瞬
自分のクラスに向かう。擦れ違う人は知らない子ばかり。少し緊張する。
教室には既にクラスメイトが結構集まっていた。
やっぱりみんなどこかよそよそしさを漂わせ、隣の子に出身中を聞いたりだとか、何で通ってるか聞いたり、メアド交換したり…とそんな感じだ。
私の席は廊下側の後ろの方だった。とりあえず座ると周りの子が数人話かけてくる。
「よろしく〜」
「これからよろしくね〜どこ中?」
そのままたわいのない話をしメアド交換。
わりと私は人付き合いが上手いほうだ。相手が男の人だとまた変わってくるけど。
(なかなか良い高校入ったなぁ)
ちなみに結構優秀な人がくる高校だし。頑張ったかいがあった。
新しい友達と話終えた後、ちょっと暇になってしまった。
(窓からの景色でも見ようかな)
窓際に近づいていくと…私のような考えをもったのだろうか、同じく外を眺めているショートヘアの男の、子…?
(や。まさかぁ)
大丈夫。ちゃんとスカート履いてる。
なんか気になって、彼女に近よりたくなった私。私から近寄るのは珍しい。大抵は近寄られる方な私が。
「ね…」
ねぇ。と話かけるつもりだった。
が。
ボスッという音とともに前のめりに。誰かの鞄につまづいたらしい。
「ひゃ」
音に気づいたショートヘアの彼女は振り返ってすぐさま私を支えてくれた。
あやうく入学早々怪我するところだった。それも滑って転ぶっていう。
「大丈夫?」
「う、うん。ありがと」
ああ、とっても恥ずかしい。
私は彼女を見上げた。
見上げたというのは、なんというか…
(この子、でかい!)
170はあるんでは。私は152センチ。小さいでしょう。
それもこの子、すごい端正な顔立ち。ショートヘアと長身いうこともあって、美人なんだけど、どこかボーイッシュで美少年って感じ。
「なんかついてる?」
「えっ、ううん?」
ついみとれていた私。
「あの…女の子…ですよね」
冗談で言うのも失礼だったか。彼女は怪訝な顔もせず苦笑して言った。
「ここ、女子高」
「ですよね〜」
頭が馬鹿になってるのだろうか私は。
だって…だってあまりにもかっこいいから。
「でもよく男子と間違われるんだ、うち。名前も男っぽいし」
「名前は?」
「佐渡瞬」
さわたり、しゅん。
さっき気になった名前だ。かっこいいなって思った名前。
「私は望月歩花。えっと、瞬ちゃん…?」
「ちゃんづけしなくていいよ。瞬ちゃんなんて柄じゃないし」
「じゃあ、瞬…?」
「うん、よろしく。歩花」
二人で外を眺める。
綺麗な眺めだ。空が青い。
「君、可愛いよね」
横の瞬から声をかけられる。
「昇降口で後ろから見てた。一生懸命クラス分けの紙を見てる姿」
そ、そんなに私の行動は一生懸命だったのだろうか。
その前に、瞬が私を見ていたというのが気恥ずかしい。
「可愛い」
珍しい言葉でもなんでもない、友達同士でしょっちゅう投げかけ合う言葉。だけど、瞬に言われたのが嬉しかった。
なんでドキドキしてるんだろう。私。