第4話 勁鋭の二人
前回の投稿から既に2か月経ってる事に気づき、急いで投稿。
すみません。これからはちゃんとストックだします……
2012/03/27改訂終了
結局教師役は僕とアルになった。……いや、ホントは僕等よりメイの方が剣はうまいのだが、何分理論がまるで抜けているので先生が教師役から外しておいたらしい。まあ、あの運動神経で身振り手振りでやられても教えられる方が困るよな……アクション俳優真っ青のジャンプとか繰り広げるんだから。なんだよ、踏切台も無しで2mは軽く飛ぶとか。ホントに人類に属してんのか?
因みに本人はむしろ喜んでた。やりたくなかったらしい。ぶっちゃけ僕も面倒だが、その辺はアルに任せよう(押し付け)
さて、話を戻して……というか先に進めて、僕らの初授業……?の前の昼休み。僕と何故かメイは、武術担当の先生(三十代、絶賛彼女募集中)に呼び出された。
「メイは兎も角、僕なんかやったっけ?」
「おい、さもオレがなんかしたよーなその言い方は何だよ」
ギロリと睨んでくる視線を躱しつつ、ささやかな反論をしてみる。
「いや、ほら昔にメイが魔法で校庭に穴開けて呼び出しくらったことがあったし」
「……ナンノコトデショウカ?アーキコエナイキコエナイ」
耳を塞ぐものの目が泳いでいるため誤魔化しになっていない。それに笑って返す。
そんな調子で歩いていると、鬱蒼とした森の手前に、生徒が全く見当たらない教員塔(幼・小・中・高・大の全ての先生が集まるため、教員室では入りきれない)が見えてくる。外観は綺麗なのだが、ここに来た生徒のうち三割は肩たたきのために呼ばれているため、一部の生徒からはバベルの塔などと呼ばれている。ま、馬鹿には近づきたくない場所って事だな。
僕らはインターホンの前に立ち、先生を呼び出すのにとてつもなく面倒な作業を開始する。
『生徒ヲ確認。学年・クラス・番号・名前ヲ述ベヨ』
インターホンの横から機械音が聞こえ、質問をしてくる。
「中等部一年Cクラス、出席番号29、リーンフォース=Y=X=R」
「同じく中一Cクラス、番号25、メイドリヒ=M=フォロート」
なんとも奇妙な気分で機会に名乗ると、更になにかを言い?続ける。
『生徒番号ヲ入力後、手ヲ機械ニ翳シテ下サイ』
言われたとおり、20桁にわたる長い番号を二人揃って入力し、それぞれが手を翳す。すると中央で緑にピカピカと点滅していたものが今度は青へと変わる。
『声紋確認。魔力波動一致。指紋一致。誰ヲオ呼ビシマスカ?』
……魔力を読み取られる事に、妙な気分になる。何というか、身体をまさぐられているような嫌な気分。
誰がこんなもの作ったんだろう?と考えて、ふと思い浮かぶあの人の顔。……そういえば知り合いにこーいうの作るの好きなの、一人いたな……まさかね。あの人そんな暇じゃないし。うん、きっとそうだ。あの人も学園関係者のような気もするけどきっと違う人だと信じようじゃないか……ッ!
「中等部武術担当のアーネスト先生を」
『了解シマシタ。少々オ待チ下サイ』
そう言い?再び機械は沈黙する?いや、多分内線で呼び出しているのだろう。青のランプがちかちかと点滅してるし。
それから約一分経過。僕らは。
「……来ないな、先生」
「うん、来ないね」
塔のやけに大きな扉の前でひたすら待ちぼうけをくらっていた。
さらに五分経過。
「帰っていいかな、てか授業まであと10分ないよ。始まっちゃうし」
イラつきを露わにしてメイに相談すれば、同じことを考えていたのか同意が来る。
「そもそも先生ももうそろそろ出てこないとヤバい時間だよな」
まず、僕は教師として行かなきゃいけない以上、早めに行った方が良い筈なんだけど、その教師が来ないってどゆこと?
「悪い、遅れた」
とそこで漸く先生がやってくる。いったい何をやってたらこんなに遅くなるんだ?と、二人で冷めた目を向けた所でふと気づく。なんか先生、疲れてない?
「すまんな。まあ……なんというか、大人の事情で遅くなった」
妙にやつれている先生に向かって文句は言えないらしく、メイは黙りこくっている。これはアレだ。上司に理不尽な命令を出されたサラリーマンみたいな顔。
「あ、まあ大丈夫です。それよりあと八分で授業はじまりますよ?」
自分の中の感想はおくびも出さずに苦笑して促せば、げっそりした表情のまま肯定を示した。
「そうだな。じゃあ移動しながら話すか」
そう前置きを言ってから先生が僕等に依頼してきたことは、僕を大変困らせるものだったことを追記しておこう。
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「さて、今日の授業はちょっとしたものを見てもらう」
教師役に選ばれてしまった僕とアルは先生の横で首を傾げてる皆を眺める。いや、正確にはアルはやけに目を輝かせてるメイとげんなりしている僕を見比べて苦笑いを浮かべているけど。
「フォロート、前に出てこい」
「はいっ!」
凄く嬉しそうな戦闘狂と凄く嫌がる僕を並べて、先生はほんの五分前に言った事を復唱した。
「この二人に本格模擬戦闘をしてもらう。魔術無しのな」
え?と言いたそうな教え子たちに焦らすように言葉を続ける。
「こいつらがお前達のレベルの比で無いことは流石に解ってると思う。そこで、目標を一応こいつらとし、それに追いつくようにこれからは鍛える。が、周りが弱いとこいつら本気が出せない。するとお前らもどの位が目標か分からんだろう。という事で今回の模擬戦だ」
皆はそれに納得しているが、僕はそれが建前だというのがよく解っていた。
先ほど僕は一通の手紙を先生から渡されている。赤い蝋にEという印の押された封筒を開けて出した手紙の内容はこうだった。
印押したし、名前は察してくれるだろうから書かないぞ。
で、この手紙の本題は、お前の授業についてだ。そろそろアレが近いからな。少しはヤル気出してみろ。
丁度形状記憶武器入ったんだろ?お前が強い奴と戦えるようにこっちで手回しはしておくから、絶対手ぇ抜くなよ?
P,S,実行しなかった場合はお前の部屋をあの状態にしておく。じゃ、よろしくな。
……今思い返しても怒りが湧いてくるふざけた文章だった。というか無茶苦茶だろ。こっちの意思無視とか。アイツは相変わらず人をおちょくるのが上手い。そもそも昨日の通信(電話なる物は数十年前に滅びたからね。バーチャルディスプレイを通しての映像通信か音声のみの通信しか今では無い)で言えば良かっただろ!
そんなやり場のない怒りを溜め込み、今度殴り込みに行こうと決意する。アイツ、いつかシメる。
「じゃ、お前ら下がれ。ルーラは俺と防御結界張るように」
「はい」
が、こっちの考えなんて分かる筈もない先生は既に戦いの準備を始めていた。
「よし!リーン、本気で来いよ!」
ノッてきたメイは早くも剣を構えて此方を笑いながら見据える。正直面倒くさいことこの上ないが、アイツからの指令じゃあ従わないわけにはいかないか。
内心では大いに舌打ちしつつ、表面ではあくまでにこやかにメイに宣言する。
「いいよ。そろそろ手加減も飽きてきた頃だし」
肩を竦めてそう告げると、その場の全員がざわめく。
「本気ってことか!」
「あいつの情報今一流れないからよく実力解んなかったのよね」
因みに僕の成績は武術や魔法関連だけは上の中。アルが上の上なので目立たないが、そこそこ良い点は取っていたりする。情報流れなかったのは多分出席日数がギリギリになる位学校来れて無いからだろうなぁ……あ、そういや学期末の試験全部体調不良で休んだからか。アレ以外は皆順位なんて気にしないし。
「どうやら珍しくヤル気らしいな」
そう言って笑った先生に、うげぇっと顔を顰める。いえ先生。むしろ今まで以上にヤル気はないです。
「なら構えろ。用意……」
腰を低くし、突撃の用意をするメイと、僕の戦闘スタイルである剣を逆手で持ち、左胸の前で横にする奇抜な用意。一瞬それに先生が怪訝な顔をするも、直ぐに開始を宣言。
「始めっ!」
そして剣が交錯する。一瞬の攻防の後、下に居た僕がメイの剣を弾き、動作を利用して首元を狙う。
しかし動体視力の良いメイには敵わず、すんでの所で躱され、今度は彼の物が此方へと吸い寄せられ―――
ヴー!!ヴー!!ヴー!!
「ッサイレンだと!?」
緊急アラームが鳴り響いた。今までで数回しか聞いたことの無い緊急事態宣言に目を見張る。
僕はまだ何も感じないのにどういう事だ……!?
混乱する僕等を余所に、放送は切羽詰まった声で僕等の元へと届く。
『緊急事態発生!学園に竜が向かってきています!』
その一言で、学園中がパニックに陥った。