帰り道
「あ!ってか、うちばっか満足してんじゃん!歩花も体験したいとこあったら言って」
瞬が慌てて言った。
「私?…はいいや。言ったでしょ、瞬のバスケ見てたら満足したって」
私がそう言うと、瞬は困った顔をした。
「いいの?」
「いーの!さ、帰ろ?一緒に」
一緒に、と強調して言ってみた。瞬が笑う。
「うん、一緒に」
校門を出たところで、周りにあんまり人がいないことに気づく。
「あれかな、みんなもう部活さっさと決めちゃったのかも。だから帰ったんじゃない?」小石を蹴る。そのまま石は誰かも分からない家の塀に向かって転がった。
「まだ先輩達は部活中だしね」
「微妙な時間帯に帰ってるんだね私達」
私は気難しい顔をしてどーでもいいことを呟く。
「あはは、なにそれ」
瞬は軽く笑った後、私の方を見た。
少しの間。やっぱり瞬は綺麗な顔をしている。
「………手、繋がない?」
「…」
ちょっとびっくりしたけど、私はすぐ答えた。「…ん、繋ご」
手を差し出すと、瞬は優しく手を握ってくれた。
(手の平、さらさらしてる)
男の子だったらゴツゴツしてるものなのかな。
今まで男子とこんなふうに手を繋いだときはない。これからだって繋ぎたくはない。
私も握り返す。
手の平から伝わってくる瞬の温もり。
とてもドキドキした。
女同士で手を繋ぐなんてのはいくらでもあった。でも瞬とのはそれらとは違う。
(なんでだろう。やっぱカレカノだから?)
瞬を見つめる。それに気づいた瞬はこっちを見て照れ臭そうに笑った。
「歩花、手ちっこい、可愛い」
「えっ」
「赤ちゃんみたい」
「あっ、ひどい!」
「冗談冗談」
もー…と言いながらも、私は嬉しさで胸がいっぱいだった。
幸せ。