むクラッチさんが面白いのかニヤニヤしている。


『クラッチさん、以前お渡しした僕の装備を覚えていますか』

『もちろんだ。あれから色々試させているがうまくいっていない…』

さらに難しい顔をしているので早くタネを明かしてしまおう。


『あの接着剤の粘度を高めて硬化させて部品にしようと思っています。もちろん強度の問題、刀身との接続、持ち手自体の滑り止め、それに加えて鞘の加工も考えています』


『ふむ、元からついていたパーツと比べて出来は…聞くまでもないか』


『レベルの低いものは作りませんよ』


持ち手の部品は形取り、大まかな加工は僕の仕事。

持ち手部分の重量バランスのための細工と、留め金用の穴あけ加工、滑り止め用の溝加工はゲンさんの担当。

刀身との固定用の金具をガンさんの担当。

鞘を覆う皮と持ち手の溝に合わせる皮ひもの作成をシゲさん担当。

それらの材料の調達をクラッチさんに担当してもらう。


『おい、兄ちゃん、皮の色に注文はねーか』


マケイジさんはシゲさんの問いかけに目をつぶり、しばらく考えたあと


『赤だ、目立つ赤がいい』

『了解だ、誰ももってねーような奴作ってやるぜ』


それからその日は、持ち主を無視した仕様決定のための相談会が開催された…




『それならば、皮のベースは火ねずみの皮はどうでしょうか。確か、昨日程度のいい大き目の皮が入ってきたはず』

『火ねずみか、物見てみねーとなんだが、いい素材だな。後で見に行くぜ』

『クラッチよ、銅鉱石と銀鉱石、あと黒鉄鋼の鉱石手に入るかのぉ』

『ガンさん任せてください、在庫でもいいものが少量あったはずです。合金にされるのですか』

『硬いだけじゃ坊ちゃんの素材との強度にバランスが取れないのじゃ。精度が必要じゃし、加工しやすい粘りのある金属の方がいいじゃろう』

『作業を見学させていただいてもよろしいでしょうか』

『かまわんよ、みにくるとええ』

『坊ちゃん、パーツの重量決まったのか』

『昨日のうちに大まかには配合決まりましたし、ちょっと軽いので、混ぜ物を魔物の骨粉にしてみようかと思ってますけど、ゲンさん問題ないですか』

『そのほうがこっちも楽だな、おいクラッチ。いいのねーか』

『そうですね、砂竜の牙等どうでしょうか。加工は手間ですが素材としては良いかと』

『加工は知り合いに当てがあるからかまわねえ、それで行くか坊ちゃん』


気がつけば、ゲンさん達の知り合いの職人8名が参加しての大掛かりな話しになった。


そして、2週間の期間を得て、この世に新しい刀が産声を上げた。


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