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ゴリゴリ、ガリガリ、ゴリゴリ、ガリガ…
顎が痛いな、それにしても体が軽く感じる。サチルの作った飲み物、結構効いているんじゃないか。やっと食べ終わった。さてと…
僕はおもむろに立ち上がり隣の家に向かう。
『モフィーさん、サチルいますか』
『あらハクレ君、あの子ったら部屋から出てこないのよ、声かけてくれるかしら』
『お邪魔します』
サチルの部屋の前、扉をノックする。
『ママ、ほっておいて』
『サチル、僕だよ。ハクレだよ』
返事がない。
『サチル、入るよ』
ベッドの上でうつむいているサチルの隣に座る。
しばらく続く沈黙…
『もう、大丈夫なの』
上目遣いで調子を聞いてくる。
『おかげさまでもう元気だよ。サチルの作ってくれた飲み物とお粥が効いたみたい』
『あれを食べたの』
驚きながら顔を上げるサチルのほうを向きながら。
『全部食べたよ』
『ばか、ばか、本当にばかなんだから』
僕の胸に顔をうずめながら、弱弱しく僕を叩く…
『ありがとう、サチル』
真っ赤に目を腫らしたサチルを愛おしく思う。
『いいから、帰って寝てなさい。もう大丈夫よ』
僕は自分の家に帰り、今日は休むことにした。
『旦那、明日行こうと思うが一緒にいくかい』
『残念だが、しばらく行けそうにないな。よろしくと伝えてくれ』
『あいよ』
さてと、明日が楽しみだ。どうせあの嬢ちゃんのことだ今日にはあいつのところに行ってるはず、あいつとはさしで話がしたいからな…
次の日の夕方、酒を片手に奴の店に向かう。
『貴様、ハクレになんのようだ』
厄介な奴に見つかったな。
『今日は客として頼みごとをしに来ただけだぜ、エヌディ』
『信用はできんな、お前は危険な男だ』
『なら、立ち会うかい。俺はかまわないぜ』
黙って俺の横に並び奴の店に入る。
一瞬、驚いた顔を見せたがすぐに表情を戻す奴。
『マケイジさんいらっしゃいませ。今日はどうされました』
『仕事の依頼に来た。隣のはおまけだ』
鋭い眼光で俺を睨むが俺には関係ない。
『エヌディさん、大丈夫です。危なくなったらすぐ家に駆け込みますから。2人にしてもらえますか』
『しかし、ハクレ』
『大丈夫、この人は僕に危害を加えることはありませんよ。僕を信じてください』
『わかったハクレ、何かあればすぐ来るんだぞ。貴様ハクレに何かあればわかっているな』
『それならそれで、俺には都合がいいが…何もないさ』
エヌディは店から出て行く。
『マケイジさん、本当の要件は』
『その返しは半分当たりで、半分外れだな。仕事の依頼はこの刀についてだ』
『半分…刀の件から伺います』
そう言うと奴は、紙を取り出し話を聞く体勢に入った、商売モードか。
『この刀の持ち手の部分を重心を変えずに俺の指2本分延ばしてほしい』
『太さも変えずに、でよろしいでしょうか』
『そうだ、材質は何でもいい。むしろ任せる。金額もいくらかかってもいい』
そういいながら、俺は刀を腰から抜き、奴に渡す。
受け取った奴は以前のように再度刀身を眺め、重心を確認したあと、持ち手の部分を観察する…
『マケイジさん、これは古代の品ですよね。持ち手も初めからこれでしたね』
『その通りだ、刀身は手入れが出来たが、持ち手は方法がわからなくてな、使用に問題がないからそのまま使っていたんだが、できそうか』
奴は持ち手を色々な角度から眺め、考え込んでいる。
『やってはみたいです…しかし、このバランスが失われる可能性もあります。ばらしてみないとわからない…ですが、ばらしてしまって戻らない危険性も…』
『やってみてくれ。もし駄目になってもそれはかまわない。むしろいい機会かもしれない…』
『では、お預かりします。もう半分についてお聞きします』
『お前と酒を飲みたいと思ってな』
俺は持ってきた酒を目の前に突き出しながら言う。
『つまみは何がいいですか』
さわやかに微笑みながらそんなことを聞く、いい息子だな、お前がうらやましいぜ…
『お前に任せる』
奴の作ったつまみと俺の酒を作業場に並べながら酌み交わす…そろそろ頃合か。
『もしよければ聞かせてもらえますか、僕の両親のことを…あなたが死に場所を探している理由を…』
察しがいいのか、偶然か。どちらにしても好都合。
『実は、それを話しに来た…聞きたくないと言われればやめるつもりだったがな』
奴は、手に持った杯を飲み干し、真っ直ぐに俺を見つめ、頭を下げた。
『ありがとよ、あれは…』
俺は自分の昔話を話し始める…




