第十二話:討伐依頼、再び
【前回のあらすじ】
模擬戦しました
「よし、今度は大丈夫だ」
自信満々に言う廉に、朱波と詩音は何ともいえない顔で言う。
「本当かしら」
「不安」
「お前らな……」
二人の言葉に、そんなに疑うなよ、と廉は呟く。
現在、三人はとある依頼のために、目的地に向かって歩いていた。
「それに、廉さ」
「何だよ」
まだ文句があるのか、と言いたげに返事をする廉に、朱波は言う。
「最近、私たちのこと、『お前ら』って呼びすぎ。若干、気になってた」
「それは……悪かった」
そんなに言っていたか? と思う廉だが、ほとんど近くにいる朱波がそう感じたのなら、そうなのだろう。
「はいはい、もうこの話は止めて、今からの話をしよう?」
「そうだな」
「うん」
詩音の言葉に二人は頷き、廉は説明する。
「今回受けたのは討伐依頼だが、中でも『合同討伐依頼』と呼ばれてるものだ」
「『合同討伐依頼』?」
依頼書を見ながら説明する廉に、朱波と詩音は首を傾げる。
「ああ。『合同討伐依頼』は文字通り、他のチームと合同で討伐する依頼だ」
『合同討伐依頼』。
討伐依頼の中でも特殊なものであり、廉の説明にもあるが、『合同討伐依頼』とは文字通り、他のチームと合同で討伐する依頼のことである。
基本的には、上位モンスターや魔物、討伐数などにより、合同討伐になることもある。
廉が受けた『合同討伐依頼』もその類であり、今回の依頼内容は『魔物化が判明した動物たち20体の調査及び魔物化した動物たちの討伐』である。
はっきり言って、多すぎである。
しかも、EランクとBランクの冒険者パーティーだ(先日の討伐依頼後、ちまちまと採取依頼などを行い、Eランクに上がった)。
「で、その『合同討伐』の依頼を一緒にやるチームはどこよ」
廉の説明に、朱波は周囲を見渡す。
待ち合わせ場所に先に着いたのは、どうやら自分たちだったらしい。
「それなら、そろそろ来ると思うが……」
廉が目を向ければ、二つの影が見える。
「あ、いたいた……って、君たちこの前の」
向こうも気づいたらしく、駆け寄ってきた。
「あの時はありがとうございました」
礼を言う廉たちに、照れるように返事をする。
「気にしないでいいよ。困った人が居たら助ける。それが、うちのチームだからね」
気にするな、という先程駆け寄ってきた二人は、以前の討伐依頼の帰宅の際に、廉たちを助けた二人組の冒険者だった。
「あの、もしかして、『合同討伐』のもう一つのチームって……」
まさか、という廉に女性が頷く。
「私たちの事かもねー。その様子だと、君たちが私たちの『合同討伐』のもう一チームだと思って良いんだよね?」
「間違いないと思いますよ。俺たちは、ここで待ち合わせってことになってるんで」
確認を取る女性に、廉も頷く。
依頼を受理する際、受付嬢から合同依頼の説明と待ち合わせ場所を指定された。
その待ち合わせ場所で、廉たち『幽玄の理』は目の前の二人と合流した。
「じゃあ、この『合同討伐』は、お前らと俺らのチームなんだな」
女性の隣にいた男性が言う。
「せっかくだし、自己紹介しようか」
女性の言葉に、男性がそうだな、と言う。
「まずは私たちからね。私はラウラ・エルフィル。ラウラでいいよ」
「俺はシン。シンディア・ノーク。シンでいい。つか呼べ。名前以外は受け付けんからな」
そんな二人に苦笑いしつつ、廉たちも自己紹介する。
「レン・シノハラです」
「アケハ・シノノメです」
「シオン・カサガネです」
女性ーーラウラは笑顔で頷く。
「うん、よろしくね」
「それじゃあ、そろそろ出発するか」
シンディアにそう言われ、五人は出発した。
あの時ーー帰宅時だがーーはレベル差から逃げ出し、この、目の前にいる二人に助けられた。
だが、今回は逃げるつもりはない。
今回は実力者である二人も一緒だ。
(大丈夫だ。絶対にーー)
勝って、生きて戻る。
そう思っていた廉だが、実は物凄く怖かった。
自分で受けたため、朱波と詩音に文句は言えない。
自然と剣に手が行く。
『大丈夫』
何故だか知らないが、そう言われた気がした。
そんな廉を、朱波と詩音は互いの顔を見合わせ、不安そうな顔をする。
「この討伐依頼、吉と出るか、凶と出るか」
その呟きも、廉には届かなかった。




