どうしてこうなった・・・ 10
はは・・・
俺の人生ってとことんツいてないよな。
本当勘弁してくれよ・・・
なんで、俺が魔術師の人と戦ってんのさぁぁぁああ!!!
ってちょっ、危なっ! 掠った掠った!!
どうしてこうなったぁぁぁぁああああ!!!!
数時間前――。
side シャル
結局、宿屋についたのは朝方でした。ねっむっっっ!!!
っていうかこの状態で女王様と面会とかまじ無理、途中で寝ちゃうって。
「うっさい、はよこいチビシャル」
横暴だー!
「大丈夫かい?」
男に心配されたかねーんだよ!
「シャル、大丈夫?具合わるいの?」
おぉ、サフィお前だけだよ、俺の味方はー! 今なら抱っこして頬ずりもしてあげるからねー!
「ロリコン落ち着けっ!」
ドガッ!
いたいっす、アイシャさん・・・・・
そういや昨日アイシャに聞こうと思ってたんだけど、なんで女王と会えるんだ?
「ねぇアイシャ、そういえばお姉さんと会わなくていいのかい?」
「ん? これから会うよ?」
ほうほう、アイシャのお姉ちゃんもここにいんのかー、怖い人だったらいやだなー。
「へぇ、お城で働いてるんだ。凄いんだねぇ」
「えっと、働いてるっていうか、うん・・まぁね・・・」
「それじゃ女王様と面会おわったら会いに行こうよ」
「サフィも会ってみたい!」
おお、サフィがやけに会いたがっているな。ここは保護者として俺も賛成せねば!
「ア、アハハハー・・・・・・ほ・・ほら行こう?」
数十分後――――。
女王の私室へと招かれ、その部屋の前へとやたらとダンディな秘書官に連れられてきました。ってか普通王座とかあるとこに招かれるんじゃないの!? なぜに私室!?
「女王陛下、例の者達を連れてきました。」
おっさん、声も渋くてかっこいいな。
「入りなさい。」
これは俺の美女お姉さまセンサーがなっている! これはかなりの美女だ!!
「失礼します。」
失礼しますっと・・・・・うぉぉぉぉぉ!!!!!ちょー美人!すげー!
空色の髪できらきら輝いてて、昨日の修道女のお姉さま並の胸!すばらしい! ん?・・・あれでも誰かに似てるような?・・・
っておいアレスなんでそんな固まってんの? アイシャもなぜにそんな困ってる? こらサフィ足にしがみついて威嚇しないのー。
「ティ、ティア様ぁ!?」
おいアレスうっせーぞ、って知り合いなのか? またてめーだけ美女と知り合いまくってこのやろう・・・・
「ふふ、久しぶりねアレス君」
笑った顔も素敵ですお姉さま。
「それに・・・貴女もたまには顔出しなさいと言ってたでしょう?今回も何も言わなければ戻って来なかったわね?アイシャ」
「あははは・・・その・・・お姉ちゃんごめんね?」
ほー、アイシャのお姉ちゃんなのかー・・・・通りで似てるわけだー!顔とかそっくりだしアイシャがもうちょい大人になったらこうなるんだろうなって感じだしな!
ん?
アイシャのお姉ちゃん ⇒ 女王様
へっ? まじで?
「まぁいいわ、説教はこの後でね。それよりもそこに座りなさいな。」
「うぇぇ、お姉ちゃん説教はやめ・・」
「あら、連絡もよこさず卒業と同時に姿をくらませたのは誰かしら?」
「うぇぇ・・・・・・」
あっ、この人アイシャのお姉ちゃんだわ、Sっ気がぷんぷんするわ。
side アレス
びっくりした・・・・女王様とご対面と思ったら、アイシャのお姉さん・・ティアさんがいたんだ・・・
ティアさんは8年前半年ほど村に居て、よく遊んでもらっていたんだ。その時シャルは両親と旅に出ていなかったから二人を会わせる事はできなかったからいつかは会わせたいとは思っていたけどこういう形になるとはね・・・
「さて、貴方達は何をしにきたのかしら?」
「僕達は、戦争を止めるために各国の王への説得をしにきました。」
「そう・・・でもそれは無理な話ね。」
「なぜそう決めつけるのですか? 何も話し合いもせずに決めつけるのは・・・」
「話し合いね・・・それで済むのならば私も他国の王もそれで終わらせたいはずよ。でもねもうそんな次元じゃ治まらないほどに各国の人達は憎しみを抱えてしまっているのよ。情報が屈折されて民に届き、悪いのは他の国だってね・・・・」
「そんな!じゃ、ちゃんとした情報を流せば!」
「いいえ、人っていうのはね、一度物事を想いこんでしまうと中々離れられないのよ。今更あの事件の犯人で悪い奴は他国ではないと言っても、誰も聞き入れないでしょうね。」
「そんなっ・・・・じゃあ僕はどうしたら・・・・」
「神剣」に認められて力を手にしたと喜んでいたのに実際は何もできないじゃないか・・・
「・・・方法がないとは言ってないわ。ただ・・・・」
「どんな方法ですか!」
「その方法も絶対というわけではないわよ。」
「それでも!可能性があるのなら僕はあきらめない!」
「そう・・・・なら今から言う事は私の独り言よ。私は先帝が死亡したあの事件の事を独自で調べ上げたわ。そうしたら色々な事実がわかってね。世間に知られているあの事件は年に一度の祭りへ招待された魔法国家「マホテプ」の王を「セクメト」の将軍が護衛諸共惨殺し、宗教大国「クアム」へ逃亡したと。だけど私が知った事実は違った。「セクメト」の将軍は一人で事件を起こしたのではなく他に仲間がいたと、そしてその者達は宗教大国「クアム」へは逃亡せず、姿を眩ませたと。」
「なっ!?それが事実ならなんで黙ったままでいるのお姉ちゃん!」
アイシャが驚き、ティアさんに怒鳴る、でもそれもしょうがない。僕もどうして? と聞きたくなってしまったから。
「落ち着きなさい。まだ独り言はおわってないわよ。・・・・この事実を知っているのは恐らく私の他では商業大国「ケツアル」の王ね、だけどあそこも静観したままでいるからなんとも言えないのが現状。戦武帝国「セクメト」の王はその事件ののち病に倒れ、今は王位を譲っているわ。だけど今の王ならば、この情報を渡せば我が国と協力して真相を探してくれるはず。でも「セクメト」へ使者を出しても辿りつく事無く消息不明になっているの、いく道で魔獣がいるのか人によるものなのか不明だけどどの国とも連絡がなかなか取れにくいのが現状なのよ。」
なら・・・・僕らが各国の王へその情報を知らせにいこう!
「なら・・・・なら・・・僕達が「セクメト」に行きます!」
「・・・・今日から3日後に「セクメト」との国境地帯に補給物資を届ける小隊があります。あの小隊の隊長はたしか4人、人数が少ないと嘆いていました。・・・これで私の独り言はおしまいよ」
そっか・・・ならその隊長にも話は通ってあるかな。後で話をしにいこう。
「ありがとうございます。」
「私は独り言を言っていただけよ。それに貴方達を戦場へ送る事になってしまうわ。ごめんなさいね」
「気にしないでください。僕達が勝手に行くだけなんですから」
「ふふっ、ありがとう・・・・さて、私も用件があるのだけど付き合ってくれるかしら?」
「え?お姉ちゃんから?」
女王様からの用件って何なんだろう?
「ええ、とは言ってもその可愛らしいお嬢さんと「黒」い方にね。名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」
シャルとサフィに? ティアさんは「黒」に対して偏見を持たずに見ている人だったと思っていたんだけど・・・・
「・・・・・こいつはサファイア。俺はシャル=ウォーカー」
シャルの名前を聞いて、それまで凛とした佇まいを崩さなかった女王が驚いたような表情をしていた。
「ウォーカー?・・・・・・・ごめんなさい顔を見せてくれるかしら?」
女王様の言葉を受けてシャルがフードを外した。
「あぁっ・・・・そんな・・・ミレイ様・・・・」
「・・・・その名は・・・」
シャルの顔を見て、女王様は悲痛な顔をしうろたえていた。小さく何かを喋ったようだけど僕には聞こえなかったんだけどシャルには届いていたらしい。
「ごめんなさい、とある人に昔、命を助けてもらったことがあるの。その人に良く似ていましてね。でもその方はウォーカーの名を持ってはいませんでしたから貴方の親と言うわけではないと思います。」
「・・・・・そうか」
「話が逸れましたね。ごめんなさい。では本題に入らせていただきます。私の用件というのはシャル君の力を見せていただきたいのです。 生憎戦争のため、シャル君と互角に戦える人が前線へ出向いておりますのでこのクロウがお相手しますがよろしいでしょうか?クロウは普段は私の秘書として働いておりますが実力はこの国で一番の者です。」
ビックリしたよ。シャルの実力を知るためっていうのが用件っていうのもビックリだったけど、ティアさんの隣に立つ壮齢の男の人があの「隕石落としのクロウ」だったなんて・・・
というかシャル。さすがに模擬戦闘とは言えこの人とやり合うのは怪我所じゃないからやめたほうが・・・
「・・・・・かまわない」
・・・・まぁシャルなら勝つよね・・・・
side シャル
うぉぉ、眠い、眠すぎてさっきから話してる事ほとんど聞いてないぜ。女王様だしアイシャのお姉さんだし怖いから聞いておかないとな・・・
「ふふっ、ありがとう・・・・さて、私も用件があるのだけど付き合ってくれるかしら?」
「え?お姉ちゃんから?」
女王様からの用件? まぁどうせアレス達当てだから俺には関係ないっしょー。
「ええ、とは言ってもその可愛らしいお嬢さんと「黒」い方にね。名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」
Oh、俺とサフィ当ての用件だったのか。やばいさっきまでの話ほとんど聞いてなかったぜ。なんとか・・なるよね?・・・
「・・・・・こいつはサファイア。俺はシャル=ウォーカー」
「ウォーカー?・・・・・・・ごめんなさい顔を見せてくれるかしら?」
んん? ウォーカーってそんな珍しいっけ? っていうか母さん達有名人だからそれで知ってるんかね。まぁ顔見せるくらいならイイデスヨー。っていうか顔見せて黒だってばれてもアイシャのお姉さんなら・・・大丈夫ダヨネ?・・・こわっ!
「あぁっ・・・・そんな・・・ミレイ様・・・・」
え? なんだ・・・頭が痛い。
―――死ぬな! 死ぬな! なぜアンタがここで死ななければならないんだ! 死ぬな!
黒い女性が胸から血を流し横たわる。なんだこの光景、俺は知らないぞ。ザザッ。っ! 頭が痛い!なんなんだよ!
―――逃げなさいシャル・・・私達の分まで生きなさい
やめろ・・・ヤメロヤメロヤメロ! 誰なんだよ! 俺はこんなの知らない! なんなんだよこれはっ!
頭が・・・いたい・・・・イタイイタイイタイ!
割れそうだ。誰か助けてくれ・・・!
ぎゅっ
あっ・・・・サフィ?
「シャル大丈夫?」
あぁ、大丈夫・・・・・ありがとうな。でもあれは一体・・・・
「ごめんなさい、とある人に昔、命を助けてもらったことがあるの。その人に良く似ていましてね。でもその方はウォーカーの名を持ってはいませんでしたから貴方の親と言うわけではないと思います。」
え? 俺の親?・・・何を言っているんだこの人・・・・くそっ、頭が割れそうになる!
「話が逸れましたね。ごめんなさい。では本題に入らせていただきます。私の用件というのはシャル君の力を見せていただきたいのです。 生憎戦争のため、シャル君と互角に戦える人が前線へ出向いておりますのでこのクロウがお相手しますがよろしいでしょうか?クロウは普段は私の秘書として働いておりますが実力はこの国で上の者です。」
くそっ、頭痛酷くてほぼ何も聞いてなかったけど何しろって? とりあえず休みたいからさっさと終わらせてくれよな。
「・・・・・かまわない」
言わなきゃよかった。いやまじで。
side ティア
シャル君を見た時、最初はあの方に似ている人と思いましたが少しのお話で印象は変わりました。シャル君は表情では仮面を被っていますが、心の奥底に何かを宿しています。それが今後アレス君達の害となるかどうかを私が確認しなければなりません。もし害となるようならば、例えアレス君達が悲しもうとも恨まれようとも、私が「マホテプ」の王として手を下しましょう。
そのためにクロウと戦わせることにしました。クロウには全力で殺しても構わないと言っておりますのでアレス君達には悪いですがこの戦いでシャル君の力を見定めさせて頂きます。
数十分後―――。魔法練習場にて
まさか、ここまでとは・・・・クロウは「隕石落としのクロウ」と二つ名をとるほどの土魔法の最高峰であるというのに・・・
ドカカカカンッ
100にも及ぶ岩の槍がシャルへ飛翔するが、シャルはそれをすべて紙一重で避けている。すでに戦闘開始から30分ほどは経過しているが、シャルは防御に徹底し、すべての魔法を紙一重で回避し続けていた。
「ちょっと!お姉ちゃん! どういうことなの! さっきから見てればクロウさんどう見てもシャルを殺す気で魔法撃ってるじゃない! このまま続ければシャルがっ!」
「ティアさん! もう止めてください! 僕の親友を殺す気ですか!」
この子達はよくここまで我慢できた・・・というところかしらね。
「ふぅ・・・そうね、私はクロウにシャル君を殺すつもりでやりなさいと言ったわ。シャル君は心の奥底に何かを秘めているわ。もしもそれが貴方達に害を向けるものだとしたら? もしそうなら私は、「マホテプ」の王として全力でシャル君を殺すわ。」
「お姉ちゃん!」
「ティアさん!」
「落ち着きなさい。害があればと言ったでしょう。それにシャル君が「黒」なら必ずあの力を持っているはず・・・・貴方達もシャル君の本当の力を知りたいでしょう?」
「っ!・・・・シャルが危険だと判断したら僕は強制的に介入させてもらいます。」
「ありがとう。アイシャもそれでいいわね?」
「アレスがそう言うなら・・・でも絶対シャルは死なせないわよ!」
「・・・・それでいいわ。それに貴方達はもうすこしそのお姫様を見習った方がいいわね?」
「えっ?サフィ・・・?」
アレスとアイシャがサフィを見ると、サフィは静かにシャルを見ていた。普段なら一番騒ぐはずであるサフィが、だ。いつもの陽気な雰囲気もなく表情も消え、まるでシャルのような雰囲気を醸し出すサフィだった。
「シャルが・・・シャルが貴女のしたこと許したら、サフィも許す。でもシャルが許さなかったらサフィも許さない。それにシャルはこんなとこで死なないもん」
シャルから目を離さずにこう言った。
強い子ね、と思った。最初見た時は年相応の可愛い子供だと思っていたけど、シャル君と話し始めてから目つきが変わり、私を見るその目が、長年の時を得て辿りつく大賢者のようで、一瞬だけこの子に恐怖を覚えてしまった。と思いだしていた。
それにしても、「こんなとこで死なない」か・・・あの「巫女」ですら分からなかった。この二人がどのような道を歩むのか王としてではなく一人の人間、ティア=ラウルとして興味がでてきてしまった事に内心苦笑しながらアレスとアイシャの不安を取り除く事にしてあげた。
「アレス君、アイシャ。友達が不安なのは分かるけれども、ちゃんと見てみなさい。傍からみれば優勢はクロウだわ、でもねシャル君は戦闘開始からすべての魔法を紙一重で避けて今まで一度も攻撃をしていないのよ。それのクロウを見てみなさい。」
「えっ?・・・すごい焦っている?」
「そう、魔法を極めた者、武を極めた者、達人と言われる者にとって自分の攻撃に少なからず自信を持っているの、そしてそれを避けられる事はないという無自覚な思考もある。ならばその攻撃すべてを紙一重で避けられたとしたら?」
「「あっ・・・・」」
気付いたようね。
そう、達人と言われる者達の攻撃を避けるのは至難の業、それをただ避けるのではなく、文字通り紙一重で避けるのだ。相手の実力は自分の遥か格上だと思わされるのだ。いくら体力があろうといくら魔力があろうとその事実を突きつけられれば誰であろうと焦りが出てしまう。
シャル君はそれを実践し、なおかついままで攻撃をしていない。もし攻撃をしてくればどうなる?・・・・クロウにしたらこの時間は地獄でしょうね。
「それにしても本当に恐ろしい子だわ、この国のNo2をこうもあしらってしまうとは・・・」
それでも貴方の奥底に眠る心を見せてもらうわよ。シャル=ウォーカー
シャルから濃密な殺気が吹き出ているのを感じながらこの戦いの終わりを見届けるために彼らの戦いを見ることにした。
side シャル
ちょっと前の俺をぶん殴りたい俺です。どうも。
いやぁ、女王様のお願いだからってさ、対して話を聞かずに了承したけどさ? いやたしかに頭痛ひどくて自分でも何言ったか覚えてないけどさ?
これはひどくねぇぇぇええ!?
え? これからこのダンディーなおっさんと戦えって? っていうかおっさん秘書じゃなかったのかい。
ってか俺平凡な人だよ? ねぇ聞いてる? あっ、ちょっ、皆行かないでぇぇぇええ!!
「少年、力を隠しているようだが、全力で来い。私は君を殺すつもりで行くぞ。」
えっ、殺すって何? え?
おい待て早まるな! 戦うならアレスにしやがれ!
「では、開始!」
女王様! そんな高いとこから言わないで! ってかアレス達もいるし! 後でしばk・・・
「余所見とは舐められたものだ!行くぞ!」
こっちの準備できてねーっつーの! 危なっ!岩飛ばすな!
数十分後―――。
母さん、父さん
元気ですか? 俺は元気です。
元気ですけど俺もそろそろそっちの世界に旅立てそうです。
なぜか俺に岩の槍が降ってきたり、下から岩が盛り上がってきたり、色々大変な事になってます。
っていうかさ、
ドカカカカンッ
おっさん秘書のくせして、なんだよこの岩の槍の数! うぉぉぉ!動け俺の身体!!!
「くっ!儂では敵わないと思ってはいたがまさかここまでとは!」
いやいや、おっさんあんたのが間違いなく強いからっ
っていうかなんで俺こんな目にあってんだよ! あれかやっぱりアイシャの姉なだけあって女王様の苛め対象に選ばれたってか!?
ふ ざ け ん な !
いい加減にしやがれ! 温厚な俺だからってそろそろブチ切れたぞ!
おっさん!てめぇもいい加減にしやがれ!
「・・・いいだろう儂の最大魔法で勝負だ。」
あぁ? 上等だ。全部ぶっ潰してやんよ!
「イシス」「ネフティス」久々に暴れさせてやるよ!
・・・・・・マガジンに弾入れるの忘れてた。
ちょっ!弾精製するまで待って! あっ、発動した・・・なにあのでっかい隕石。
ははっ、俺オワタ
いや、まじで死ぬだろこれ。
――― 諦めるなよ。
えっ? っ! また何かが頭に流れて来るっ!
――― 皆で帰るって約束しただろう? それともこんなとこでくたばっちまうのか? ■■■。
なんだよこの光景?・・・・いや・・・これは・・・俺喋っているのか?
ドクンッ
――― 「ったく、見てられないな。「イシス」と「ネフティス」の使い方思い出させてやるからしっかりしろよ」
だ・・・れだ・・・・おまえは・・・
――― 「あん?今は気にするな。そんなことよりいいのか?暴走しちまうぜ?」
あ、あああ・・・・体があつい・・・・アツイアツイアツイアツイっ!
どうすれば、開放される。どうすればこの熱さから開放されるっ!
―― 目ノ前ノ奴ヲ殺セバイイ。
目の前?・・・だめだ!その人はだめだ!
―― ナゼ? コノ世界ノ人間ナド殺シテシマエバイイ。ソウスレバ開放サレルヨ?
殺・・・す? 開放されるのならば・・・・殺す・・・・
ソうダ、こノ世界の人間なド、コの世界ノ神ニ愛さレた人間ナど、皆死ンでしマエ。
side アレス
ティアさんからシャルが優勢だと聞かされたけれど、やっぱり僕はまだ心配だ。シャルが強いのは知ってるけど相手は土魔法を極めたあの「隕石落としのクロウ」だ。
現に無詠唱と言詠唱だけでシャルを追い詰めているようにも見えてしまう。
いいや、よそう。一番心配であろうサフィが落ち着いているんだ。シャルの親友である僕がうろたえちゃだめだね。
どうやらそろそろ終わりそうだ。シャルから濃密な殺気が溢れている。戦闘が始まって初めてシャルが攻撃に移るんだ。恐らく次が最後。クロウさんも身構えている。
「・・・いいだろう儂の最大魔法で勝負だ。」
最大魔法?土魔法の・・・・っ!
シャル!今の内に攻撃するんだ!いくらシャルでもあれは・・・!隕石は止めれない!
「我が言霊に応じ土の精霊よ力を貸したまえ。」
だけどシャルは一歩も動かす、ホルスターから白い装飾銃「イシス」黒い装飾銃「ネフティス」を取りだした。
「我が魔力を糧とし、全ての土の祝福を受け、遥か空より落ちれ」
クロウさんの足元に魔法陣が広がる。
「行くぞ、少年。・・・・・【グラビティロック】」
そして発動した。宇宙に漂う隕石を召喚し、全てを滅する土の最強魔法を。
「クロウったら魔法練習場じゃ耐えきれないわよ・・・・・風の精霊よ、我らを守護し賜え。」
アイシャさんがこれからくる魔法に備え結界をはると同時に僕らの動きを封じた。
僕も一応土魔法を使えるけれど今見ているものはできそうにないと思った。
魔法練習場の半分ほどの大きさをもつ巨大な隕石が僕らの頭上に出現した。
それを見てもシャルはまったく問題ないように立っていた。
「さぁ、少年よ。力を見せてみろ」
その言葉と同時に隕石がシャル目がけて落ちてきた。そしてシャルが隕石めがけて銃を構え・・・・
「死んでしまえ」
シャルが何かを呟いたと同時に雰囲気が変わった。いつかの洞窟の時と同じようにシャルじゃないようだった。いやあの時よりも何かが違う。悲しみを堪えているようだった。
隕石がシャルと当たる瞬間、僕には何がどうなったかと確かめる事ができなかった。
隕石・・・いや魔法練習場も凍っていたんだ。クロウさんは直前に土魔法で自分を守護したのか無事なようだった。
ガァン
轟音が鳴り響き、凍っていた隕石にヒビが・・・いや切り裂かれた。
あれはいったいなんなんだ? シャルの魔法銃の事は多少分かっていたつもりだけどあそこまで強力じゃないはずだ・・・
隕石がすべて切り裂かれ、その下から無傷のシャルが立っていた。
やっぱりあれは違う・・・・シャルじゃない・・・
「ティアさん・・・行かせて下さい。このままじゃシャルが・・・」
「ごめんなさい。それはできないわ。今のシャル君は心の奥底に隠してきたものを出してきた。それがこの世界にとって害となるのなら・・・。」
「シャルが、あのヘタレが世界の害になんかなるわけないじゃない!」
そうだよ。シャルが世界の害になんかなるわけ・・・ないじゃないか・・・
シャルが攻勢にでてからは一方的な展開だった。シャルが銃を撃てば、着弾した場所から火炎に曝され、凍り付き、暴風が通ったかのように風が吹き荒れたり、だ。
それも上級魔法並の威力を連続で出してくるのだから凄まじい事になっていた。それを防いでいるクロウさんもすごかったがもう堪え切れる状態ではなかった。
クロウさんが魔法弾の余波で吹き飛ばされた。あれはもう立てないだろう・・・
僕はやっと終わったと思っていたんだ。だけど、
シャルがクロウさんへと一歩づつ近づいていき、クロウさんの傍まで辿りつくと、
クロウさんへ、銃を向けたんだ。
「シャル!もう終わったんだ。やめろ!」
僕の声なんて届いていないようだった。その時隣から、今まで感じた事のない魔力の放出を感じた。
本当に一瞬の事だった。・・・隣で今まで黙っていたサフィが狼へと変化して飛び出し、シャルに寄り添っていた。シャルはいつのまにか倒れていた。
「っ! シャル!」
「へたれしっかりしろよ!それとお姉ちゃん後で覚えておいてよね!」
僕とアイシャはシャルの元へと向かった。
Side シャル
身体が沸騰するかと思った。自分が今どう動いているのかも分からない。
ただ思いつく事は目の前の人間が邪魔だということだけ。
うっとうしい。いちいち岩で防御しやがって・・・俺は開放されたいんだ。そこをどけよ人間。
あぁ、やっと動かなくなった・・・・いや違うまだ生きてるな。開放されるためには殺さないと・・・・
はやく、開放されたい・・・・・
トンっ
え・・・・・なんだ? なんだお前は? お前も邪魔するなら殺してやろうか?
『シャル!』
誰だお前は?・・・・いや違うお前は・・・お前は・・・・サフィ・・・
あ、あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”
俺は、何をっ、何をしようとしていたんだっ。
俺はっ!!
『シャル!おちついて!サフィがいるから!ここにいるから!』
サフィ・・・俺・・・は・・・
意識が遠のいていく。
Side ティア
「まさか・・・あれほどとはね・・・貴女の目から見てシャル君はどう見ましたか?」
そうティアが呟くと後ろから青い女性で出てきた。
「そうですね。何か強い憎しみを持っている事はわかります。それと同じくらい優しさも持っていますね。」
「そう・・・世界にとっての脅威となるか救う者となるかはまだ分からないかしら?」
「それはまだ分かりません。ですが見たでしょう?殺意を持って人を殺そうとしていたのにサフィちゃんが近寄って傍に寄り添っただけで理性を取り戻したのを、倒れたのはわかりませんが。」
「そうね・・・・それにしてもサフィちゃんは何者なの?人狼かと思いましたが獣人種は獣耳や尻尾などがあるはずですし・・・」
「そうですね。それについては黙秘させてもらいます。」
「そう・・・でもシャル君にはサフィちゃんがいればなんとかなりそうね。それに貴女がいるならシャル君が暴走することもないでしょうしね。」
「できるかぎり努力はしますわ。」
その言葉を聞き私は、この世界の未来を担う子達を見た。
今は、貴方達の絆を信じましょう。
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