名前
王子様って、別に男の人じゃなくたって良いと思う。
だって私は瞬が好き。
誰がなんと言おうと私の王子様は瞬だけだから。
私、望月歩花、15歳。今日は待ちに待った高校デビューの日。
…待ちに待ったほど楽しみにしてたわけじゃないんだけど。
苦手な男子から距離をおけるのは嬉しい。
…そう、私が入学するのはとあるごく普通の女子高。
なんとなく入ってなんとなく過ごしてなんとなく卒業する。
そんなもんだと思っていた。
多分恋とかもしないんだろうなぁとか。女子高だから出会い少ないし。…まず男子苦手だし。
このときは私に恋人ができるなんて微塵も1ミリもこれっぽっちも思ってなかった。
昇降口に張ってあるクラス分けを眺める。
「…」
望月歩花、発見。
後ろで他の新入生が喜んだり悲しんだりしていた。
「ちょ、一緒だよやったああ!」
「違うクラスだねぇ…」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ女子高生の声を背にして、私は他のクラスメイトの名前をそれとなく確認する。
私は残念ながら一人だ。出身中でこの女子高に来たのは私一人。まあもともと女子の割合が少ない学校だったし…。
と、ある名前に目がとまる。
「佐渡…瞬」
しゅん…?男の子みたいな名前。
(でもなんかかっこいいな)
どんな子なんだろう。気になった。