登場人物と最新部分までのあらすじ
●カイル・ウェイ・ハーン伯爵
グラハム王国北部に位置するノースランド藩の藩主。
若いながらに国都守護職に任じられた青年貴族。
●ジーゴ・イリオス
国都守護職配下の国都警備隊【新撰組】局長。天然理心流剣法五代目宗家。
宝剣「虎徹」を振るう「剛剣」の使い手。
●ウオルフ・カノー
【新撰組】副長。ジーゴとジョシュアとは幼馴染みの間柄。
「鬼のウオルフ」の異名を馳せる「狂剣」の使い手。
●ジョシュア・アルレオ
【新撰組】一番隊隊長。ジーゴとウオルフとは幼馴染みの間柄。
天賦の剣の才能をもつ「天剣」の使い手。
●アレク・ガッツーオ
【新撰組】二番隊隊長。長大な鉄棍を振るう巨漢の戦士。
●ルー・バンジョー
【新撰組】十番隊隊長。槍の使い手。新撰組随一のお調子者。
●イオン・パベル
【新撰組】三番隊隊長。高速の「突き」を得意とする新撰組最強の「猛剣」の使い手。
●ニース・カプラ
【新撰組】総長。藩立学院の出身にして王国三大剣術流派【北辰一刀流】の皆伝者。
●ハマード・ジャミル
南部ハイデルボルク藩の脱藩浪士で反国府主義者。
各地から【鎖国派】の浪士を集め、国都内で破壊活動を繰り返す。
●マクス・ヤーウェイ
南部ハイデルボルク藩の脱藩浪士でジャミルの朋友。
●ルドラ・ゲル・ペイリー提督
グラハム王国に来航してきたラファーン帝国船団の司令官。
ラファーン皇帝の勅使を称し、グラハム国王との謁見を要求する。
●デュバル
ラファーン帝国船団旗艦【コロンブス号】の艦長。ペイリー提督の腹心。
●アルバロス
帝国の暗殺部隊の頭目。
●パイロン男爵
ノースランド藩の藩相。
●サント二ウス
ノースランド騎士団長。
●オルテガ・イリオス
ジーゴの父。天然理心流剣法の四代目宗家にして最高師範。
●サラ・イリオス
ジーゴの母。
●ミランダ・アルレオ
ジョシュアの姉。
●ジオン・ドラガン
藩都ベルグエンにて五代続く老舗の護衛団【ドラガン組】の団長。
王国三大剣術流派【神道無念流】の皆伝者。
●フェルド・ディナム
【ドラガン組】の副長。王立学院出身の知恵者でジオンの相談役。
●サンチャゴ・ベアル
【ドラガン組】の団員。
●オブキン・ガナ
【ドラガン組】の団員。
●ネイサン・グスタフ・ド・ギュスター侯爵
グラハム王国宰相。無気力な国王に代わって国府を取りしきる切れ者。
●フォレスト・ロイ・ラナ
宰相首席補佐官を務める青年官吏。ギュスター侯爵の腹心。
●ノルデスハイム伯爵
王国福宰相。ギュスター侯爵の側近。
【あらすじ】
開国来、暴力と混乱が続くグラハム王国国都ドレンフォーラ。
攘夷――異国討伐の思想を掲げて国都内で破壊活動を繰り返す鎖国派勢力に頭を悩ませている国府は、国都守護職カイル・ウェイ・ハーン伯爵を通じ、配下の国都警備隊【新撰組】に鎖国派勢力の鎮圧と掃討を命じる。容赦のない苛烈な取り締まりを続ける新撰組と、彼らに抗して破壊活動を繰り返す鎖国派勢力との戦いは、日々熾烈さを増していた。
一日、鎖国派勢力が国都で新たな破壊活動を計画している情報を入手した新撰組は、局長ジーゴ・イリオスを筆頭に鎖国派勢力が潜伏している国都内の宿屋を強襲する。そこでは鎖国派勢力の頭目にして反国府主義者のハマード・ジャミルが国内各地から集めた過激な浪士たちと、国都内での爆破活動について密談をしていた。そんな最中、新撰組副長ウオルフ・カノーを筆頭に一番隊長ジョシュア・アルレオ、二番隊長アレク・ガッツーオ、三番隊長イオン・バベル、十番隊長ルー・バンジョーらが麾下の各隊を率いて次々と宿屋内に突入し、鎖国派の浪士たちと戦闘を繰り広げる。やがて一派の頭目たるジャミルを宿の屋上に追い詰めて捕縛を試みるも、それより先に自害を許してしまう。頭目ジャミルの捕縛に失敗したものの、鎖国派による破壊活動を事前に阻止することに成功したジーゴ、ウオルフ、ジョシュアの三人は、新撰組が結成されるきっかけとなった四年前の事件――【黒船来航】に思いを馳せる。
四年前の王国歴254年。アメリア大陸よりラファーン帝国の船団が突如としてグラハム王国に来航してきた。最初の来航地となった北部ノースランド藩に到着した船団は、皇帝の勅使を称する船団司令官ルドラ・ゲル・ペイリー提督の名で、グラハム国王との謁見を病床の藩主に代わって藩主代行を務めていたカイル・ウェイ・ハーンに要求する。突然の来航と要求に困惑するカイルであったが、国都ドレンフォーラに急使を送る一方で臨時の民兵組織【新徴組】を組織し、一帯の警備と船団の監視に当たらせる。その【新徴組】には後に国都警備隊【新撰組】を結成することになるジーゴ、ウオルフ、ジョシュア、アレク、ルーなどの面々が参加していた。
そんな最中、近隣の村々で若い娘が失踪する事件が相次ぐ。相次ぐ事件の陰に帝国が絡んでいることを悟ったジーゴたちは船団の監視を続け、ついには実行犯らを特定する。そして事件の発覚を恐れ、それを闇に葬らんとする帝国兵との間に死闘が始まる。変幻自在の暗殺術を繰り出す帝国兵に苦戦するも、最後は退けることに成功したジーゴたちは、生き証人の村娘と供にカイルに事件の報告を行う。拉致された娘たちの救出に向かうカイルであったが、それより早く事件と証拠の抹消を図った帝国側によって、拉致された娘たちは全員が殺され、死体となって発見された。
ノースランド藩内で騒動が生じていた時分。国都ドレンフォーラの国府では王国宰相ギュスター侯爵が、カイルからの報告を受けて事態の対応を検討していた。要求を拒絶すべきと主張する側近のノルデスハイム伯爵に対し、ギュスター侯爵は国王ではなく自らが帝国側と会談に応じる決断を下す。そのための事前調査をすべく腹心の主席補佐官フォレスト・ロイ・ラナを全権代理としてノースランド藩に赴かせる。当地でペイリー提督と会談したフォレストは、帝国の最終的な狙いがグラハム王国の征服にあることを看破するも、そんな帝国の野望と武力を自らの野心――現王家に代わる新たなグラハム王国の支配者に自らがなるという野心に利用しようと画策する。
グラハム王国とラファーン帝国との会談が終了して一ヶ月ほどがたった一日。国府の使者がノースランド藩にやってくる。ペイリー提督らの警護をかねて国都に上洛せよとのことだった。ギュスター宰相直々の勅命に、カイルは自らが警護の指揮を執って上洛する決意を固める。その警護の一団にはカイルの指名をうけたジーゴたちの名前もあった。