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Silver Breaker  作者: イリアス
第一章 目覚めへの第一歩
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第8話 件の後始末

論文が終わったー!と喜ぶも束の間、テスト目前です。最近の口癖は、数学キエロ。


2012/03/30改訂終了

 帝都ウィンザーの中央、住民区よりも高い所に位置する白と青、緑で統一されたウィルビウス城。そこでは数時間前から情報が錯綜して、混乱状態にあった。


「ヴィレット学院の竜は誰が倒したのか分かったか!?」


「今だ情報は掴めておりません!ですが教師の中で金髪の少女を見たという者が居るという報告が挙がっています!」




 あちらこちらで怒号が上がる頃のとある部屋では、この国の頂点にして主も頭を抱えていた。


「ヴィレット学園に(ドラゴン)だと!?」


 慌てた様子の主に、一人の男は報告書に目を通しながら答えた。


「ああ、しかもレクロースがな」


「レクロース……!?でもアイツ(リーン)の封印は完全解除してないぞ!」


 そういってバン!と机を強く叩きながら椅子を蹴飛ばすようにして立ち上がった主の言葉に、その場に居た二人はニヤリと笑った。


「それがですネ……なんとあの学園に聖痕(スティグマ)持ちがもう一人居たラシク……」


「そいつが弱点を見破ってリーンの能力で魔力障壁を消した後、たかがAA程度の力であのバケモン倒したらしいぞ」


 面白そうに弾んだ声で伝える敬語で灰色の髪の男とそれを継ぐ黒髪の男の言葉に、暫く唖然としていた後、何とか理解した言葉に驚愕した顔で二人を見返した。


「レクロースに弱点だと?」


「ええ、何でも本体は雷に弱いらしいデスヨ」


 今現在、まだ障壁をどうこう出来る訳では無いので役立つ事では無いが、技術的に進み、取り除けるようになった未来には、それはとても有益な情報になる。そのことに喜ぶと共に、弱点を見抜く力という言葉に引っ掛かりを覚えた。思い出すのは過去にとある国で軍師をやっていた人物が持っていたとされる鬼畜としか言いようが無い能力だった。


「……おい、待てよ。解析……いや、まさか……」


 真っ青になり、冷や汗を流し始めた主に、落ち着けと言わんばかりに黒髪で粗野な態度の男が情報を渡した。


「安心しろ。一つ言っておくが、聖痕(スティグマ)持ちの名前はアルト・ルーラ。お前ならリーンから何度も聞いた名だと思うぞ?力はお前が想像してる通り、光視土眼(クレアボランス)だ」


 能力を考えたと同時に、その力の持ち主の性格次第でどうなるかが目に見えている危険極まりない力に一瞬隔離、という物騒な事を考えたが、名前を聞いて安心した面持ちへと移った。


「ああ、彼か……ってアル君だと!?」


リーンからの報告(将来有望な人物リスト等)で度々見られる名に、王としての体面を忘れ、すっとんきょうな甲高い声を上げる。唯一の救いは、そこにいた人物が書類を持ってくる下士官でなく、自分にため口を聞ける程の二人だったことだろう。


「エエ、ビックリですよネ。あのリーン君が今まで気づかなかったナンテ」


 敬語の男はリーンを高く買っているらしい。彼への信頼ともとれる言葉を口にする。肩を竦めたその様子に、黒髪の男も賛同するように頷く。


「観察力は半端ないアイツに気づかせないというのは凄いな。ああ、因みにアル君はリーン三佐の推薦が入ってる。良かったな?」


 それはつまりこの国に使える意思があるという事。また一つ世界への信頼を回復することが出来る力を手に入れ、王は口元を緩めた。何分先代、先先代がやらかした戦争やなんやでこの国はあまり他国から信頼がおかれていないのだ。


「それは嬉しいな。取り敢えず、アル君の対応は後々考える―――が、問題は学園だな……」


 が、直ぐに目下の大問題に眉を寄せる。こんな事があった以上、出来るだけ学園に高ランクの戦力を置いておきたいが、どう置けば生徒や保護者の不安を取り除けるのか。

 そう悩んで数秒、あ、と声を上げ、面白そうに言葉を続けた。


「お前ら、夏の《アレ》まで学園で教師やってこい。生徒の戦力も上がって一石二鳥だ」


 許可も取っていないのにその発言。王ならではの態度と大量の伏線が張ってある台詞の意図を的確に掴んだ二人は、ニヤリと口角を上げて是、と言った。


――――――――――――――――――――――――――――――


 ルーラが就任するのは少々時期外れの為、大きな儀ではなく玉座での小規模なものとする。日程は後程。


そんなメールが届いたのはあの事件について報告してから3日も経った頃だった。まあ、今は本気で忙しいからメールを送る時間すらロクに無かったのだろう。そんな御上情勢に溜息が出てくるのは、多分こっちにくる仕事量が半端無いからだ。……なんだよこの書類、民間からの文官アルバイトについてとか。考えたの誰だよ。まさかウチの国王とかじゃ無い……よね?

 そして同時に来た一種のイジメとしか思えない連絡。これについてはまぁ賛成ではある。確かに防御態勢上げるよう喚起するのは助かるよ?入学して2日で味わった団体さん(テロリスト)いらっしゃい、なんてことが減るって事だし。

 でも、でもですね?―――なんっでこの二人なんだよぉぉぉぉ!!(魂からの叫び)




――――――――――――――――――――――――――――――

 



「あー、なんだ。一昨日の件で、陛下からこの学校への防御態勢を上げると共に、生徒にも自己防衛能力向上に努めて欲しいという連絡の下……まぁ、アレだ。物凄い有名な御二人が教師役として派遣されてきたので……ローゼンフォールとルーラは頑張ってくれ。ついでに強く生きろ」


 そんな歯切れの悪い説明を先生から受けると、クラス中でざわめいた。


「物凄く有名?」


「メイはなんか分かるか?」


 要領を得ない説明に、ある意味でクラス一の情報通と化しているメイにクラスメイト達が声をかけてくる。が、アレは一応軍内部でしか伝わってない情報だ。一貴族の息子が知ってる訳がない。


「いや……多分軍の上層部の人だとは思うが……基本的に軍の情報はこっち(貴族)には回ってこないからなぁ」


 そりゃそうだ。まさか元帥の暗黒史なんかが貴族伝手で一般にばれてみろ。国民が泣くぞ。あんなの聞いたら。……因みに僕はその暗黒史に出くわしてたりする。じゃなきゃ知らないし……


「遅れてスミマセン、少々こちらでバタバタしてマシテ」


 唐突に響いた声に一斉に顔を上げると、そこには灰色の髪の軍人―――しかも着ている服は将官のもの―――と黒髪の軍人―――こちらも右に同じ―――。

 その二人を見た瞬間、クラスメイトのほぼ全員が呆ける。そしてその後の絶叫による大合唱。


『ええええええーーーーーー!?』


「あー、やっぱ来ちゃったか……」


 あまりの五月蠅さに耳を塞ぎつつも本音を呟いてしまった瞬間、耳の良いメイがこちらを振り向いた。ヤベ……と呟く間もなくドスの聞いた一言が飛んでくる。


「おいリーン、今なんつった?」


 妙に据わった目をして僕の方を睨んでくるのにプラスで、微かに殺気が混じっているのは気のせいだと信じたい。


「えーと……やっぱ来ちゃったか?」


「ってなんでお前が知ってたんだ!?」


 それを聞くと次はソルトが叫ぶ。アルはあーあ、という顔をして、傍観者を決め込んでるし。―――尤も、口元が引き攣ってるけど。明らかに予想外の大物に混乱してるな。知らせてなかったし。


「ああ、それは俺がソイツに此処に来るっていう事をメールしたからな」


 ソルトに如何返そうか迷っていると、黒髪の方が助け船を出してくれる。……いや、待てよ?これフォローじゃなくて僕を泥船に突き落とすだけの相槌じゃないか?


「……はい?」


 案の定理解しきれなかったらしい。脳が思考を放棄しているような声で問い返す。凄い度胸だなー。三歳児でも知ってるよーな高官にそんな返事するなんて。


「全く……だから言ったじゃないですカ。リーン君にばらさず来た方が面白そうだッテ」


「そうか?これはこれで面白いぞ?」


 なんともマイペースに言い合いを始めた所で、収拾がつかなくなりそうな気配を察知したのか、先生が一応の自己紹介を促した。


「すみませんが、自己紹介をお願いできますか?」


 そう切り出した先生に二人はあ、とでも言いそうな顔をする。うん、先生よくやった。グッジョブ。


「あー、すいません。ではいい具合に混乱してきたので切り上げて―――」


 そう言ってチラリと灰髪の方を向くと、一つ頷いて紹介が始まった。


「皆さん多分知ってると思いますが、ワタシはヴィレット国軍特殊単独兵のリトス・コーラル少将デス。メインウェポンは剣ですが、此処では魔術の方を教える事になってますので、武器や格闘はコッチの野蛮そーなのにお願いして下サイ。あ、あと面倒事モ」


 ニッコリと胡散臭い笑みを浮かべてえらそーには見えない自己紹介をするリトに、流石のもう一人も頭痛を堪えるように頭を押さえる。


「お前なぁ……もう少し真面にというかな……真面目にやってくれよ」


 リトスを見てるとこっちの方が常識人に見えるが、実は二人とも団栗の背比べだったりする。


「えー、別に来賓迎えてるような時じゃないんですし固くなくていいじゃないデスカ」


「良くない。今日だって仕事サボ……」


 そこで生徒たちの注目に気づいたらしく、言葉を止める。


「あー、ゴホン。すいませんでした。俺はこのバ―――リトス少将と同じくヴィレット国軍特殊単独兵に所属するコウ・シュタット元帥だ。まあ、コレ―――じゃなくて少将が言ったように、武器・体術なんかを見るので、なにかあったら気軽に訊いて欲しい」


 こいつらは―――っ!!せめて最初位真面な態度が取れないのかッ!?リトはやる気すらないしコウにしたって地が出まくってるし!

 そんなフランクな紹介に呆然としてる教師が漸く動きだし、一言お願いしますと二人に言った後は後ろに下がる。

 それを確認するやいなや、早速爆弾を投げつけてくれるのがこの二人。


「おーい、リーン出てこーい」


「お仕事のじかんですヨー」


 教師に選ばれたのは僕だけじゃないのにわざわざ僕を指名する所が嫌らしい。ニヤニヤと笑っているのが無性にムカつく。


「……呼ばれてますよ、リーン君」


「……だね。行こっか?」


 最早諦めが肝心だと自分に言い聞かせて前へ出ると、案の定周りから針のような視線が集まった。それらはこう言ってる。「なんでテメェが元帥達と知り合いなのか聞かせろや」と。そんな空気を物ともせず、コウが僕に話しかけてきた。


「お、久しぶりだな。背、縮んだか?」


「なんで伸びたじゃなくて縮んだかを聞くかなコウは!一遍殺されたいの!」


「いやぁ、今日も元気ですねェ」


「それも嫌味だろうが!誰だよ病人に元気かって尋ねるバカは!」


「バカとは失礼な。これでも城内では天才の名を欲しいままにしているワタシニ」


「自分で()ーな!」


「ったく、何を騒いでんだか」


「君たちの所為だかんね!?」


 叫びまくってゼイゼイと肩で息をする僕を見て、二人は顔を見合わせよし!と親指を立てる。何がグット何だッ!


「えーと……」


 とそこで蚊帳の外に放置されていたアルが困ったように声を上げた。


「ああ、悪かったな。アル君。リーンから話は聞いている。が、まあその話は後でな」


「皆さんはまず素振り50回をやってて下サーイ」


 アルの方を向くコウにクラス中が興味深々な具合だが、リトスから命令が出てしまい、渋々といった具合に(高速で)素振りを始める。

 それを確認しつつも、二人を睥睨して疑問をぶつけた。


「ったく……オーバーSがこんなトコで油売ってていいの?」


 そう聞くと二人揃ってニヤリと頷いた。


 そう、こんなのがこの国に6人しかいない、Sランクオーバーの二人だったりするのだ。なんと言うか、世も末だね。


 さて、ここらで少し作品の話を。元はこの話、自分が小学生の頃に思いついたものです。あ、これいい暇つぶしになるかもという程度で。それが設定を固めるうちにあら不思議。何時の間にやら超長編になってました。……作者がシリアス大好き人間なおかげで、目茶苦茶暗い話に。

 なのでリーンを筆頭にアルもリトもコウも王様もクラスメイトも皆暗ーい過去有りになってしまいました。実は一番過去が無いのがメイだったり―――それでいいのか御貴族様。

 とまあ、そんな話にも今回のようにギャグパート?は出てきます。ニガテですけど頑張ります。

 あ、誤字脱字があれば訂正をお願いします。あと感想もお願いします。初めての感想が来た時は有頂天で書き上げました。……調子のいい奴なんて言わないでくださいよ?

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