第十四話:見ていた者たち
「ちぃっ……!!」
シンディアがあまりの多さに舌打ちする。
「ああもう! こうなるのは覚悟してたのに、やっぱり面倒くさい!!」
そう言いながら、切り刻む。
「ーーっ、」
「どうするよ、コレ」
「いくら何でも、数が多すぎる」
詩音と朱波が背中合わせになり、シンディアはそう告げる。
「一体、どうすれば……」
「こいつらの指揮官を叩くしかありません」
ラウラの問いに、朱波は言う。
「指揮官!?」
「これだけの数です。どっかに居るはずです。こいつらを統率してる奴がーーッツ!!」
驚いたように言うラウラに、朱波は説明するが、攻撃され、腕を押さえる。
「朱波!」
「大丈夫!」
朱波に声を掛ければ、大丈夫、と声が返ってくる。
(とはいえ……)
状況が状況なだけに、
「厄介なのは、変わらない、か……」
廉は苦笑いしながら、そう言った。
「その指揮官って奴、見つけられるか?」
シンディアが尋ねる。
「出来なくはないけど……」
ラウラがそう言い、一度切る。
「この中から捜すのか?」
その問いに、シンディアは捌きながら、ああ、と頷く。
「朱波」
「っ、何?」
廉が朱波に声を掛ける。
隣にいたシルフも廉を見る。
「捜せるか?」
「はぁ、言うと思った。良いよ。やってみる」
廉の言葉に溜め息を吐きつつ、朱波は頷いた。
「シルフ」
『うん。でも、私だけじゃ無理』
シルフに声を掛けた朱波だが、シルフは困ったように頭を振る。
『だから、少しだけ待ってて。援軍呼んでくるから』
そう言うと、シルフは姿を消した。
「朱波、腕」
詩音が朱波の手を取り、腕を治療する。
「応急処置。後でちゃんと治療するから」
だから、あんまり無理しないように、と詩音は言う。
「っ、まだか? さすがの俺たちも疲労が溜まってきたぞ」
シンディアの言葉に、朱波は周囲を見渡す。
(シルフ……)
『お待たせー』
不安そうな朱波の元へ、緑髪の精霊が明るい声で駆けてきた。
隣には茶髪に緑の瞳の精霊がいた。
「シルフ!」
朱波がその名を呼べば、シルフは笑顔を見せる。
『援軍、連れてきたよー』
『援軍って、何のことだよ。無理矢理引っ張ってきておいて、説明なしとかありえない』
シルフの言葉に、隣にいた茶髪の精霊が、不機嫌そうに言う。
そんなシルフに苦笑いしつつ、魔物化した動物たちを捌きつつ、朱波は尋ねる。
「シルフ。そろそろ自己紹介してもいい?」
『どうぞどうぞ』
シルフは頷く。
「私は東雲朱波。シルフの契約者。詳しいことは、また後で言うとして……見て分かると思うけど、こっちとしては、今すぐ指揮官を潰したいの」
朱波の説明に、茶髪の精霊は朱波に目を向ける。
『何か、ご苦労だな』
茶髪の精霊の言葉に苦笑いする。
『ノームだ。それで、土属性の使い手はいるのか?』
茶髪の精霊ーーノームの言葉に、ああ、と朱波は頷く。
「詩音!」
「ーーっ、何?」
朱波が名前を呼べば、詩音は“土の鞭”で魔物たちを薙ぎ払いながら、振り向く。
そんな詩音に、朱波はノームにね、と視線を向ける。
それで理解したのか、ノームは詩音の方へ向かう。
そして、互いに何かを話し、頷き合う。
その様子をラウラとシンディアも見ていたのか、顔を見合わせて、首を傾げていた。
☆★☆
「あーらら、苦戦中かぁ」
何やら楽しそうな風に言う。
影は三つあり、それぞれ女が一人と男が二人いた。
「良いのか? 助けなくて」
このままでは、やられてしまうかもしれない。
「別に良いんじゃない? 向こうには朱波たちも居るし」
「それはそうだが……」
廉たちの様子を上から見ていた何者かは、そう話す。
それに、と続ける。
「私たちが助けたら、意味がないじゃない」
「魔王を倒すための力のためか?」
怪訝し、尋ねる男に、女は困ったように言う。
「それもあるけどーー今の私たちと廉たち。多分、実力差は私たちにまだ傾いてるはずよ。それに、手助けしないで、今の廉たちの実力ぐらい見ておきたいじゃない」
「それは……」
女の言葉に男は吃る。
そんな男に、女はそれに、と続ける。
「あと、誰がこのチームのバランス取ってると思ってるのよ」
「うっ……」
「確かに、鷹森が居ないと、前衛二人、後衛三人でバランス悪いもんな」
女の言葉に、男は図星を言われたかのように固まり、もう一人の男が、確かに、と頷きながら言う。
「だから、再会したら、朱波辺りに近距離系の攻撃技教えないと」
「ああ、そうだな。もしこれで、あいつらが負けたりしたら、特訓決定だな」
そうだねぇ、と女は言う。
「いつまでここにいるつもりだ?」
「俺たちは、師匠の試験をクリアしないといけないんだからな」
男二人の言葉に、女は横目で二人を見て、廉たちに視線を戻す。
「分かってます。全ては、あの五人の様子次第」
女はそう言った。
☆★☆
自身を落ち着けるために、深呼吸をする。
今からやるのは、魔物化した動物たちを指揮するモノを捜すこと。
目を開き、周囲を確認する。
数が減ったとはいえ、指揮官が指揮するのを止めたわけではない。
「朱波」
「ん?」
詩音が話し掛ければ、朱波は振り返る。
「私が指揮官を炙り出す。そこに一斉攻撃して」
「私じゃなくて、廉たちに言えばいいでしょ!?」
詩音の言葉に、朱波は反論する。
「まあ、そうなんだけど……手が空きそうにないの!」
詩音にしては、ハイペースでの話し方である。
「それに私だって、近日中に二度も同じ手を使うと思わなかったのよ」
詩音はやや視線を逸らし、小声で呟く。
だが、廉の耳に届いていた。
それは、先日の決闘もどきのことを言っているのかと、廉は考える。
(つーことは……)
何となくやろうとしていることが分かった。
言霊による命令。
実際に作用するかは実証済み。
「はぁ、分かったわよ」
溜め息混じりで朱波が頷いた。
それを見て、詩音は発動する。
『我は世界を超えし者』
詩音が一歩踏み出す。
『我は異界の巫女なり』
詩音の周囲には、厳かな雰囲気が漂う。
『我の問いかけに答えよ』
再度、一歩踏み出す。
『このモノたちの指揮官の位置と正体を示せ』
詩音の言葉に、少しの間、何も起きなかったが、地が隆起し、そいつは姿を現した。
その姿は、虫のように長く、獣のような毛で全体が覆われていた。
「朱波!」
「はいはい、シルフ。ノームも力を貸して」
詩音に呼ばれ、適当に返事をしつつ、シルフの名を呼び、ノームにも力を貸すように言う。
「こいつが本当に指揮官ならーー」
「全滅させられる!」
廉とシンディアが言う。
「ラウラ!」
「あーー!?」
シンディアが声を掛ければ、不機嫌そうだったラウラの表情は一変し、「何だコレ……」と呟いた。
「とにもかくにも、こいつは倒さねぇとマズいな」
「そうですね」
シンディアの言葉に廉が同意し、朱波たちは頷いた。
「それより、動きを封じないと」
『何で封じるつもり?』
詩音の言葉に、ノームが尋ねる。
「ここにあるので、詩音の作用が効くものなんて、地面か植物ぐらいでしょ!? ーーっつ!」
「朱波!」
朱波が言うが、指揮官らしき魔物の放った衝撃波に、朱波は吹っ飛ばされる。
「シルフ、朱波を守れる?」
『え……ちょっ、何するつもり?』
詩音の問いに驚きつつ、シルフは聞き返す。
「守れるか守れないか聞いてるんだけど」
『……守、れる』
詩音の気に圧されたのか、シルフは吃りながらも答える。
「そう。なら、朱波の防御をお願い」
そう言いながら、詩音はショルダーバックから指ぬき手袋を取り出し、手を通す。
「あの、詩音さん……?」
廉が恐る恐る声を掛ければ、詩音は視線を向け、「何?」と尋ねる。
「あ、いや、よく考えたら、今言うことじゃなかった」
慌てて、そう言い誤魔化せば、そう、と詩音は前を見る。
「ヤバい、キレてる……」
廉は小声で言う。
はっきり言えば、怖くて何もいえなかった。
『いやいやいや、キレてるレベルじゃないよね!?』
半分涙目になり、シルフは言う。
「まあ、何だ。あいつは、俺たちで一番怒らせちゃいけない奴なんだよ」
廉は遠い目をするかのように、詩音を見る。
『ノーム、大丈夫かなぁ』
シルフはノームを心配しつつ、朱波の飛ばされた場所に向かった。
『アケハちゃーん』
「っつ、シルフか」
シルフが駆けつければ、朱波は体を起こし、立ち上がる。
『無茶しちゃダメだよー』
心配そうに言うシルフに大丈夫、と言いながら、朱波は土の付いた場所を軽く払う。
「それにしても、かなり遠くに飛ばしてくれたもんだわ」
『私も捜すの大変だった』
朱波に同意するように、シルフは頷いた。
「さ、廉たちの所に戻るよ」
『うん!』
(さっさと戻って、あの化け物に一発食らわせるんだから!)
朱波はそう思いながら、足を進めた。
☆★☆
「お、無事だったか」
「当たり前でしょ」
戻ってきた朱波に気づいた廉は、安心したように声を掛け、当の本人である朱波は当たり前、と返す。
「それで? 詩音が何かしてる以外は全く分からない状況なんだけど」
朱波は周囲を見回し、どんな状況なのか説明しろ、と言外に言う。
他の面々は魔物化した動物たちを捌いていたが、先程と変わったのは、この場にいるのが、詩音と対峙する指揮官らしい魔物がいることだ。
「ああ……詩音の奴が、あの魔物の動きを止めようと躍起になってる」
廉が見れば分かると思うが、と付け加えて説明する。
「よし、粗方片付いた。あのデカいのを倒すぞ!」
シンディアが話していた廉たちに声を掛ける。
「はい!」
「端からそのつもり!」
廉は返事し、ラウラはそう返すと、詩音が対峙していた魔物に向かっていく。
「はああああ!!!!」
ラウラが切りかかるが、魔物は息を大きく吸いーー
「衝撃波が来ます!」
朱波が叫ぶ。
『グワワァァァァアアアア!!!!』
そして、放つ。
衝撃波がラウラの目の前まで迫る。
もうダメだ。
そう思い、目を閉じる。
「詩音!」
廉が叫ぶ。
彼女も近くにいる。
巻き込まれないわけがない。
だが、詩音は振り向かない上に、避けようともしなかった。
いくら詩音が防御を得意としているからって、真正面からの攻撃を受けきれるはずがない。
廉も朱波もそう思っていた。
「嬢ちゃん、避けろ!」
シンディアが声を掛けるが、詩音が避ける様子はない。
「ノーム」
『え、本当にやるの?』
ノームの名前を呼んだ詩音に、視線だけ向けられたノームは、眉を寄せ、本当にやるのか、と尋ねる。
「やる」
『……分かった』
詩音の言葉に、渋々とノームは頷いた。
「“土流壁”」
巨大な土壁が現れ、衝撃波を防ぐ。
その音で、ラウラは恐る恐る目を開いた。
「…………」
ラウラは呆然としていた。
そして、我に返ったのか、ラウラは詩音に礼をする。
「あ、ありがとう」
「いえ」
礼を言われた詩音はラウラに短く返す。
「でも、アレのメイン技が衝撃波なら、何とか出来そうね」
何か考えるような姿勢で言う朱波に、え? と廉は朱波を見る。
「ああ。それに、次を放つまで、わずかだが時間が掛かっているしな」
シンディアも同意するように頷いた。
「なら、今がチャンスってことか」
ラウラが笑みを浮かべるが、詩音はでも、と言う。
「弱点が分からない」
「弱点?」
詩音は頷くと、目を細め、魔物を見る。
「これだけ大きいなら、弱点がどこかにあるはずなんだけど……それが見当たらない」
四人は自分たちが対峙する魔物を見る。
「奴のあちこちに攻撃するしかないってことか」
シンディアが思案する。
「どうする? 早く決めないとまた衝撃波が……」
ラウラが尋ねる。
「…………」
しばし無言になる。
「うーん、それぞれが弱点と思うところに攻撃する、とか?」
朱波がそう言えば、四人は朱波を見る。
「まあ、手当たり次第よりはマシか」
シンディアは頷き、四人に言う。
「とりあえず、各々が弱点と思うところに攻撃する。いいな?」
「はい!」
「任せてください!」
「うん」
順に廉、朱波、詩音の順で返事をする。
「ラウラ!」
「わーってる」
そう言いながら、ラウラは切りかかっていた。
本当に分かっているのか、と聞きたいところだったが、そんな場合ではないので、シンディアは放置した。
そして、自身もラウラの後に続いて、攻撃を始める。
『シオンさん』
ノームが心配そうに声を掛ける。
「大丈夫」
詩音は安心して、と言う。
そして、弓を放つかのように構える。
「詩音……?」
訝る廉と朱波だが、攻撃を続けるラウラとシンディアを見て、自分たちもそこに加わる。
「こいつ、魔物じゃなくて魔獣なんじゃないの!?」
「もし魔獣なら、魔物化した動物たちを操れるか?」
中々ダメージを与えられず、苛々してきたのか、やや不満そうな口調で朱波は言うが、廉はそれは無いだろ、と言いたげに言う。
『シオンさん』
「まだ」
目を細め、タイミングを見計らう。
(まだだ)
一番のチャンスは奴が口を開きーー衝撃波を放つ時。
ノームが自身の能力で魔物を攻撃する。
だが、やはりダメージはあまりないらしい。
「はぁぁぁぁああああ!!」
叫びながら攻撃するのはラウラとシンディアの二人。
「チッ、ここも違うか」
舌打ちしつつも、一つずつ弱点らしき場所を攻撃していく。
『グワワワワアアアア!!!!』
魔物が叫ぶ。
「っ、何なの!?」
「また衝撃波か!?」
魔物の咆哮に、面々は驚き、距離を取る。
一方で、詩音は弓の弦を引くような動作をする。
(あと、少し……)
照準を合わせる。
魔物は息を大きく吸う。
おそらく、衝撃波を放つための準備や癖みたいなものなのだろう。
「詩音!」
廉は再び叫ぶ。
先程は防げたかもしれないが、もう一度防げるとは限らない。
「大丈夫」
だが、詩音は大丈夫だと言う。
衝撃波が放たれる。
「詩音!」
今度は朱波が叫ぶ。
だが、衝撃波が放たれたのと同時に、詩音も放つ。
見えない矢が衝撃波を目掛けて飛んでいく。
「“破魔の矢”」
衝撃波とぶつかった見えない矢は、衝撃波を切り裂き、魔物の口の中へ入る。
「ーーっ!?」
目標物に当たらなかった衝撃波は、左右に分裂し、それぞれ横にいた廉たちに強風となり、襲いかかった。
そして、詩音の“矢”を受けた魔物は、体内から光を放つ。
「え、何? この嫌な予感は」
それは誰の呟きだったのか。
「全員、逃げろーー!!」
シンディアが叫ぶ。
ドカーン!!!!
予想通り、爆発した。
「ゲホッゲホッ……って、あれ?」
「傷が、無い?」
煙は吸い込んだらしいが、傷はほとんど無かった。
四人は不思議に思い、首を傾げる。
「ん……みんな無事だったね」
詩音が四人の元に来た。
「詩音テメェ……」
「爆発するなら、するって言ってよ!」
恨みがましく言う廉と半泣き状態で言う朱波。
「いや、私もあれは予想外だった」
本当に予想外だったらしい。
詩音としては、そのまま消えるか、倒れるぐらいだと思っていた。
だから、あの爆発は予想外だ。
「でも、本当にびっくりしたよ?」
「全く……。命を粗末にするんじゃない」
本当に驚いたのか、溜め息混じりのラウラと心配しながらも厳しい口調で言うシンディア。
「無事だったから良かったものを」
びっくりしたんだぞ、とシンディアは言う。
「ねぇ、詩音」
朱波が話し掛ける。
「まさか口の中を狙うために、あの場所にいたの?」
「……まぁ」
間違ってはいないので、否定はできない。
「つか、どうやって狙った? 弓も矢も無かっただろ」
「企業秘密」
不思議そうな廉に、詩音は秘密、と言う。
「私たちのケガが無いのは?」
「私が防御したから」
朱波の質問に、詩音はあっさり答えた。
「口の中を狙った理由は?」
「防御できませんから」
ラウラの問いに、詩音は答える。
人間なら手で口を塞げば無事だろうが、魔物は防ごうとはせず、攻撃されるとも思わなかったのだろう。
「本当は目でも良かったんですが、グロいですから」
「いや、口でも十分グロいから」
目を逸らし、そう付け加えた詩音に、朱波はそうツッコむ。
それを聞き、廉はやれやれと思う。
魔物化した動物たちの指揮官らしい魔物は倒した。
しかも、不慮とはいえ、魔物化した動物たちを倒してしまった。
「…………」
空を見上げる廉に、そっと風が吹いた。
☆★☆
「へぇ、考えたじゃん」
陰で見ていた三人のうち、男はそう言う。
「なあ、鷹森はあの場所にいたこと、知ってたのか?」
「まあね」
男の問いに、女はあっさり頷いた。
「じゃあ、行くか」
「そうだな」
三人は立ち上がる。
「ご苦労様、廉」
女のその一言とともに、三人はその場から去った。
ふわり。
「何だ……?」
廉は振り向く。
そんな廉に、朱波は首を傾げる。
「どうしたの?」
「声が聞こえた」
廉の答えに、朱波を治療しながら、詩音も首を傾げる。
「空耳じゃないの?」
「……空耳、だったのか?」
だが、何となく、何となくだが、廉は空耳じゃない気がした。
朱波と詩音は、私たちに聞かないでよ、と視線を返す。
「実は結理たちが近くで見てた、とか?」
「まさか。なら、何で俺たちの所に来ないんだよ」
もしかして、と朱波が言うが、廉がそれなら、と返す。
見かけたのなら、声を掛けて、合流すればいい。
もし、近くにいたのなら、何故そうしなかったのか。
「ラウラさん」
「何かな?」
戦闘が終わったからなのか、幾分落ち着いたラウラに、朱波が尋ねる。
「ここに来る前に、私たちのような三人組に会ったって、言ってましたよね?」
「うん、確かに言ったね」
朱波の言葉に、ラウラは頷く。
「その三人とどこで会ったのか、教えてもらえませんか?」
ラウラとシンディアは互いの顔を見合わせる。
そして、告げた。
「西にある『グランドライト』っていう町だよ」
「グランドライト……」
三人はその名前を呟いた。
「やっと」
廉はぽつり、と呟いた。
「やっと、手がかりが……」
ぐっ、と廉は握り拳を作り、力強く握り締めた。
「うん、そうだね」
「これで、結理たちに会える」
廉の握り拳を解くように、朱波と詩音が同意しながら、その手を握る。
そんな三人を、ラウラとシンディアは穏やかな笑みを浮かべ、眺めていた。
やっと、やっと手がかりが得られた。
絶対に追いついてやる!
廉はそう心に決めた。
以下、おまけ。
☆★☆
休憩終了後。
「よし、数も数だし、こいつらを依頼達成として持ち帰るぞ」
シンディアの言葉に、ラウラがジト目で見る。
「いいの? それで」
「倒したもんはしょうがないだろ」
ラウラの問いに、シンディアは仕方ないと言う。
結局、一行は魔物化した動物たちの一部と、指揮官らしき魔物の一部を持ち帰った。
そして、それを見た受付嬢たちが頭を抱えたのは、その場にいた面々だけの秘密である。
☆★☆
読了、ありがとうございます
誤字脱字報告、お願いします
さて、十二話からの『合同討伐依頼』編ですが……
詩音さん無双でした
先輩冒険者の二人、ほとんど空気扱いでしたね
お三方がいた理由はまた後日にて
次回は学院側
皆さんの嫌いなもの再び、です
それでは、また次回
H25/05/15 13話に加筆




