どうしてこうなった・・・ 09
side シャル
魔法国家「マホテプ」の首都の宿屋にて。
あー、くそう。なんだかんだと言いながらサフィの事もあって村に戻れなくなっちまった。鬱だ。死のう。
「死んじゃだめっ!」
あっはい、ごめんよサフィ。
あぁそうそう、サフィもねなんか俺の言いたい事、なんとなく分かってくれるようになりました。アイシャからはさすが夫婦ってすげーからかわれたけどね。っていうか夫婦じゃねーし! あっサフィごめん泣かないで!? ごめんね!? サフィの事好きだから泣かないで!?
・・・・サフィのご機嫌取りして俺はベットにぐったり倒れこんでます。ツカレタゼ。
今俺達がいるのは魔法国家「マホテプ」の首都だ。さすが魔法国家の首都なだけあってすげー栄えてる事わけで、何より魔法学院アテナがあるからか魔術師の卵がいっぱいだぜ。それでも今は戦時中だからかこれでも人は少ない方なんだとさ。
つーわけでアイシャとアレスは今魔法学院へこの前の洞窟の件で報告しにいってる。俺は黒くて目立つから宿屋に引きこもり。イェイヒッキー。・・・・・・んま俺が動けないからサフィも一緒に御留守番なわけよ。というかルルス街で代わりのローブ買えばよかったぜ。
アレス達帰ってきたら代わりのローブ買ってきてもらおうかな? ん?なんだサフィ?
「シャルー、ねみゅい・・・・うぅー」
あーはいはい、アレス達きたら起こすから寝てていいよ?
「んぅー、もう宿に近くまで来てるー」
あらそうなの? でもま、寝てていいよ?
「うぅー、抱っこ」
はいはい、お姫様これでよろしいですか? って寝るの早っ! でもまいいか、
とりあえずなでなでしとこう。俺も癒されるしね!
「そのまま襲うんじゃないわよ。」
いつお帰りになったのデショウカ?
アイシャとアレスが部屋の入り口に立っていた。
「シャルが嬉しそうに抱きしめたあたりから」
ソウデスカソウデスカ。それでなんでちょっと不機嫌なんだアイシャよ?
「そーそー、聞いてよ!あんのクソ爺!あたしが帰ってくるって姉様に言ってたらしくてさ!おかげで明日会うはめに・・・・うがーー!やっぱあのクソ爺殺しとけばよかった!」
「はい、アイシャ落ち着こうね?」
「アレスがそう言うなら落ち着くわ❤」
相変わらず変わり身はえぇな、ってか暴言とかアレスに聞かれてる時点でだめだと思うんだけどね・・・
「あぁん?」
そーりー!
っていうかさ?アレス達これからどうすんの?
「んー、そうねぇあたしはアレスについていくだけだけど?」
あぁやっぱり? じゃ俺とサフィはここらでおさr・・・
「あんたも一緒に決まってんじゃん。覚悟決めなさいよ。」
さいですか・・・・はぁ・・・んでアレスよ、これからどうするんだ?
「・・・・・これからの事は?」
「えっと、今起こってる戦を止めたいんだ。だから4国の王になんとか会って、戦争を止めれるようにしたいなと・・・」
・・・アレスよ、それはいくらなんでも甘すぎるだろう・・・俺達みたいな平民にそう安々と各国の王が会うわけないし、そもそも戦争の発端である人物が今どこにいるのかもはっきりとわかってねーんだしよ。何もせずにはい終了ってわけにもいかねーだろ。
「んー、4国全部は無理だけど・・・・・ここ魔法国家「マホテプ」の女王には会えるわよ。」
そうそう、アイシャも言ってやってくれ・・・・よ? え? 会えるの? まじ?
でもなんかちょー嫌そうだなアイシャ?
「本当に? でもどうやってここの女王に?」
「あれ、アレスってば忘れちゃったの? ふっふっふっふ。じゃお楽しみって事で教えない。」
「えぇ? あ・・アイシャ・・・」
「本当は嫌だったけど楽しくなりそうだわ。っということで明日会いに行くわよ!」
おー・・・二人ともがんばー。
「チビシャルにサフィも連れてくに決まってんじゃん。」
さいですか・・・・抵抗? するだけ無駄だと俺は悟っているのさ・・・はぁ・・・
サフィの頭なでて癒されよう・・・・
深夜――――。
あー。くそ、明日女王様と会うとなったらなんか緊張して寝れねーー!
夜中だし人もいないだろうから散歩でもしてくっかな。
クイクイ。
狼姿のサフィが一緒に行く!と言いたげな目で俺の服の裾を噛んでこっちを見ていた。ってか狼モードで行くの? ん? なんでかこの姿がいいような気がする? ふーんまぁいいやじゃ行こっか。
狼モードのサフィと二人で誰もいない大通りを進んでいた。日中のような賑やかさはまったくなく深夜だからか人が誰もいなく止まった時間の中を二人だけで動いているようでもあった。
ほー、日中は外でてなかったから分かんなかったけど中々に広いなー。それに夜だからフードも被らなくていいしねー。ん? あっちょっ!サフィそんな服の裾ひっぱっちゃだめぇぇぇえええ!!!
はい、サフィに引っぱりまわされて迷子になりました。ココハドコー。
小道に入りサフィとうろうろしていたら、結構広い場所に辿りつきました。これはなんだろう?朽ちているけど教会?・・・わわっサフィひっぱるなって!
サフィにまたまた引っぱられた先には様々な色の花が咲いていて、設備されている首都の中でここだけどこか違う世界のようなそんな光景だった。
すっげぇ、はは、サフィここに来たかったのか? いいぞ俺はここにいるから遊んでこいよ。
俺は近くにあった岩に座り、花で遊び走り回っているサフィを見ながらぼーっとしていた。それから何十分経ったんだろうか。ふいに俺達が入ってきた場所から音が聞こえ俺は振り返ってそこを見てさらにびっくりしたね。
何にびっくりしたって胸のでかさにびっくりだね。あのアイシャ以上の胸を持っている修道女! そう修道女なのだよ! あの胸のでかさなのに神に使える修道女とは! くぅ~イイネ!
ってこらサフィ! 威嚇するんじゃありません! ほらおいで! お姉さんが怖がってるでしょ!
「あの・・・貴女様はここに住んでいる人なのですか?」
いいえいいえ! 俺は魔法なんて使えない人間なのでこんなとこに住めないですよ!
「・・・・・いや、ここには今日来たばかりだ」
「すみません。貴女のお顔を近くで見せてもらってもよろしいでしょうか?」
もちろんですよお姉さま! さぁさぁ俺の近くにちかよ・・・って?・・・ってアッー! フード!フード付けるの忘れてた! 黒髪に黒目見られた! まずい!俺捕まる!?
「近寄るな」
ごめんなさいごめんなさい。捕まえないで!
「っ!・・・申し訳ありません。ですが私は貴女の敵ではありません。どうか信じて下さいませ」
くっ・・・そ・・そんな可愛らしく上目使いしても、俺は騙されないぞ! ってかこの修道女のお姉さま、右が赤目で左が銀目で色違ってまたなんとも言えない魅力が・・・はっ、俺は騙されないぞ!?
って、サフィ? どうした? ちょっおい!だから裾噛んで引っ張っちゃだめぇぇええ!あぁ、もう腹括ろう。さぁ修道女のお姉さま、どうぞ俺を好きにしてください。
「・・・・・好きにしろ」
「ありがとうございます。では・・・」
修道女のお姉さまが近寄ってきて、俺の顔へ手を伸ばし頬に手を添えた・・・・・
え? 捕まえるんじゃないの?
「貴方の目はとても哀しい色を宿していますね。でもそれ以上に深い優しさを持っていますね。」
why? 大丈夫ですかお姉さん? っていうか顔近っ!
あっ・・・お姉さまが離れた・・・・惜しい・・・・・はっ! サフィ噛みつくなっ!!
「ふふふっ、とても仲良しなんですね?」
いえいえ、これは仲良しというか怒ってますね!イタイッ!
「羨ましいですわ。ですが焼けちゃいそうです。貴方のような美しい方が殿方なんて。始めは女性かと思っていましたわ。」
おう・・・神よ。いつ俺は初対面の人から男と認識されるようになるのでしょうか?・・・
「それに、そんな美しい黒い髪と黒い目を持った方は初めてですわ。」
はっ? ちょ、頭大丈夫? 黒を美しいとか美的センスやばいんじゃないんないか!? まさかここにもアイシャと同じようなセンスの持ち主がいるとは!!!
アイシャは「黒」を忌み嫌われるこの世界で黒い服をよく好んで着る事がある。
・・・話それたそれた。っていうかあまりの事に茫然としたわ。
「それでは、また明日会いましょう。シャル君にサフィちゃん」
えぇ、また明日ねー。って、あれ俺いつ自分の名前名乗った? っていうかサフィの名前も?なんで? ってか明日? どういうこっちゃ?
くぅーん
んん? おぉサフィごめんよ。結構時間も経ったし帰ろうか? あのお姉さまの事は・・・まぁほっとけ!
side ???
私は明日出会う事になるであろう者達の事を考え、これからの事を考え柄にもなく緊張して寝れなくなってしまい。お城の人に内緒でお城の外に出てきました。
向かう先はここにきてから見つけた、廃墟となった教会跡地。そこには私の生まれた地域では見た事もない花が咲いていてとても心休まる場所なのです。
その場所へ近づいてみて誰かがいるのが分かりました。その場所は私だけの場所ではないのですが他の人も知っている事にちょっとガッカリしちゃいました。
それでもどんな人だろうと思い影からそっと覗き見してみました。
そして私の中で何かが音を立てて壊れました。
今まで私は「黒」に対していい感情をもっていなかったと思います。偏見はよくないと思っていても、一族に伝わる文献などを読み、その悪逆非道さを知っていたからです。
それでも今私が見ているこの光景は今まで私の中での価値観を壊してしまうものだったのです。
あの「黒」を纏い、服まで「黒」でとても綺麗な、綺麗な人でした。顔の造形は神が手掛けたとしかいいようがないほどの絶世の美女でした。穏やかな雰囲気で目の前にいる大型の狼を優しい目で見ています。
この時私はこう思っていたのです。黒い女性の視界に入りたいと。思わず一歩踏み出してしまいました。
その音だけで気付かれたのでしょうか。黒い女性が纏う空気が変わり。王者の・・・覇者としての威圧感を出しておりました。大型の狼もいつの間にか黒い女性を守護するようにこちらを威嚇していました。私はどうしていいのかわからずおろおろするしかありませんでした。
それを見て私など敵にもならないと判断したのか黒い女性は狼をなだめてくれました。
そして私は思い切って話しかける事にしました。
「あの・・・貴女様はここに住んでいる人なのですか?」
「・・・・・いや、ここには今日来たばかりだ」
今日ここへ?・・・まさかあの4人組の? いえですがあれか男の人だったはずです。今目の前にいる人はどうみても女性ですし。声は多少ハスキーですが・・・
仕方がありません。確認するための私の「龍眼」を使うしかありませんね。
私の一族は当代の巫女へ「龍眼」を継承していくのです。継承された人は左目が銀色に変わってしまいますがその力は強大で様々な力を使えるようになるのです。
例えば、相手の目を正面から見れば相手の過去を知ることのできる「過去眼」、未来を垣間見る「未来眼」他にもありますが今は割合しますわ。
「すみません。貴女のお顔を近くで見せてもらってもよろしいでしょうか?」
黒い女性はこちらを探るように私を見ました。私は大丈夫でしょうか?と思いつつ一歩前にでました。
「近寄るな」
ものすごい殺気でした。多少の耐性がないものは気が狂ってしまうほどの。
「っ!・・・申し訳ありません。ですが私は貴女の敵ではありません。どうか信じて下さいませ」
どうか、どうかお願いします。私は貴女の敵ではありません! と私は一心に祈っていました。
すると願いが通じたのか、狼さんが黒い女性の裾をひっぱりこちらへ歩み寄ってきました。
黒い女性はそれに逆らう事なく、困ったような顔をしていました。
「・・・・・好きにしろ」
「ありがとうございます。では・・・」
許して下さいました! 黒い女性の気が変わらない内にと思い足早に近寄り、綺麗な顔へ手を伸ばし頬に手を添え、綺麗な「黒」い瞳を見ました・・・・・
「過去眼」を使用し、私はすごく後悔しました。この美しすぎる男性は過去を封印したいほど忌み嫌っているのか断片的なモノしか視る事はできませんでしたが、とても哀しい人生を歩んでいました。それでも優しさを持ってここまで来てくれた事に、私はこの黒い男性のお友達へ感謝しました。
「貴方の目はとても哀しい色を宿していますね。でもそれ以上に深い優しさを持っていますね。」
「ふふふっ、とても仲良しなんですね?」
狼さんもそう思っているのか黒い男性へじゃれております。
「羨ましいですわ。ですが焼けちゃいそうです。貴方のような美しい方が殿方なんて。始めは女性かと思っていましたわ。」
ふふふっ、この世の女性よりも美しいのですし、感情が表情にでないのようですしこれくらいは許して下さいね?
「それに、そんな美しい黒い髪と黒い目を持った方は初めてですわ。」
困惑していますわね。
「それでは、また明日会いましょう。シャル君にサフィちゃん」
それではまた明日お会いしましょうね。気高い心を奥底に持った「黒」き御方と深い愛情を持つ「白」きお嬢さん。
くぅーん
あら、シャルは渡さないですって。大丈夫ですわ。私のタイプじゃありませんので。
安心してくださいな。可愛いお姫様。
話がすすまねえええええ