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『あらあら、ハクレ君は無事なのね。サチルったら無茶して』
僕はモフィーさんに事の次第を話した。
『魔物化した犬にやられたのね。肩の傷は残っちゃうわね…』
モフィーさんは困った顔してサチルの肩の傷を眺めていった。僕は申し訳ない気持ちでいっぱいだった、僕を庇わなければ、1人ならこんな傷を負うことも無かったのに…
『僕も強くならなきゃ…』
モフィーさんにも聞こえないくらいの声で呟いた。
『ハクレ君、サチルももうすぐ起きると思うから、夕ご飯でも作りましょう、手伝ってね』
『はい』
今は起きてきたサチルにおいしいものを食べてもらおう、今の僕にはそれくらいしか出来ないから。
モフィーさんと台所に立ってお手伝いをする。とはいっても手先は器用だし、おじいちゃんやモフィーさんに料理を含め家事全般を教え込まれている僕は家事が大好きだ。
『じゃあ、私がメインを作るから、サチルのためにあまーいデザートをお願いしようかしら』
僕の腕前をしっているモフィーさんはハクレ君にお任せよといってくれる。
勝手知ったるエヌディさんの家の台所で邪魔にならないように手際よく料理に取り掛かる、林檎を小さめに切り分け小さななべで砂糖と一緒に煮込んでいる間に小麦粉をこねる。
林檎がうっすら透き通ってきたら、煮汁を練った小麦粉に少しづつ足して薄く延ばす。Sの上に煮込んだ林檎をちょいちょいと並べて、薪の釜にポンと入れる。あとは焼き目が付くまで放置で完了。
『モフィーさん、こっちはあと待つだけですよ』
うんうんとお頷きながら頭を撫でられる。
『本当に、手際がいいわ。男の子にしとくのがもったいない位よ、サチルと性別が逆ならよかったのにね。ハクレ君みたいな娘が欲しかったわ私』
冗談か本気か分からない表情で僕の手を握ってくる。
『あとは麺を湯がくだけだから、サチルの様子を見て来て頂戴』
『それには及ばないわ、ママ。それよりハクレ大丈夫なの』
『大丈夫だよ。サチルのおかげで傷1つないよ』
ほっとした表情をするサチル。
『それよりも、サチルの傷のほうが心配だよ』
『こんなもの、かすり傷よ大丈夫大丈夫。それよりもこのいい臭いはハクレあんたの作品ね』
すでに興味はデザートに向かっているようだ…
『もうすぐ、ご飯できるから手を洗って座ってなさい。まったくハクレ君を見習って欲しいわ』
『ママ、人には向き不向きがあるのよ。ソフィルさんもそう言ってるわ』
はいはいっていいながら夕食を用意するモフィーさん。
『では、いただきましょう』
すごい勢いで食べ始めるサチル、ため息をつくモフィーさん、行儀よく食べる僕。
『それにしても、街中でも魔物化するなんて怖いわね』
『そうね、ハクレはやっぱりもうちょっと強くなる必要があるわね。明日からもびしびししごくわよ』
『うん…がんばるよ…』
サチルは驚きながら、やっとその気になったのね。と感動しているようだ。
『サーチールー、大丈夫なのかー』
エヌディさんが家に飛び込んできた。サチルに向かって両手を広げて抱きつこうとしている。
『パパ、私は大丈夫よ』エヌディさんの鼻先にフォークを付きつけ動きを止める。
『そ、そうか。さすがは俺の娘。見事なフォークさばき…』
言葉とは裏腹にかなりがっかりしている姿がかわいそうだ。
『ハクレ、無事か』
おじいちゃんがゆっくりと扉から入ってくる。
『大丈夫だよ、サチルが守ってくれたんだ』そうかそうか。と言ってサチルの頭を撫でながらありがとなと言っている。サチルは少し照れながら。
『私はお姉さんだから、当然のことをしたまでよ』エヌディさんは頭を撫ぜるおじいちゃんをうらやましそうに見ている。
『それに、ハクレがやっとまじめに訓練する気になったのよ、ソフィルのおじいちゃん』
『ほほう、そうかそうか』
『はいはい、2人ともまだご飯あったかいから手を洗ってきてくださいな。今日はハクレ君のデザートもあるのよ』
5人でご飯を食べて、僕の作ったデザートも食べている。
『そういえば、おじいちゃん古代のアイテムはどうだったの』
『ああ、失われた魔法次代のものみたいじゃが、詳しくは家で鑑定してみんとな。まあ、やってみんとわからんわい』
そう言って、懐から小さな棒のようなものを取り出した。
『ここにあるスイッチのようなものがあるんじゃが、動力が切れておるようでな、作業場で色々試そうと思って、許可を取ってもってきたんじゃよ。わしの勘では大したものではない気がするがな』
興味深く観察する僕の反対側では、エヌディさんとサチルがデザートの最後の1つをかけてじゃんけんを繰り返していた。なかなか勝負がつかないのをみて。モフィーさんがひょいっと食べてしまった。
『ああーママずるいわ』『モフィー、なんという事を』
『片付かないから、これは私のものよ。もう無いけどね。それにしてもハクレ君の作るものはおいしいわ』
さっさと片付けに入るモフィーさん。お互いに人のせいにする親子…
『さてと、そろそろお暇するかのハクレや』
『ご馳走様でした、今日はありがとうサチル』
ちょっと顔を赤くして『別にいいのよ』と言って見送ってくれた。




