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ウェザリア王国物語~グラスノース編~  作者: 夕闇 夜桜
第一章:異世界召喚、篠原廉編
19/87

第十八話:夏休みの予定

【前回のあらすじ】

言い掛かりをつけられました




 セントノース学院・普通科教室内。


「それは大変でしたね。それで、彼らはどうなったんですか?」


 シルフィアの問いに(れん)は答える。


「ギルドの人に注意されて、逆ギレして出て行った。俺たちは一緒に注意されただけだがな」


 逆ギレ云々はともかく、毒草なら受け取る際に気づくだの、私たちが信頼できないのか、などと言われたのは事実だ。

 まあ、注意されただけなので、次は気をつければいいだけなのだが。


「私たちには、とばっちりよ」


 全く、と言いたげに朱波(あけは)が言えば、シルフィアが笑みを浮かべる。


「ふふ。ところでレン様」

「何だ?」

「夏休みのご予定はお決まりですか?」


 シルフィアに尋ねられ、廉は唸る。


「あー……、出来れば、結理(ゆうり)たちを捜したいなぁ、とは思ってる」

「まあ、長期休暇だからね。それを利用しない手はないし、遠出も出来るし」


 朱波も同意するように言う。


「見つかると良いですね」

「ああ」


 シルフィアの言葉に頷く廉たち三人。

 そこに、横から声を掛けられる。


「なあ、ちょっといいか?」


 声がした方を見れば、そこには少年が立っていた。


「えっと……」


 四人が戸惑っていれば、少年は自ら名乗った。


「俺はレイヤだ。レイヤ・ミリヤード」

「俺はーー」

「あ、名乗らなくていい。俺はそっちを一方的にだが、知っているからな」


 廉も名乗ろうとすれば、少年ーーレイヤに止められる。

 入学式から数週間後に入ってくれば、クラスメイトなら廉だけでなく、朱波や詩音も知っているのは当たり前だ。


「けどーー」

「廉」

「ん? 何だ?」


 それでも何か言おうとしたが、朱波が横から口を挟む。


「私たち、席外そうか?」


 その問いに、レイヤが必要ない、と止める。


「あ、いや、その必要は無いよ」

「けど、重要な話じゃないの? 雰囲気的にそう思っただけだけど」


 廉だけに話があるのかと思えば、違うらしい。


「それで、自己紹介の件だがーー」


 そこへ廉がそう口を挟み、朱波が怒りと呆れ混じりに言う。


「バカ! 今のは明らかに、彼が話しかけてきた理由を聞く空気だろうが!」

「空気読みなよ。朱波がせっかく逸らしたのに意味ないじゃん」

「いや、けどーー」


 二人に言われても、したいらしい。


「自己紹介は後回し。先に用件聞いて上げなさいよ」

「ハリセンで叩かれなかっただけでも、ありがたく思って」


 先に用件を聞けという朱波に、暗に次言ったらハリセンだと告げる詩音(しおん)


「フィア……」

「え、えっと、私も先に用件を聞いた方が良いかと……」


 廉に縋るような目を向けられつつも、シルフィアも用件を聞いた方がいいのではないか、と告げる。

 味方がいないことに肩を落としつつ、それで、とレイヤに視線を向ける廉。


「で、用件は?」

「あ、ああ……夏休み、何か用事あるのか?」


 戸惑いながらも尋ねるレイヤに、顔を見合わせる四人。


「別にあるが……それがどうかしたのか?」

「そうか。いや、そろそろ夏休みだから一緒に遊ぶつもりで声を掛けたんだが、用事があるなら、仕方ないなと思ってな」


 不思議そうな廉たちに、レイヤはそう答えた。


「そうだったのか」

「簡単に事情を話すと、私たち人を捜してるのよ。夏休みは長期休暇だから、捜すチャンスかな、って」


 納得したように言う廉に、朱波が付け加えるように言う。


「人捜し?」


 首を傾げるレイヤに頷く四人(事情を知る以上、シルフィアも例外ではない)。


「今まで集めた情報によると、西に居るらしいんだよね」

「西って、グランドライトのことか?」


 あえて伏せていたのに、あっさり言い当てられ、苦笑いする四人。


「まあ、グランドライトなら、いっか」


 その意味が分からず、レイヤを見る四人。


「グランドライトは俺の出身地だからな」

「はぁっ!?」


 レイヤの言葉に、思わず叫ぶ廉。


「そんなに驚くことか?」

「あ、いや……そのグランドライトに捜してる奴がいるらしくて、その町まで行くつもりだったんだ」


 不思議そうなレイヤに事情を話せば、レイヤはそういうことか、と頷いた。


「なら、グランドライトまで一緒に行くか?」

「いいのか?」


 確認を取る廉に、ああ、と頷くレイヤ。


「こういう時じゃないと、俺も母さんたちに会えないしな」


 寂しそうな顔をするレイヤに、そういえば、と廉たちも思う。


(母さんたち、どうしてるんだろうな)


 レイヤのように、町が離れているだけならいいが、廉たちは次元を超えてきたのだ。

 今までホームシックにならなかった方が不思議なくらいだが、とりあえず今は結理たちを捜すのが先だ。

 彼女たちを捜して、魔王を倒して帰る。

 それが、今の目標だ。


 そんなどんよりした空気に気づいたレイヤがどんよりした空気を払おうと、声を掛ける。


「悪いな。なんか変な空気にしちまって」

「いや、別に……」


 レイヤのせいではない。

 勝手に落ち込んだ自分たちも悪いのだ。


「それで、目的地はグランドライトでいいのよね?」


 朱波の問いに頷く廉とレイヤ。


「ああ。とはいえ、宿題があるとなれば、長居は出来んがな」

「あるに決まってるでしょ。試験もあったんだから」


 試験が無くて、宿題があってもアレだが、元の世界(むこう)同様に、この世界には試験があるのだ。夏休みの宿題が無いわけがない。


「何であるんだよ……」


 夏休みの話から一転、夏休みの宿題に落ち込む廉。


「あ、だから、夏休みが終わるまでだったんですね」


 一人納得したかのように言うシルフィアに、首を傾げる面々。

 シルフィアがこっそりと詩音に目を向ければ、人差し指を口に当て、内緒、と詩音が示していた。


「あ、いえ。こちらの話です」


 苦笑いして誤魔化せば、そうか、と言って話に戻る廉。

 それに対し、詩音とともに、こっそりと息を吐くシルフィア。


「それで集合場所と時間はどうする?」

「そうだな……」


 時間としては、早すぎず遅すぎずが理想だが、どのぐらいでグランドライトに着くのか分からない廉たちにとっては、口出しできない。


「そうだな、馬車ならそんなに掛からんが、徒歩だと二日か三日は掛かるらしいぞ」


 それを聞き、うへぇ、と顔を歪める三人。


「なら、行くときは馬車ね」


 うん、それがいい、と馬車で行くことを強調する朱波。


「そうだよなぁ」


 早めに着ければ、その分、早く捜すことができる。


「集合場所は学院?」


 詩音の問いに唸る面々だが、授業の開始時間になり、結局、次の休み時間に話し合うことになった。


   ☆★☆   


「で、待ち合わせ場所は?」


 開口一番、それである。


「やっぱり、校門?」

「朱波、学生寮からの距離も考えないと」


 (うな)りながら、疑問系で朱波が言うが、詩音が頭を横に振る。


「しかも、馬車のある場所に行くまでが長いし、金取られるからなぁ」


 溜め息混じりにレイヤが言う。


「『時には妥協も必要。誰かに頼れるときには頼るべし』って、どっかの誰かと結理が言ってた」

「おお、久しぶりに出た」


 人差し指を立てて言う詩音に、廉と朱波が久しぶりに聞いたとばかりに反応する。


「されに、お金なら心配いらない。自分たちの分は自分たちで出すから」


 そう言う詩音に、でも、とレイヤは口を開き掛け、頭を振る。


「いや、それでいいのなら、いいんだが……」

「俺は別に構わない」

「私も大丈夫だよ」


 廉と朱波の言葉に、レイヤから目を向けられた詩音も頷いた。


「そういえば、フィアはどうするの?」

「え? ああ、私は……」


 ふと気づいた朱波が尋ねる。

 シルフィアは王女だ。

 私情で城下などに出歩くのは、ある意味危険である。

 たとえ父親であり、国王でもあるエフォートから許可が出されたとしても、周りから()められるのが目に見えている。


「私は、()めておきます。城のみんなを不安にさせるわけにはいきませんから」


 やや寂しそうに言うシルフィアに、互いの顔を見合わせる面々。


「私たちがガードしてれば問題ないんじゃないの?」


 仮にも勇者である廉とその仲間である朱波や詩音が側に居るのなら、大丈夫なのではないのか、と言えば、シルフィアは首を横に振る。


「足手まといになるのは嫌ですし、楽しみは最後まで取っておいた方がいいときもあるんです」


 足手まといかどうかはともかく、シルフィアの言った楽しみ(・・・)に首を傾げつつ、面々は打ち合わせを再開する。



 そして、集合場所も決定し、夏休みの宿題が教師陣から配られ、一学期の終業式が行われた。


 そしてーー






 夏休みは始まった。



読了、ありがとうございます


誤字脱字報告、お願いします



今回は新キャラことレイヤが登場しました



次回は夏休み突入でグランドライトに向かいます



それでは、また次回



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