放課後
…気がつけば瞬のことを見ていた。授業中も、ちょっと先生の話に飽きると自然と瞬の後ろ姿を見てしまう。
欠伸をしてたり、頬杖をついていたり、窓の外を見つめていたり。
(私、気持ちわるい女じゃん)
クラスメイトの友達を見ては少し恥ずかしく思いながらもドキドキする。
それがまだ異性だったら分かる。
相手は、女の子。
(なんなの…これじゃまるで)
恋みたいじゃない。
先生が部活動体験期間について何か言っていた気がする。知らない。私には部活をする気がないし。
あっという間に一日は過ぎた。こんなふうに三年間もあっという間なんだろうな。
放課後、他の皆がそれぞれ自分にあった部活を探しに出ていく。
部活に入らないつもりの生徒は教室にいるか、それとも帰るかだ。周りの子に部活体験に誘われたけど断ってしまった。
今日は教室には私以外誰もいない。まさか私だけではないよね。
放課後の、閑散とした教室。外はまだ明るいほうだ。
そこに私は突っ立っていた。
(なんか、私傍から見たら悲しい人みたいじゃん…)
帰るか…。
そのとき、
教室に入ってきた人影。
瞬だった。
「お、歩花じゃん。どうしたの、誰もいない教室で。傍から見たら悲しい人だよ」
やっぱりそう思われるのね。
「歩花、もう帰るの?」
「うんまぁ、部活入んないし」
瞬はタッと近づいてきた。
「ちょっとお喋りしようよ」
「お喋り?」
瞬はにっと笑う。
「えっ、瞬は部活いいの?」
「ウチはもう決まってるんだよね、まだ明日もあるし」
それに、と瞬は付け足した。
「歩花と話したい」
「…」
胸が熱くなるのを感じた。「用事ある?」
「いや、…ない、よ」
ドキドキがとまらない。
これ、悟られたら気持ち悪いって思われるかな。
瞬は私の前の席に座った。私もカタン、と小さい音をたてて自分の席に座った。