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ウェザリア王国物語~グラスノース編~  作者: 夕闇 夜桜
第三章:夏休み後半・学院編
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第七十話:休み明けと学年末試験


 冬休みが明け、学院に登校してきた生徒たちは、各々が休み中に会えなかった友人たちとの再会を喜んだり、家族旅行の土産を渡したりしていた。

 それはもちろん、廉たちも例外ではない。


「遅くなったが、明けましておめでとう」


 近づいてきたレイヤに気づいた廉が声を掛ける。


「何だ? その挨拶」

「私たちの故郷の新年にする挨拶。『明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします』ってね」

「まあ、それだと長いから省略して、『あけおめ。ことよろ』って言う奴もいるがな」


 レイヤの疑問に、結理と廉が説明しながら答える。


「なるほどなぁ」


 レイヤの納得したような声に、廉たちも首を傾げる。


「こっちには無いのか?」

「んー、あったとしても、普通に『おはようございます』とかぐらいだな」

「そうか」


 異世界とはいえ、日本と似ているところもあるこの世界だが、どうやら新年の挨拶までは一緒ではなかったらしい。


「そういえば、フィアも似たようなこと、言ってたわよねぇ」


 朱波がそう言いながら思い出すのは、年明けにシルフィアと会って挨拶すれば、首を傾げられたことだ。

 そして、今の廉たちみたいに説明したのだ。


「そういや忘れてたが、今年の抱負は? みんな決めたのか?」

「あー、そう言われると忘れてたな」


 棗の疑問に大翔がそう返し、


「書き初め、かるた、羽根突き」

「それはどっちみち無理でしょ。前者二つは道具、後者はスペースすら無いし」


 詩音の正月遊技については、朱波が答える。

 そんな面々へ、あることに気づいたレイヤが声を掛ける。


「……なぁ。一人だけ明後日の方向を向いてるが、それは良いのか?」


 それを聞き、面々が目を向けたのは、もちろん結理。


「ねぇ、結理」

「まさか、持ってるとは言わないよな?」

「持ってはないよ。作る気ではいたけど」


 それに頭を抱えるのは、レイヤ以外の五人。


「ちなみに、抱負は御神酒作り」

「ふざけんじゃねーよ。つか、学院で酒を造るとか、堂々と言ってるんじゃねぇっ!」

「おー、見事な突っ込み」


 廉の言葉を気にした様子もなく、結理は器用に音が出ないように小さく拍手しながら返す。


「ま、冗談だよ。それは目的の一つだし」

「お前……」


 結理の言葉に、廉は顔を引きつらせる。

 本当、長い付き合いのはずなのに、この幼馴染のことは分かりにくい。

 やれやれと溜め息を吐けば、担任が教室に入ってきたので、友人同士で話していた面々は席に着き始める。

 そして、ホームルームが始まり、連絡事項として放たれた担任の言葉に、一種の阿鼻叫喚がその場に響くことになった。


   ☆★☆   


「ようやく、今年度最後の試験ね」

「そうだな」

「みんなで進級できると良いわね」

「そうだな」


 登校日から一ヶ月後。

 廉と朱波がどこか遠い目をしながら話し合う。


「ま、問題ないでしょ。風邪とか引かない限りは」

「……」


 風邪と言って思い出すのは年末の件。


「ところで、結理はどうした?」

「調べ物だって。図書館に行くって言ってた」

「調べ物? あいつ。最近、調べ物多いな」

「本当よ」


 廉の言葉に、朱波が同意する。

 結理が何か調べ始めたのは、新学期に入って数日経ってからなのだが、何を調べているのかを、廉たちはまだ彼女から教えてもらっていない。

 というのもーー


「確信を得たらね」


 と、はぐらかされてしまうのだ。


「一体、どうするんだろうな」

「鷹森のことだから、ちゃっかり勉強してそうではあるけど……」


 棗と大翔が、どうしたもんかと言いながら、息を吐く。


「勉強、しないのかな?」


 結理とて完璧超人ではないのだから、勉強しないと好成績は取れないし、今回の成績次第では留年も有り得るのだ。


「試験も近いのに」

「試験も近いのにねぇ」


 タイミングとかを狙ったわけではないのに、廉と朱波のやれやれと言いたげな言葉が重なった。


   ☆★☆   


 結理は一人、学院内にある図書館の中を歩いていた。


「えっと……」


 様々な種類がある本が収納されている本棚の間を歩きながら、目的の本を探す。


「……」


 本来なら、司書に聞くのが良いのかもしれないが、探しているものが探しているだけに、下手に手伝えとは言えないのだ。


「お、あったあった」


 目的の本を見つけ、ぱらぱらと軽く中身を確認した後、机のある方へと持って行き、椅子に座って読み始める。


『その後、『光の女神』は主に人間から、『闇の女神』は主に魔族から信仰されるようになった。とはいえ、人間から見て、『闇の女神』が邪神扱いをされているかと問われれば、答えは否であり、逆に魔族も『光の女神』を邪神扱いはしておらず、人間にとっての『闇の女神』は朝に対する夜的な認識(もの)であり、魔族にとっての『光の女神』は生活するための明かりを与えてくれる、どちらかと言えば良い神と言うべきなのだろう。』

『勇者・アースレイは、魔族に尋ねた。好戦的なタイプが居ないわけではないが、今まで侵攻すらしてこなかった彼らが、何故いきなりこのような行動に移ったのかを。魔族は言う。「ならば、対峙する時にでも、我らが王に気いてみるがいい」と。』


 ぱたん、と結理は二冊の本を閉じる。

 ちなみに、補足すると、前者が女神伝説についての一部であり、後者が勇者伝説についての一部であるのだが、他の本にも、女神と勇者については肯定的だったり、否定的だったりした部分はあったが、基本的には似たような物が多かったり、独自の解釈が混ざっていたり、いろいろ脚色されていたものまでと、様々ある。

 伝説関係なんて、時間が経てばどこの世界でもそんなものである。


「やっぱり、見覚えも聞き覚えもある名前だと思ったら、伝説(こっち)に関連してたか」


 ふと思い出すのは、王城内で見た、飾られていた女神と勇者の絵。


「……」


 少しばかり思案する結理だが、一度溜め息を吐いて首を横に振ると、本を本棚へと戻し、図書館を出る。


(とりあえず、今はテストに集中しよう)


 どうせまだ、この学院には二年も居られるのだ。焦る必要はない。

 そして、試験(テスト)に落ちて、留年するつもりも更々無い。


「さーて、そのための勉強でもするかな」


 軽く腕を伸ばしながら、結理は友人たちの居る教室へと向かうのだがーー





 その際、彼女の側を通り過ぎた二人組に、結理が気づくことは無かった。


   ☆★☆   


「あ、戻ってきた」


 結理が戻ってきたことに気づいた詩音が言う。


「みんなは……勉強?」

「いくらあんまり変わらないからって、世界史とかは違うからな。けどまあ、はっきり言って、よう分からん」

「でしょうね」


 『字』を必要とする国語や『計算』などをしなくてはいけない理数系は何とかなるが、歴史などは根本的に違う。


異世界(こっち)に来てから約一年経つのに、分かんないこと、まだまだ多すぎるのよねぇ」


 溜め息混じりに、朱波がペンを回しながら言う。


「それよりも、今は目の前の試験だ。勉強して、出来る限りのことをする。結局は今まで通りだろ」

「そうだね。合格しなきゃ、弟と……下手したら、妹たちとまで同級生になっちゃうし、先に卒業されちゃう」

「こうしてまた高一をやっている時点で、今更だと思うがな」


 結理の、懸念する部分がずれているなぁと思いつつ、廉がそう返す。


「……もういっそ、みんなで留年する?」

「詩音、縁起でもないこと言わないで!」

「受験シーズンに落ちる的なことは言っちゃ駄目。ここに受験生が居るんだから」

「おい、結理。それは俺のことか。なあ、俺のことなのか?」


 詩音の言葉に、朱波と結理が反応するのだが、会話を聞いていたらしい棗が声を上げる。


「ははっ、何を今更。つか、鷹森家(うち)は来年、三人受験生になるんだよ? あのまま元の世界(むこう)に居ればの話だけど」


 遠い目をしながら、結理が言う。

 完全に家事と受験の両立しなくてはいけない未来が予想できる。


「あー……年齢差を考えれば、そうだな」

「……そういえば、東雲家(うち)も結理たちのとこと同い年だから、蒼緋(そうひ)も受験生になるのよねぇ……」


 結理の妹、結の同級生にして、幼馴染でもある弟のことを思い出した朱波も、若干遠い目をする。


「やっぱり、心配か?」

「うちは友愛が居るから大丈夫だと思う。何だかんだで、二人ともしっかりしてるし」

「蒼緋も大丈夫じゃないかな。兄さんも居るし」


 特に心配しているような素振りを見せない姉二人。


「なら、いいんだが」


 二人が大丈夫と言うのなら、廉たちは特に何も言うつもりはない。


「それじゃ、進級目指して、勉強しますか」


 その一言で、面々は学年末試験に向けての勉強を開始したのだった。



読了、ありがとうございます


誤字脱字報告、お願いします



さて、今回で第三章は終わり、次回からは第四章に入ります


面々の試験結果も次話で分かると思いますので、それまでのお楽しみということで


あと、活動報告にも書きましたが、スローペースでプロローグから修正中です。読み直すほどの手は加えてはいませんが、一応のご報告まで


今年の更新はこれで終わりとなりますので、来年も引き続き、お付き合いお願いいたします


それでは、また次回



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