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まったく、面白くない。これが商人の会話なのかしら、いやこの2人がおかしいのでしょうね。こんな情報の少ない会話本当に面白くないわ。


私にとって、ハクレという男は面倒くさいだけの男だわ…イシュト様はこれのどこがいいのかしら、あの方の考えていることは計り知れないわ…


クラッチは満足そうね…そろそろ私のターンかしら。とはいっても本人に聞くことは無いけどね、わかる範囲は調べてイシュト様には報告済み…

今現在の収穫は2人目の父と言うのが後ろのエヌディってことと手作りのお菓子を用意できるってことぐらいね。王都ギルドのマスターが、初めあんなに怖い顔をしていたのに、「父が2人」のところでハクレを見て目を潤ませて頷いている姿はなかなか見れるものじゃないわ。


『では、また遊びに行くとしよう』


え、もう帰るの。まったくこれだから男は…


『アンナよ、私はそろそろ帰るがお前はどうする』

『私としてはハクレがにんじゃカクレと認めた。その事実が確認できれば用事は済んだわ』

『マケイジはもういいか』

『俺も、もういい。ハクレの後ろの奴がまたやる気になると嬉しいんだが』


エヌディはマケイジに刀を返す。

『せっかく息子が止めてくれたんだ。俺の手にかかることは無いと思え』

『嬉しそうな顔しやがって』


ハクレも悪い気はしてない見たいね。不思議なものだわ男って。



『そうそう、ハクレ。イシュトにもこのことは伝えてもいいかしら』

『アンナさん、ご自由にどうぞ。あなたも黙ってはいられないでしょうしね。遊びに来てもらってもかまいませんとお伝えください』


どこまでわかっているのかしら…


『それを聞いたらイシュトが喜ぶわ』


その場の全員が腰を上げ、入り口に向かおうとするとふいにハクレが口を開く。


『クラッチ殿、この間の貸しはまだ生きているでござるか』


クラッチは振り返らずに一言。

『当然だ、私は商人。一度した約束は必ず守る。貸し借りもしかり』


『ありがとうございます』


収穫が少ない…はぁ…




そろそろ、クラッチとの面会が終わる頃ね…待ち遠しいわ…


そわそわする気持ちを落ち着ける為に私はアンナが調べ上げたハクレ様に関する情報を読み返す。


まずは彼のお爺様、ソフィル様のこと、深い知識と技術、そして人間性。今の彼はこの方の存在なくしてはありえないわね。敬意と感謝の気持ちしかないわ。素敵な彼をありがとうございます。


あとはあのギルドの受付嬢。お父様はギルドマスターのエヌディ、本人の剣の腕も上級、彼と幼馴染…何かにつけて彼に付きまとっているようね。カクレ様への気持ちはこの間わかったけど、ハクレ様に対してはどうなのかしら。早い段階でこの家族には接触が必要ね。


クラッチとマケイジは彼に対して好印象、特にクラッチの評価の高さはかなりのもの…今日あの方に何を語るのか…



ああ、まだまだ資料はあるけど気になりすぎて余計落ち着かないわ。

私はお気に入りのハーブティーを入れて、彼以外の情報を整理する…逢いたいわ。

その気持ちを紛らわすように情報整理を行い。各方面への指示を手紙に書き連絡用のポストに入れる。


1人で待つ時間は長い、仕事が手につかない…あの日から、逢えないことで彼への想いは募るばかり…


扉から音がする、急ぎ内容を確認する…私は手早く部屋を片付けると出かける準備をする。




待っていてくださいハクレ様、いま逢いに行きます。




『ん、どうしたハクレ、風邪でもひいたか』

『いや、急に寒気が。昨日は作業場で寝てしまったので』


エヌディさんととりあえず悪いことにはならなかったことを喜びながら、今後のにんじゃ活動について他愛の無い話をしていた。


『風邪はひきはじめが肝心だ、よし、サチルに送らせよう。旦那の看病は妻の仕事だからな』

『ちょっと、エヌディさん。サチルは仕事中でしょう』

『心配するな、息子よ。俺はここのマスターだぞ』

そう言うと上機嫌のエヌディさんはさっさと部屋から出て行ってしまった。大丈夫なのかなこんなことして。

待っていても仕方がないので僕もホールのほうに向かって歩いていく。その中で正直ほっとしていた、にんじゃを続けることができるどころか、かなりの実力者と一定の関係を築くことが出来た。今後もにんじゃをするうえで重要な部分、正体を探る力のある人間が減ったことを意味する。動きやすくなった…


『ハクレ、パパから聞いたわ。すぐ帰りましょう』

『でも、仕事はいいのかい』

『いいのよ、後はパパが私の変わりをするから』


エヌディさんが窓口…人が来るのかな…あ、窓口から手を振ってる…冒険者が驚きながらも殺到した…


『さすがはパパね、強さを求める冒険者には大人気なのよ。昔からたまに窓口に立って新人の相談にのったり、訓練に付き合ったりしてるのよ』


『さすがは、マスターってところか』

『ああ見えてもマスターだからね。肩書きは伊達じゃないわ』


商人用の窓口にはきたこと無いんだろうな…


『見ての通りよ、問題ないから帰るわよ。ハクレ、顔色が悪いわ、早く行きましょう』

僕はサチルに引きづられるようにしてギルドを後にした。


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