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Silver Breaker  作者: イリアス
第一章 目覚めへの第一歩
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第11話 奇妙な竜種

ハッピーニューイヤーです!今年最初の投稿!

……因みにこれ打ってるときはまだ年明けてません。あ、紅白始まった(笑)

そしてこの話はテラさんの「ぽぽ日記」と繋がってます。なのにギャグ要素薄い(をい)


2012/04/04改訂終了

 人。それは時に選択を迫られる運命にあるモノだ。それがたとえ下らない事でも、死亡フラグでも選ぶという行為に変わりはない。そしてそれは、いつまでも先延ばしにするべきものでもない。そんな矜持を持って、僕は二人に確実な死と、確実な地獄、どちらを選ぶかを促す。




「さて、で、あの二人の即刻医務室行な料理を食べる位なら、僕の腕によりをかけたyasaiの味と風味をを存分に引き出したyasaiによるyasaiのためのyasai料理の方が断然マシだと思うんだ。という訳で食べていくよね?ああ、返事は「はい」「si」「ja」「oui」「是」「evet」のどれかでね?」


「全部意味同じじゃないデスカ!?」


「え、そうなのか?」


 あのなんとも締まらない空気を一転させるためにも、とっとと二人に返事しろと言外に伝えてみる。……正直、最後の「evet」なんて意味分かんないだろうからそれを取るかとも思ってたが、リトスは知っていたらしい。普段仕事サボリの常習犯の癖に頭は無駄にハイスペックなんだよなぁ、コイツ。


「ってか、そもそも料理できたんだな、リーン」


「なに言ってるの~?リーン君の料理の腕と裁縫の腕は学年中で有名―――って、外部から来たばっかのソルト君じゃ知らないか~」


 この中のメンバーで、唯一中学から入って来た外部組のソルトには馴染みの無い話だったようだ。これでも腕には(片方には)自信があったのだが……


「因みにソルト君?リーン君の料理の腕は上手な事で有名だけど、裁縫の腕はその逆って事を覚えておいた方がいいわよ?」


 そしてネリアさんが嫌な補足をしているのに、僕は何も言い返せない。


「へ?リーン、お前器用な癖に裁縫苦手なのか?」


 コウはそのことを知らなかったらしい。目を丸くして驚愕している。一方で、リトスはあー、と苦笑いで此方を眺める。その目には少なからず憐憫が混じってるのは、恐らく見間違えでは無いだろう。


「まあ、あんな事やってれば針をそんな風に使うのは難しいですヨネ……」


「そんな風?」


「まぁ、ある意味間違いではない使い方だと思いますガ……」


 リトスが言葉を濁して肝心な所を言わないことが逆に理解に繋がったのだろう。コウが「ああ」と納得の声を漏らす。


「そーいうこと、か」


「そーいうこと、デス」


 なにやらしみじみと頷く彼等に、子供組―――お前も子供だろ、という突っ込みはナシの方向で―――は今日何度目になるか分からないハテナマークを頭に乗せる。


「で、頷いてないで答えてよ。食べていくよね。いや、食べていけ」


「命令形ッ!?いくらなんでも酷くね!?」


 ソルトの絶叫はまたもや無視し、「無視すんな!」二人に笑顔で伝えておく。


「大丈夫。此処にいる全員にも料理手伝って貰うつもりだからさ」




『―――へ?/はい?』


―――――――――――――――――――――――――――――


 これはその()、人手の少ない学校の廊下での会話。


「もしもしフローラ?久しぶり」


 嬉しそうに音声通信で話すのは、金髪の髪を無造作に放った隻眼の蒼い少年。―――そう、本来なら彼は蒼を彷彿させるイメージを持つ。が、今回だけ―――でもないが、まぁ普段とは違った。


「え?ああうん。元気だよ?え、なんで君には元気か訊かないか?だって訊く意味ないじゃん」


 無邪気な子供のような高めの、恐らく声変わりすらしていない声色とは裏腹に、彼の周りにはなにやら身体に悪そうな空気が漂っていた。そう、それは偶々横を通りかかった猫が本能的にその場を逃げる程のだ。


「で、ちょっとお願いがあってさ、tomatomaとhousou-kunが欲しいんだ」


 明るい顔(と、ドス黒い空気)でそう依頼したが、何故か直ぐに顔色を曇らせた。


「あー、ごめんね。今が収穫期じゃ無い事位解ってるんだけど……え?使い道?やだなぁ、そんなの決まってんじゃん」


 どうやら相手は何に使うかを訊いたらしい。と言っても野菜の使い方なんて料理しか―――




「拷問以外に何があるのさ」




 ―――訂正。料理以外にも彼の中には存在したらしい。ついでにもう一つ訂正。あれは野菜ではなく、yasaiだった。……こんなことにあの面倒くさがり(作者)が訂正するほどだ、恐らくこれを履き違えてはいけないのだろ―――〈メタ発言禁止、メタ発言禁止〉


「へ?ああ苗のままでいいよ。アホ毛を二人用意したから」


 気づいたら伏線なのかそうでないのか良く分からない会話にまで発展していた。しかも漂う空気は子供がイタズラしているようなモノだから性質が悪い。


「うん、うん、今日必要なんだ。だから急いでくれると嬉しいな。あ、ありがとう。じゃーねー」


 そう言って通話を切った後、ニヤリと少年は笑う。


「さて、じゃあどうやって二人に実験台に立たせようかな?」




 これは哀れな二人の強者と、少年の友人達がyasaiとの戦い(笑)に巻き込まれる前の話。


―――――――――――――――――――――――――――――


「おいリーン、いったいオレ達は何を待ってるんだ?」


 学校も終わり、メイが生き生きとした目を取り戻した後(勿論授業中にやつれてた)僕等はひたすら寮の前で立ち尽くしていた。春だから日差しはまだ暖かいけど、微妙に風が寒い。うん、体に響きますね。この寒さ。


「そもそも、お前どこで料理する気だよ」


「何言ってんのさコウ。僕の部屋に決まってんでしょ。あ、大丈夫。書類とか端末とか資料とかは全部どかしておいたから」


 あの部屋以外で料理したら学校から苦情が来そうだし。……いや、あの部屋でも来るかも。


「おーいリーン、オレの質問にも答えてくれー」


「ああ、ごめんメイ。えーと、何を待ってるかって言ったら、食材?」


 恐らく彼女の事だ。知り合いの誰かをパシリに―――じゃなくて、郵便屋代わりに使って輸送してくるだろう。いや、してくる。これは断定だ。




 とそこで。


「……ねぇ、リーン君……あそこに飛んでる生物、何?」


 何やら強張った声で尋ねるネリアさんの向く方向へ全員が目をやる。と。


「……コウ、行けますカ?」


「どうだかな、今はAAしかねぇし……リーンは?」


「無茶言わないでよ。そんなこと言ったら今の僕なんてBBBしかないんだよ?」


「……なら、どうやってあの竜種(・・)を倒す?応援呼んでる暇ねぇぞ。俺等の封印具(リミッター)外すか?」


 僕等が見つめる遥か先、形はギリギリで視認出来る程度のそこには、またもや何らかの(ドラゴン)が滑空していた。


「いや、こんな所で外したら教師陣が魔力に気付いて駆けつけて来るデショウ。リーン君、アレを外部に見せないように出来ますカ?」


(ドラゴン)を隠せと。無茶言うなぁ。まぁやるけど」


 冷静に現状を見極めるリトスと、指示に従って的確に動けるコウ。軍の最高戦力も、パニックになった人には勝てないだろうし。


「ちょ、ちょっとリーン君!?貴方何を―――」


「皆ちょっと手伝って。僕等だけでアイツを倒すしか手が無い」


 と言っても、僕もアルもチカラをばらしたくはないし……とそこに。


「スゥさん、幻影系統は上手でしたよね。リーン君と同時に(ドラゴン)に「幻陰姿ファントム・コンシャル」の発動行けますか?」


「ふぇっ!?わ、私~?」


 狼狽するスゥさんにアルはこくりと一つ頷くと、暫く唸った後に、分かったと返事が来る。僕も了承を送る。


「なら行くよ」


 そう合図し、二人で詠唱を開始する。その場に流れる魔力は密度が上がり輝き始め、詠唱者(僕等)(ドラゴン)を照らす。




『『光が照らす影 海が映す月 鏡の中の自分 全ては唯の蜃気楼』』




 重なる詠唱と、それによって威力の増す魔法。初等部で習う常識だが、同時に相性が良くなきゃ逆にこっちにダメージが来てやられてしまうため、人を選ばなきゃいけないという面倒なモノ。

 どうも僕は魔力の使い方に癖があるらしく、この中で合わせられるのがスゥさんとリトスしか居ないので、人選が出来なかったところが惜しい。本音、幻影系統はアルが一番得意なのだが、何分僕とアルの相性は最悪だ。




『『我は拒む 汝が存在する事を 我は求む 汝が彼の者の前に移らぬ事を』』




 一応合わせてくれるものの、矢張りリトスと比べて全てが未熟なスゥさんだと僕が辛いな……魔力が体内で変に渦巻いて気持ち悪い……


「リーン君?」


 ネリアさんの訝しげな声に振り向く事無く最終詠唱に入る。




『『隠蔽の幻想を今此処に 幻陰姿ファントム・コンシャル!』』




 一瞬の明滅の後、また元に戻る視界。でもこれで外部にこの光景が漏れることは無い筈。そして―――


「ッ……くぅっ……」


「リーン君!?ちょ、大丈夫!?」


 微妙に沈みかけた体を持ち直し、焦った声で叫んだネリアさんに一言返す。もっとも、額に油汗が張り付いているのは否めないが。


「平気」


「……本当に大丈夫ですね?それなら次、コウ、メイ君は水風混合魔法(雷系)の中級呪文、アル君とネリアさんは水系の魔法―――水球(ウォーターボール)をアレに放って下サイ。基本雷に強い(ドラゴン)は少ないので、少しはダメージもある筈デス」


「応、じゃあ先に二人とも頼む」


「「はいっ」」


 コウの指令に揃って返事をし、僕等のように重積魔法での詠唱を始める。




『『水よ 集いて砲を放て 水球(ウォーターボール)!』』


『轟け 天空の鎖 響け 光の縛手 雷撃は勝者の下へ 雷捕縄サンダー・キャプチャー!』


『七色の光印 一撃の突き 雷纏いて棺を此処に 光雷攻(ティルト・アーク)




[!?]


 驚いたような顔をする(ドラゴン)に、水が掛かったと思うと、次の瞬間に雷が飛び、それはバチバチと音を立てて爆発した。




バァァァァァァン!!




[ッ!何しやがんだ!この人間共!!]


『へ?』


[失せろ!!]


 唐突な怒りの咆哮を上げたかと思うと、次の瞬間に来る衝撃波。ビリビリと空気が震えて切り裂かれるような痛みが走る。叫びだけでこれだ。かなり大物の古代竜だろう―――ん?竜?


「「きゃああああ!」」


「うおっ!!」


「ぐあっ―――」


 スゥさん、ネリアさん、ソルト、メイの上げる苦痛の声にはっとなったリトスが結界を張り、コウがその補強に掛かる。それでもなお来る衝撃に負けないよう、大声で僕は叫んだ。


「待って!襲ってごめんなさい!貴方はティキュアですよね!?」


「なっ!?ティ、ティキュアデスカ!?何でそんな上位種が此処ニ―――」


 驚愕を顔に浮かべるリトスに不機嫌そうにチラリと目をやってから、かの珍しい上位種は吐き捨てるように言った。


[次やったらぶっ殺す]


 そう言うと、竜の姿から人の姿―――金髪赤目の少年(うん、僕から見れば少年。他のメンバーなら一瞬女の子だと思いそうだけど)に変わった。先程までの殺気はある程度抑え込まれ、しかし未だピリピリとした空気を纏う。


「ったく、ついて早々襲われるとかフザケンナ。フローラの野郎」


「あ、やっぱフローラからか。ごめん、まさか(ドラゴン)形態で来るとかさらさら考えてなかったもので―――しかもこの間襲われたばっかだったから―――」


 誠心誠意をこめて頭を下げると、今のは許す、とぶっきらぼうな返事が返ってきた。


「にしてもリーン君、何時の間にティキュアなんて知り合いにしてたんデスカ?」


「ああ、ま、昔ちょっとね」


 眉を顰めて一瞥していたリトスに曖昧な返事を送ると、メイからの疑問の声が上がる。


「あの、ティキュアって何ですか?」


 他の生徒4人も知らないらしく、教えて先生、というような目を送ってくる―――コウに。


「あ、いや、その……」


「コウに訊いても無駄だよ。こいつ頭はオーバーSの中でも群を抜いて駄目だから」


 呆れと嘲笑をこめた眼差しでジロリと睨むと、顔を引き攣らせて反論してきた。


「う、ほっとけ!俺はお前みたいな記憶力もってねぇんだよ!……女顔」


「な!?それは今関係ないだろ!?」


 このヤロ、逆切れもいいとこだろ!


「……あー、お前も苦労してるな。何か親近感湧く」


「っ解ってくれる!?」


 何だか切実な顔で同情してきたティキュアにガバリと振り向くと、うんうんと何度も頷いていた。


「全く……落ち着きナサイ。ティキュアというのは、人間の上位種のようなものデス。姿は自由に変えられ、一定の範囲においては軍一個小隊以上の力も出せる、と言われてイマス。まぁ、滅多にお目に掛かることは出来ない生物デスネ」


「って、コイツそんなに凄いんすか!?」


 頭を抱えつつも説明したリトスに、メイが眼を剥く。ってか、さっき散々酷い目にあったのにそこまで驚けるか。


「ここも随分濃いメンツだな……とりあえず、ほい注文の品」


 呆れたような目をしつつ、抱えていた箱をソロリと注意深く僕の所へ運んでくる。


「あ、ありがとう。フローラにもお礼いっておいてくれる?えーと……」


「テラだ。……あとそいつの扱いには十分気をつけろよ?俺等も目茶苦茶になったからな」


「は?目茶苦茶な目にあった、じゃなくて?」


 ネリアさんの訝しむ声にああと一つ返事をして、テラはまた竜化した。


[じゃあ、確かに届けたかんな]


「うん。ありがとう。あ、因みに僕はリーン。リーンフォース・Y・X・R」


[ああ、フローラから聞いたよ。人間にしては強い力を持った奴だってな]


 そういって飛び去る彼に、4人が首を傾げた。


『強い力?』




 あ、これ、ヤバいかも。

 

早く続きを打たねば……

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