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ウェザリア王国物語~グラスノース編~  作者: 夕闇 夜桜
第二章:異世界召喚、鷹森結理編
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第三十話:騎士と旅を


「……卵?」

「卵だな」

「卵だ」


 宿を出て、王都に向かう三人が見たのは、いかにも手作り感溢れる巨大な卵の形をした物体だった。


「…………」

「…………」

「…………」


 思わず遠い目をして卵(仮)を見つめる三人。

 というか、何となく理由は思い当たるので、放置するか否か。


「あと少しで、町に到着出来るけど」

「…………」

「…………」


 どうする? と尋ねる結理に、無言で卵(仮)を見る二人。


「燃やして卵焼きにでもする?」

「お前って、時々残酷だよな」


 卵焼きじゃなくて、他のものでも良いけど、という結理に、分かって言っているだろう、と棗がツッコむ。


「おい、鷹森。卵焼きは燃やすんじゃなくて、焼くんだろうが」

「あ、そっか」

「そっか、じゃねーよ。そもそも大翔もツッコみ所が違うし、燃やす・焼くの違いなんざ、今は心底どうでもいい」


 大翔の指摘に、納得したかのような返事をする結理に、棗はとにかくツッコんだ。


(そろそろ頭痛薬と胃薬が欲しい……)


 ボケまくる二人に、ツッコみ続ける棗の気力は減り続けていた。

 そして、早く合流して、同じツッコみ役である朱波に共感してもらいたかった。ここまで来ると切実である。


「という訳で、出てきてください。出てこないと()りますよ?」

「いや、意味は合ってるけど違うから!」


 卵(仮)に出てこい、と脅迫じみた言い方をする結理に、字が絶対に違う! と、棗は再度ツッコむ。


「……十……九……」

「何か勝手にカウント始めたな」


 大翔が冷静にそう告げる。


「……はーち……なーな……ろーく……」

「…………」

「……さーん……いーち」

「飛ばした!?」


 無言で見守っていたら、数を飛ばし、ゼロにした。


「はい、ゼロ。ということで、斬らせてもらいまーす」

「ちょ、ちょっと待って!」


 慌てて卵(仮)の中から飛び出してきた人物は、上を見上げたまま固まる。

 一方で、()を振り上げたまま、結理は悪い顔をしていた。


「鷹森。お前、すっげー顔してるぞ?」

「悪い顔でしょ? 大丈夫。拷問なんてしないから」


 何ともいえない表情で言う大翔に、分かってるから、と笑顔で返す。

 それでも、何か企んでいるように見えるのは気のせいか。


「いや、笑顔で言われても、俺たちに説得力も無いからな!?」

「知ってるわよ。んで、騎士さん?」

「は、はい!」


 何度目かになる棗のツッコミを適当にあしらいながら、結理が卵(仮)から出てきたーーグランドライトから三人を追ってきた人物、騎士の青年に話しかければ、青年は慌てて返事をする。


「様子からすれば、私たちを捜しに来たんでしょ。ご苦労様ね」

「えっと……?」


 苦笑いして言えば、首を傾げられる。

 捜し主はおそらく廉たちだ。しかも、騎士であろう青年が動いているのを見ると、騎士団自体が三人を捜しているのだと分かる。


「あと、尾行はもう少し上手くなってね。グランドライト出た時からバレバレだったから」

「気付いていたんですか……」


 肩を落とす青年に、どうしたものか、と結理は大翔と棗に尋ねる。


「どうせ目的地一緒だし、この人連れて行きたいけど……どう?」

「別に良いんじゃね? 見られるなら近くからの方が良いし」

「下手な尾行で、依頼の時に足手まといになられても困るしな」


 二人の返答を聞き、結理は苦笑いする。


「先輩……」

「それは……」


(その状況になりかけてる今のことですよね?)


 大翔も棗に目を向けながら、そう思う。


「何だ?」

「何でもありません」


 そんな結理と大翔に疑問を持ったのか、尋ねる棗だが、結理は何でもない、と返すのだった。


   ☆★☆   


 止めていた足を動かし、歩くのを再開した一行だが、ふと気になった結理は尋ねる。


「ところで騎士さん」

「何ですか?」

「ここから王都まではどれくらいですか?」


 その問いに、青年はそうですね、と思案する。


「僕の場合だと、三日って所ですね」

「三日? ってことは……」

「三日なら良い方じゃない。それで、依頼を受けながら進むとなると……一週間後ぐらいには王都に着いてる計算になるかな?」


 今のペースで向かえば、それくらいにはなるだろう。


「途中で廉たちと遭遇したりしてな」


 笑みを浮かべ、からかうかのように大翔がそう言う。


「会ったとしても、私が変化(へんげ)させるわよ?」

「けど、騎士(こいつ)はごまかせんだろ」

「だよねー。今は(・・)服装までは変えれないし」


 青年を示す棗に、結理は服を見ながらそう返す。

 後々(のちのち)には服装を変えられるようにはなりたいが、今の状態では無理だ。今の状態で出来るのはせいぜい髪色と目の色を変えるぐらいだ。


(というか、目の色が変えられるのに、服は無理って……)


 魔力か実力が原因なのかは分からないが、生成魔法で服は作れたのだから、可能ではないのだろう。今三人が着ている服も布から生成魔法で作ったものだ。


(目指せ、“魔装(まそう)”)


 魔装とは、読んで時のごとく、魔法で装備することであり、使いこなせれば、服装も自由に変化させられる。さらに、着替え時間を短くし、戦闘時にはパターンも広げることが可能となる。


「でも、出来ないわけじゃないだろ?」

「まあね。それでも、練習は必要だろうけど」


 結理は頷く。

 たとえ“魔装”が出来るようになっても、切り替えが出来なくては意味がない。少なくとも、結理の場合は三パターンぐらい必要なため、修得するなら早い方が良いかな、と結理は思う。


「そろそろ昼食にするか」


 時間を見た棗がそう言う。


「もうそんな時間?」

「何食べる?」


 もう昼か、という大翔に、何にするか尋ねる結理。町を出る前に、材料と回復系の道具だけは大量に買い込んでおいたのだ。


「簡単なものでいい」

「サンドイッチ系?」

「任せる」


 最終的にそれかよ、とツッコみながらも、考える。

 夜までには町に着いておきたいため、やはり軽食の方がいいだろう、と思いながら、結理は昼食の用意をする。


「ほい」

「結局サンドイッチかよ」

「文句言わない。食器使ってないんだからいいでしょ」


 手渡されたサンドイッチを見て、文句を言う大翔に、洗うものが少ないからいいだろう、と結理は返す。

 サンドイッチを作るのに使ったのは、ナイフと小さいまな板のみなので、汚れた部分は拭いておく。町か川があれば、そこに立ち寄り、洗えば、また使うことが出来る。

 実際、水属性をメインとする大翔が洗い物担当と化してるが、その大半は家事担当の結理が行っている(なお、棗は火起こし担当)。


「騎士さん、食べないんですか?」


 サンドイッチを手にし、見つめていた青年に結理が尋ねる。


「……! い、いえ、食べます!」


 慌てて食べる青年に苦笑しながら、結理も自分の分を食べる。


 その後、五分くらい休憩し、一行は町に向け、歩き出したのだった。


   ☆★☆   


「グランドライトといい、この町といい、いい加減に『街』に変えるべきだと、私は思うんだ」

「何を言ってるんだ、お前は」


 何気なく言った結理に、棗がツッコむ。

 あの後、町についた一行は、その大きさに目を大きく見開いた。

 グランドライトよりは狭いだろうが、ギルドや市場もあり、住宅もある。

 そんな町全体を見た感想が、結理の言葉だった。

 青年は苦笑するも、この後はどうしますか? と三人に尋ねる。


「いや、それはこっちの質問だから」


 もちろん、三人がするのは宿探しだが、問題は青年だった。宿によっては泊まる人数で値段が変わる所もある。現時点で、人数は四人だが、男女比は三:一だ。仮に二部屋取ったとしても、誰かが結理と同室になる。


「三人部屋と一人部屋でいいじゃない」

「お前、それ本気か?」

「それなら絶対、四人部屋の方が安いぞ?」


 結理の言葉に、大翔と棗が反論する。


「こうなったら、もう宿次第ね」

「だな」

「さすがに一人一部屋はキツそうだからな」


 良さそうな宿の前に立ち、そう結論づける三人。


「あ、あの、僕は別の場所に泊まるので……って、あれ?」


 青年の言葉に、三人が目を向けていたので、青年は何かマズかったか? と不思議そうな顔をする。


「つか、前の町の時はどうしてたんだよ」

「この前も同じようにして、別の場所に泊まりましたよ?」


 ダメでしたか? と首を傾げる青年に、三人は溜め息を吐く。

 ダメではないし、そもそも前の町では青年が勝手に三人をストーキングしてたため、別々だっただけで、現在行動を共にしている今、別々に泊まる意味も無いわけで。


「なるほどな。いや、別に責めているわけではないんだがーー」

「じゃ、三人分でいいよね?」

「ああ」

「ーーって、ちょっと待て」


 棗が青年へ話している側で、勝手に話を進める二人に、棗はストップを掛ける。


「何ですか?」

「何ですか、じゃねーよ。何で三人分だって決まってるんだよ」

「だって、騎士さん。別の所に泊まるんですよね? なら、支払う分は私たち三人分じゃないですか」


 結理の説明に、棗は頭を抱えながらも、青年を見れば、うんうん、と頷き、棗は溜め息を吐いた。


「あー、分かった。宿は三人分。集合場所はこの宿の前。いいな?」

「はーい」

「了解」

「分かりました」


 棗がさっさと纏めれば、三人は了解の意を示すのだった。



読了、ありがとうございます


誤字脱字報告、お願いします(ちなみに、『()ります』は誤字ではありません)



さて、今回は王都までの旅に騎士が加わりましたが、三人にしてみれば、ちょうどいい道案内役って所です


棗は王都に着くまで、ずっとこんな感じの予定です



それでは、また次回



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