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家に帰り、作業場に入り、おじいちゃんは古い文献を出してきて似たようなものが無いか調べ始めた。
『おじいちゃん、どうやったら強くなれるかな』
作業しながらおじいちゃんは少し考えているようだ。
『ハクレや、人はやってみんと分からんものだ。ハクレにはハクレにあった方法があるはずじゃ。お前はお世辞にも運動神経がよいわけじゃない。しかし、お前は手先が器用じゃし、頭は悪くないとわしは思っとるよ。考えてみることじゃ。道は1つじゃないぞ』
わしは、もう少し調べものしとるからもう寝なさいと言って僕を寝かせようとする。
『考えてみるよ、おじいちゃん、おやすみ』僕はどうしたらいいか考えながらいつの間にか眠ってしまった。
『うーん、やっぱりこれは雷の力を使ってこの先を振動させるだけのものか。実用性の高いものではないの』
わしは腰をさすりながらハクレの寝顔を見に部屋を覗く。
『うーん、サチル危ないよ…うーん』
軽く頭を撫ぜてやるとハクレは安心したような顔をした。
『風邪をひくぞい』布団をかけなおしてやり部屋を出る。今日のことはギルドにいるときに報告をエヌディと一緒に聞いたが、2人に大きな怪我が無くてなによりじゃったわ。もう身内を失うのはこりごりじゃからな。
エヌディの慌てる顔も人事ではなかったわい。
作業場で一人酒を煽る。『親より先に逝きおって、馬鹿息子め…』
呟いても、悔やんでも、酔っても何をしたところであいつらは帰ってこんがな。
『それにしても、あの子が強くか…』
サチルちゃんが目の前で怪我したことが相当こたえたのかのう。わが孫ながら戦いには向かんと思うがな。
そういえばハクレはにんじゃの本が好きなのを思い出したわしは、にんじゃの修行の方法が書いてある本があったと思い探してみる。
おおーあったあった、どうなるか分からんが明日ハクレに見せてやるとしよう。
その前に、ちょっと目を通しておくか…
こんな方法で本当に文献にあるようなにんじゃになれるんじゃろうか、いささか疑問じゃがまあ、やってみんと分からんからな。わしも寝るとしよう。
翌朝、目を覚ました僕は枕元に一冊の本を見つけた、不思議に思いながらも目を通してみる…
そこには、にんじゃになるにはが書いてあった。僕は本を手にじいちゃんのところへ急いで向かった。
『じいちゃん、ありがとう』
じいちゃんは真面目な顔して僕に言う。
『ハクレよ、その本に書いてあることが本当のことかは分からん。それでもいいなら試してみるがいい。力が正義のこの国では異端とも言える道じゃがな。死んでしまってはおしまいじゃ。頑張ってみるといい』
僕はその日から頭に長い布を巻いて朝晩街を走った。にんじゃは足が丈夫じゃないとなれないらしい。サチルは強くなるにはまず剣の練習が基本なのにって怒ってたけど、僕はにんじゃになるんだ。ひたすら走り続ける僕にサチルはあきれて『勝手にしたら』ってかまってこなくなった。
僕は、本を読み、走る。それをひたすら繰り返した。ある程度足腰が強くなったところで、裏庭に植えた小さな木を飛び越える訓練を始めた。併せて重りを持ってスクワットと書いてある訓練も取り入れてひたすら足腰を鍛え続けた。
そんな日々が1年、2年と続き、裏庭のきも大きくなり、僕はいつの間にか飛び越えることができなくなっていた…
それでも、僕は重りをつけて、朝晩の走り込みとスクワットはやり続けた。
ある日、いつもの通りに朝の走り込みをやろうとすると家の前には木刀を持ったサチルが立っていた。
『ハクレ、私と勝負しなさい。そんなんじゃ強くなれないことを証明してあげるわ』
サチルはこの2年で王都の武術大会の子供の部で上位に入るほどの腕前になっていた。当然そんなことは知っていた。そのときの僕はそれでも、こんなに頑張ったんだからきっといい勝負ができると思っていた、本のにんじゃのように表には出ないけど人を助けることができるくらいに強くなっているんだと信じて疑わなかった…
ちょっと考えれば結果なんて分かったはずだった。僕は2回サチルの木刀をかわすのが精一杯だった。
3度の振り下ろしは僕の肩を打ち、地面に叩きつけられる。悔しかった、結局僕には無理だったんだ。気がつくと地面をまじかに見ながら泣いていた。
地面に這いつくばったまま動かない僕を心配したのか声をかけてくる。
『ハクレ、大丈夫。やりすぎたわ…でも、わかったでしょ走るだけじゃ強くはなれないのよ。今からでも剣術を一緒に始めましょうよ』
『サチルには分からないんだよ。僕の気持ちが、剣術だって全然上達しないの知ってるじゃないか。だから、だから僕は違う方法でも強くなろうと頑張ってるのに。僕には強くなるなんて無理なんだよ。もうほっといてよ』
僕は悔しさと、惨めな気持ちからサチルにあたってしまった。
その日以来、サチルは僕に剣術を進めることは無く、僕に強くなれと言うことは無くなった…




