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『状況はどうなってる』

『マケイジ様、前線は崩壊。帝国軍は三方向からここを目指して来ています』

『進行が早いのはどこだ』

『中央の皇帝率いる主力が一番進行が早いと思われます』


どんだけの物量で攻めてきやがるんだ…こっちの手札じゃ防衛もできない。


『マケイジ、王がお呼びだ』

このくそ忙しい時に何の用だ。

『すぐ行くと伝えろ。いや、今から行く』


作戦会議室から、王の間へ駆け出す。扉を荒々しく開け放つ。

『王、何のようだ。今忙しいんだが』


『マケイジよ私は皇帝に降服しようと思う…』

この馬鹿王が、そもそもこんな事態になったのはお前が原因だろうが。

『忘れたか、今なぜこの国が攻められ、民が殺され続けているのかを。誰がその引き金を引いたのか。忘れたとは言わせない…』


『マケイジよ、王に向かってなんという口の利き方。控えよ』

『黙れ、腰抜けども。皇帝は王の首を持ってこれば進行を止めるといっているぞ。国の王なら、その首を皇帝に差し出せ。それができないなら黙って震えていろ。どの道この国は終わりだ』


黙る王の間を無言のまま後にして作戦会議室に戻る。


『住民の避難は進んでいるか』

『前線に近い村の者は間に合わないでしょう。思った以上に相手が早いので…』

『そうか』

『でもよろしいのですか。司令の独断で都の住人の避難を進めてしまっても』


『かまうものか、どちらにしてもこの国は終わる。前線で必死に戦っている者たちの家族だけでも救わなければ、あいつらに顔向けできん』


作戦会議室の扉を突き破る勢いで兵士が飛び込んでくる、あちこちから血を流し、かすれる声で俺に報告をする。

『マ、ケイジ、様…敵中央…が…動き…を…止めました』

それだけ言うと目を開いたまま息を止めた。


『ゆっくり、休め…』

皇帝め、何が狙いだ。奴が傍観を決め込むような性格じゃない。皇帝でありながら、前線で戦うような奴…わからねえ。


『報告します。左右ルートの敵の進行スピードが一気に上がりました』


徹底的にやる気か、後ろに回られたら、避難している住民も全滅…


『全軍に伝令、中央は捨てる。各自、左右のルート近いほうの敵軍にあたれ。絶対後ろに敵を通すな。走れ、早く伝えろ』


伝令の兵は蜘蛛の子を散らすようにそれぞれ軍団に散っていった。


『もう、こんなものもいらねえな』

腰の刀に手をかけ、状況の書き込まれたボードを縦に切り裂いた。


どっちだ、どっちの敵が早い…考える暇はねえ、腰の刀を見る…


『俺は左に向かう、お前らは右を頼む』

俺の側近達は無言で頷き、手早くそれぞれの得物を手に取ると俺に一礼して出て行く。

その姿を見ながら俺は軍服を脱ぎ、ブーツの紐を締めなおした。


左の街道への抜け道を抜け木々を掻き分けて進み、小高い丘に出る。


こちらの兵士が1人、また1人と倒れて行く…敵は隊列を保ったまま真っ直ぐに街道を進んでくる。時間稼ぎももらえないほど圧倒的な差…こちら側で立っているのは30人程度…


『逃げるもの、戦意のないものには手を出すな』

あいつがこの軍の将か…やるしかねえ。


丘を気合を入れながら駆け下りる。味方に向かって『俺が将を殺る。お前ら援護しろ』


『マケイジ様が来てくださった。みんな続け』

軍団長の声かけに士気が戻る。俺は勢いをそのままに敵軍に特攻した…


1人、2人、3人…何人切ったかわからない。鎧を着ていない俺の体は返り血で真っ赤に染まり、俺に近づく敵はなく俺を取り囲む。


俺の名前を必死に呼ぶ声は近づくことはなく徐々に少なくなっていった…振り返れば声はなく、仲間だった奴、部下だった奴、顔も覚えていない奴。味方で立っているのは俺1人…



敵の中から先ほどの将が出てくる。

『もう、諦めるんだ。これ以上の抵抗に意味はない』


俺は無言で切りかかる…


『アレン、敵と話している場合か』

横から大柄な男が俺の刀を止める、すかさず身体を回転させ大柄な男の首を狙う。

『首が繋がったわねエヌディ』

小柄な女が刀の軌道を細身の突剣で逸らす、エヌディと呼ばれた男の髪を少し散らしただけにとどまった。

『助かったぞナギ』『どういたしまして』


2人を相手に足止めされている自分に苛立ちを覚える、こんなところで俺は止まっていられない…


少し距離をとる、一瞬の溜め…最速の一撃を…


全ての感情を押さえつけ、放つ。

『ぐあっ』大柄な男の腹を切り裂く…浅い…女の突剣が根元から切れ宙を舞う。

とっさに間に入られたか、しかし、もう遅い…上段に振り上げた刀を男の頭に振り下ろす。


『2人とも下がれ』

細身の長身、俺と同じくらいか、アレンとか言われていたな。対峙するとわかる、こいつはできる。ただの甘ちゃんの将じゃねえ。


お互い動けない、動きを邪魔しない軽鎧、剣を中段に構え切り込む隙を見せない。


『マケイジといったな。引く気は無いか。引くならば追うような事はしない』

『後ろで、口が利けなくなった奴らの将なんでね。引く気は無い。1人でも多く逃がす為にもここを通すわけにはいかない』


奴は複雑な表情で続ける。

『僕も引けないんだよ…』


お互いに大きな動きができず小競り合いが続く…いつまでも続くなこりゃ。

俺とここまでやり合うとは、こんなところで逢いたくなかったぜ。


『楽しいね。こんな戦場で君とは会いたくなかったよ』

『奇遇だな…俺もだぜ』


お互い手を止め、間合いを計りながら声を掛け合う。


『生きる気は無いのかい』

『無いね、俺が倒れても。俺の子供が、生き残った者が意志を継いでくれる』


『残った者に丸投げしないで、自分で成し遂げようとは考えないのか』

『もう、手遅れなんだよ。みんな死んだ、ここにいた奴もいない奴もみんな死んだ。少しでも命が残るように、俺が死ねと命令した。もう、俺も引けないんだよ』


『皇帝はああ見えて口にしたことは守る男だよ。王の首を差し出せば進軍を止めるかもしれない…』

『あの馬鹿の首はどうでもいいが、確証が無いことを鵜呑みにするほど頭はいかれてない』


奴は構えを解いて俺に考え直すように声をかけようとした…

甘いんだよ…


地面に落ちた女の突剣の先を握り奴に向かって突き出す…


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