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いつもの日常…にんじゃを封印して3日が過ぎた。今日はギルドへの納品に荷物を持ってきていた。いつものように商人用窓口に品物を納品する。


『ハクレ、ハクレ。こっちだこっち』


僕を呼ぶ声の方を向くと、大きな身体を無理矢理小さくしようとして逆に目立ってるエヌディさんが小さな声で手招きしている…


『どうしたんですかいったい、目立ってますよエヌディさん』

『声が大きいぞ、ここでは色々不味い。とりあえず俺の部屋に行くぞ』


よくわからないが言われるがままエヌディさんの後について執務室まで付いていく。


とにかく座れと、来客用と思われるソファーに座らされ、向かいにエヌディさんが座る。

『ハクレ、お前何をやった。俺に正直に話せ、俺は絶対にお前の力になる。さあ言ってみろ』


エヌディさんは真剣な表情で僕の両肩を掴むと真っ直ぐに僕の目を見て言う。


『待ってください。何があったんですか、状況がわからないとどう答えたらいいかわかりませんよ』


両肩の手をエヌディさんに戻し、エヌディさんの目を見て言う。僕の目に何かを感じたのかほっとした表情で事情を話してくれる。


エヌディさんからの話しは驚きもあったが想定の範囲内でもあった。思ったより動きが早いとは思ったが…きっとアンナさんの力だろうな…

今日の朝、エヌディさんが出勤してくるとすぐに来客があったそうだ、その相手はクラッチ。朝一に王都商人トップの来訪、かなり慌てたみたいだ。要件は僕の事…どうにかして会いたいが仲介をお願いできないかとのこと。家も隣でおじいちゃん亡き後、親のような存在のエヌディさんに個人的に頼みたいと。返事は夕方自分の手の者を使いによこすから考えてみてくれと5分程度の滞在ですぐ帰っていったそうだ。


『そういうわけだ。あのクラッチが利益が絡まない個人的な頼みをしてきたことにも驚いているが、本人直接で来たことにはさらに驚いていてな。当然ハクレの意見を聞かないことにはと思って呼びに行こうと思ったら窓口にいたからつい、あんな行動をな』


『個人的に面識は無いはずですし、会いたい以外には何も言ってないのですか』


『要件は一切なしだった。もしお前が何かのトラブルに巻き込まれているのではと心配になってな。奴が直接だからな良いことにしろ、悪いことにしろ大事だからな』


うーん、ほぼ確証を持ってからの接触だろうからな…断るのもわざとらしい…会うしかないか。


『身に覚えはないですが、せっかく会いたいといってもらえているのなら会ってみたいと思います』


『確かに、商人として会っておくのも今後役に立つかもしれんしな。時間とか調整したいからお前も夕方もう一度来てもらえるか。あと、このことはサチルには内緒だぞ』


『何でですか。別に知られてもいいと思いますけど、とにかく夕方来ます』

『うむ、窓口には話を通しておくから、勝手に入って来い』


いいのだろうか。まあ、エヌディさんが言ってるからいいのかな。



とにかく、夕方まで店開くかな…


僕の店で扱っているのは、傷薬や毒消しなどの薬品類や、簡易コンロや、調理道具等の金物、耐火性の手袋等の職人が使う道具類等雑多に扱っている。主なお客さんはじいちゃんの代からのお客さんで高齢の職人さんや近所の人が薬を買いに来る程度、まあギルドへの納品もあるから1人でやっていくにはちょうどいいともいえる。


『坊ちゃん、今日は店開けてるんだな。この間来たときは休みだったからな』


『ゲンさん、いらっしゃいませ。材料採りに行っていたものですいません』


『あやまるこたねぇよ。休みならまたこりゃいい。ここに来る連中は坊ちゃんの腕を知ってる奴らばかりだからな、他じゃたのまねーよ』


ゲンさんは旧市街で貴金属の細工を行っている職人さんで彫金に使う特殊な工具の調整等の仕事をくれる、日用品とかも家の店で買ってくれる常連さんの1人だ。


『今日はどうしたんですか。工具の調整はこの間やったばっかりですけど、何か不具合でもありましたか』


『いや、ちょっと暇だったからな。加工用の溶剤の相談しがてら遊びに来たのよ』


『おう、今日はやってんだな坊ちゃん。お、ゲンもいるじゃねーか』

『何だシゲじゃねーか。暇なのか。はっはっは』

『うるせーよ、暇はお互い様だろうが』


シゲさんは皮製品の加工職人さんでやっぱり家の常連さんだ。

『坊ちゃん、強くて細い糸がいるんだがなんかいいのねーか』

『そうですね、この間作ってみた糸があるんですけど使ってみますか』


『ほう、とにかく見せてくれよ。坊ちゃんの新作なら期待大だぜ』


僕は奥の作業場に戻って新作の糸を持ってきてシゲさんに手渡した。ほうほうと言いながら強さなどを確認していくシゲさん。


『いい糸だな、坊ちゃんいくらだ』

『試作品なのでお金はいいですよ。使ってみてから意見くだされば』

『いつも思うが、坊ちゃん自分の品の価値わかってねーな』


ゲンさんも深く頷く。これはいつものように小言が始まりそうな雰囲気だ…やばい。

お年寄りの小言は果てしなく永い…僕は回避すべく話題を変える。


『そういえば、新しい茶菓子を作ったんですよ』

2人とも話をやめこちらを見る。


『ハクレー、いるー。あら、ゲンさんにシゲさん元気』

タイミングいいところにサチル登場だ。

『サチル、今新作の茶菓子を出そうと思ってたんだ。お2人と待っててよ』

『へー、楽しみね。待ってるわ』


よし、話が逸れた…今のうちにっと。僕は奥に引っ込んで米の粉を捏ねて小さく薄く成形してさっと湯掻く。その間に大き目の蜜柑を絞り、花の蜜を混ぜて軽く暖める。湯掻いた物を水で冷まして器に移して完成。


『お待たせです。どうぞ召し上がれ』

4人分の器に暖めた蜜柑蜜をかけてそれぞれに差し出す。


おやつを食べながら最終的には、三対一で僕の甲斐性について小言となった…失敗だ。



今日は他にお客も無く、あっという間に夕方になってしまった。

3人に用事があることを伝えて店を閉める。


『どこに行くのよ、ハクレ』

『ちょっと、ギルドに用事があってね』

『ふーん。まあいいわ私は休みだからついていってあげる』


え、不味い…どうしよう、連れていったらエヌディさんになんていわれるか…


『サチル、あれなんだろう。ほら、見てみてよ』

『ん、なになに。どれよ、なんかあるの。なんもないじゃない』


サチルが後ろを向いた瞬間、路地に向けて音も無く駆け出しその場を離れた。


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