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僕はいつもいつも、肝心なところで何で抜けているんだ…自分の迂闊さを呪いたい…


目の前の光景にめまいを感じながら、すでにおろおろする以外の道は無かった…


始まりは家の前に仁王立ちのサチルからの一撃から始まった。僕の名前を叫びながら接近するサチルにエヌディさんが立ちふさがり。そこへ迷い無く木刀を打ち下ろす。それを白刃取りで奪うと、サチルに対して横なぎに振るう。家の入り口まで下がりもう一本の木刀を手に取り、打ち合いが始まる。


『パパ、なんで邪魔するのよ。ハクレに話があるのよ』


2人は手を止めずに言葉を交わす。


『話がある奴がいきなり木刀を手に名前を叫びながら駆け寄るものか』

『最近は色々うるさいわねパパ』

『そんなことでは、ハクレが嫁にもらってくれんぞ』

『それこそ、余計なお世話よ』


実に楽しそうだ、どう見ても実力はエヌディさんが上だけど、微妙な手加減が勝負を長引かせるな…サチルに花を持たせるとしよう。


『ん、』

エヌディさんが不意に木刀を下げる。

『隙有り』


サチルの木刀がエヌディさんの喉元に突きつけられる。

『やったわ、ハクレ見たわね。パパから一本取ったわ。ハクレ間違いないわよね』

サチルは嬉しさのあまり僕に抱きついて顔を近づけて何度も何度も確認してくる。

騒ぎを聞いてモフィーさんも家から出てくる。


『あらあら、サチルったら家のまん前で大胆ね』


その言葉に自分の状態を確認したサチルが顔を真っ赤にして家の中に駆け込む。


『ハクレ、やっぱりズルはいかんなズルは』

『僕はやりたいようにやっただけですよ』


僕の肩をバンバン叩きながら肩を組んで家に入る僕らを微笑ましいものを見るように優しい眼差しのモフィーさんが印象的だった。




もう、私ったらあまりの嬉しさに我を忘れてあんなこと…でも、そもそもの原因はハクレじゃない。私は堂々としていればいいのよ、そうよ…


やめやめ、あのパパから一本取ったのよ、こんな記念すべき日にこんなの私らしくないわ。でもパパにしては変なタイミングで隙が出来たわね…まあ、いい、一本は一本よ。


うーん、でも今日のパパは変だわ。『そんなことでは、ハクレが嫁にもらってくれんぞ』いままでそんなこといったことないのに、いつもなら『俺に一撃入れるまでサチルはやれん』とかいうのに…

わかんないことはわからない、今日の夕食は豪華にしてもらわなくちゃ。ママに話しにいこうっと。


私は自分の部屋から出てキッチンにいると思われるママの所へ向かう。


『ママー、パパから一本取ったわ。今日は記念日よ。夕飯は豪勢にお願いね』


『今日はハクレ君もいるから、デザートも期待していいんじゃないかしら。ふふふ』

『え、ハクレ今日は一緒に食べるの、珍しいわね。今日は珍しいことばかりだわ』


不思議なことは重なるものなのかしら…そう思っているとママから新しい不思議が告げられる。


『パパとハクレ君が裏庭でなにかしてるのよ。2人ともどうしたのかしらね』


ひょっとして、ハクレがパパに一撃入れたとか…いやありえないわ。こっそり見に行こう。

それにしても静かね…打ち合う音が一切しない…どんな訓練なのかしら。こそこそして怪しい。


私はそっと家の裏庭が見える位置に移動して気配を殺して覗く。


自分の目を疑った…なにあの動き、本当にハクレなの…

パパは明らかに手加減をしているけど、それでも、木刀をかすらせもしない。

自分からしゃがんだり、身を伏せるような動き…普通は自分の武器をしっかり扱う為に足元をしっかり固め腰が落ちるような体勢をみんな嫌う。立ち上がりそこから武器を構えるのは隙が大きく、多い、それは無駄な動きだから。


舞うように上下の動きを多用するハクレ、パパはちょっとやりにくそうね。本気なら一閃でかたをつけるような状態ね…


そして私は思い出す。ハクレがずっと走り込んでいた昔を…私はてっきり体がぶれないように下半身を強化しているんだと思っていた。ハクレは強くなることを諦めてはいなかったんだ…ハクレ…



『よし、そろそろ終わりにしてやるか』

パパの動きが1段回早くなる、その動きを読んでいたかの様にハクレがパパの足元に飛び込む、その流れのまま地面に両手を着きパパの足を払いにいく。


『まだまだだな、ハクレ』

『ですね』


飛び込みに合わせて下がりながら木刀を振り下ろしハクレの顔の前に木刀を突きつけているパパは嬉しそう…ハクレもとっても嬉しそう…いいな、なんか分かり合ってる感じ、うらやましい。私も…


『ハクレ、次は私と勝負よ』


『『サ、サチル』』

なによ、2人して人をお化けみたいに言って。


『さあ、ハクレやるわよ』


『エヌディさん、だから裏庭はっていったじゃないですか』

『いやーあの感じなら当分出てこないと思ったんだがな』

こそこそとして、なんかイライラしてきたわ。


『まあ、見られたものはしょうがない。ハクレやってやれ』

『結局、こうなるんですね、恨みますよ』


私はパパから木刀を奪い取ると構える。わくわくするわ。この湧き上がる感じ、たまらない…

『始め』

嬉しくてパパの声に反応するのが遅れた…


気がつけば私はハクレに抱えられるようにして仰向けになっていた。

『それまで』


勝負は一瞬、気を抜いた私が悪い…でも嫌じゃない、こうやってハクレに抱えられるのもいいものね。


『大丈夫、サチル』

動かない私を心配してか、顔を近づけて聞いてくるハクレ、不思議と恥ずかしくない…

『大丈夫よハクレ…』


できればもうちょっと、こうしてて欲しいな…でも無理ね。

私は身体を起こし、パパの方を向く。



『そのわざとらしい、咳払いをすぐやめて頂戴、パパ』


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