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煌びやかな街の中にあって少し静かなイシュトの家。その玄関先にいる。今夜の展開がまったく予想できない中、極度の緊張状態の僕は意を決して扉を叩く…



『カクレ様ですか、どうぞお入りください』


以前と変わらない自然な美しい声で中へと誘われる。

『失礼するでござるイシュト殿』

緊張しながら中に入る僕に軽やかな足取りでイシュトが近づき僕の胸に飛び込んできた。

あたふたする僕の顔を見上げながら。


『今日を心待ちにしていましたわ、カクレ様…もしかしたら来ていただけないのではと、不安でしたの…あ、すいません』


イシュトは慌てて僕から離れて手をもじもじさせている。そんな姿を見て僕も若干緊張がとけたみたいだ。


『イシュト殿、拙者にんじゃであるが故、約束は守るでござる。どこまでの力になれるかはわからぬが全力を尽くすでござる』


『頼もしいですわ、アンナ姉様はまだ着ていなくて、そろそろお見えになると思うのですが…』


そんな話をしていると、表から馬の嘶きが聞こえしばらくしていきなり扉が勢いよく開け放たれる。



『イシュトー、ごめんごめん、遅くなったよ』パッと目を引く真紅のドレス、反対側が透けて見える若草色の肩掛けを羽織り、美しい髪飾りで纏めた髪。

大きな口をあけて豪快に笑っているがその笑顔は人をひきつける美しさを保ったままであった。


この人がアンナさんだろう、豊満な胸にイシュトを抱きしめている。

『アンナ姉様、カクレ様がいますのに恥ずかしいですわ』

『イシュト、私とあんたの間柄で何を恥ずかしがるんだい。見せつけてやればいいじゃないか。こんな美女2人の絡みを見たがらない男がいるもんかね』

『姉様がよくても、私が恥ずかしいのです。もう、離して下さい姉様』



僕はどうしたらいいのか、なんとなく直視はしないようにしていたけど…


『今日はつれないねー、まさか、あんたこの男に…』

アンナさんはイシュトをじーっとみながらじりじりと距離を詰める。

『そ、そんなんじゃありません。カクレ様に失礼ですよ、姉様』


それを聞いたアンナさんはくるりと向きを変えて僕にじりじりと寄ってくる…値踏みするような目で見られ壁際まで追い詰められる。


『顔を隠しているけど、なかなかいい男と見たね。イシュトにその気がないならあたしがいただこうかね』


『アンナ殿、拙者はペットでは無い故、そう簡単に差し上げるわけにはいかないでござるが』


アンナさんは動きを止め。大笑いした。


『面白い男だね、気に入ったよ。本気で私のものにならないかい。不自由はさせないよ。私の相手ができる男はこの王都でも片手もいない、どうだい』


『アンナ姉様…本気で怒りますわよ…』

わかった、わかったとジェスチャーをしてアンナさんは僕から離れる。


『カクレ様、お気を悪くしないでくださいね。姉様はこういう性格で、本当にすいません』


『私はアンナ、イシュトの姉代わりってところかね。この色町を取り仕切っているもんだよ。今回はイシュトのために力を貸してくれてありがとうね。さっきの話はまた考えといておくれ』

軽やかにウインクをするアンナさん。それを横目で睨むイシュト。


『拙者はにんじゃのカクレ、たまたま受けた依頼がイシュト殿の依頼であっただけのこと。どこまで力になれるかはわからんでござるが頑張るでござるよ』


外に待たしてあるアンナさん専用の馬車に乗り、移動しながら今回の件について話をする。


聞いたところ、イシュトの欲しがっている指輪はそれ自体には大した価値は無いようだ、指輪の内側にイシュトの母の名前の刻印と価値の低い宝石が3つついているものらしい。なぜそんな指輪をクラッチが手放さないか、それはアンナさんが原因だそうだ。


『カクレ、私が色町の取り仕切りができるのはなぜだと思う。もちろん私の美しさも理由の1つだけど』

『アンナ殿、それは情報でござろう。無名の新人冒険者のギルド登録情報を短時間で手に入れることができるほどの情報網。商人としては切り札の1つとして持っておきたいものでござろうな』


『驚いた…いいね、賢い男は嫌いじゃないよ。イシュトを大事にしている私への牽制なのさ』


『私は姉様の足を引っ張りたくないと思って、あの指輪はあきらめることにしたのです。そこにカクレ様が現れた、不思議なあなたを見てもしかしたらって…』

『私としても胸に引っかかっていたことだからね。それにあの男には弱味みたいなものが無いんだよ。私が調べても交渉材料になりそうなものは無い。悔しいじゃないか、かわいい妹分の指輪1つ取り返してやれないなんて』



どこまでが本当だろう…ただ、指輪を取り返したい思いとクラッチに隙が無いことは間違いなさそうだけれど、今の話だけではなんとも判断がつかないな。

それに、あの夜僕を追ってきていたのはおそらくアンナさんの手の者…僕にまかれたことは当然知っているはず…あえて触れないのは無関係と主張する為か…



馬車が止まる。そして、いろんな人を巻き込んだ初依頼が進みだす。


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