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第ニ話「キスを回避したいけど奴隷にもなりたくね」その三

七月七日


 土砂降りの雨。傘を忘れ玄関前で途方に暮れる。

 七夕用に外へ飾られている笹も全滅。短冊も落ちてぐちょぐちょになっていた。

 傘置き場にある物を勝手に拝借するのもなんだし、濡れる覚悟を決めるか。委員長に見つかる前に——


「あらら、傘忘れてきたの?」

「くっ委員長……」


 日課の約束すっぽかして下校しようとしたが拿捕された。


「相変わらずズボラよね。天気予報ぐらいチェックしなさいよ。私から逃げられるわけないじゃない。ばーか」

「うるさいな。こんなのダッシュで帰ればなんとかなる」

「あんた怪我の後遺症でまともに走れないでしょ。ふふん、ならさ良かったら私の傘で一緒に帰る?」

「くっ、何が目的だ。ノルマのキスならしなくていいぞ」

「それじゃ駄目。そうだ……今日はあんたが私にキスしなさい——待て待て、無言で帰ろうとすんな!」

「苦しいから馬鹿力で襟つかむな熊さん」

「誰がテディベアやねん!」


 言ってねー。


「とにかくキスは拒否する。陰キャラぼっちには難易度が高すぎる」

「ふーん。散々私はしたのにあんたは拒絶するんだ? キス」

「すまん。覚悟がまだ出来ない」


 委員長はイジワルそうに微笑む。とはいえ自分が撒いた結果だから言い返せなかった。まだこの土砂降りの中ダッシュして帰宅した方がマシ。


「なら腹をくくるまで待つよ」

「この悪魔め……詰んだなこりゃ」

「ふふふ、でも早くしてね。玄関先じゃ私も濡れるからさ。井伊のせいで一緒に風邪ひいたら教室内で余計な憶測が生まれるでしょ」


 最悪クラスの男共にシメられる。それでなくても俺以外誰にでも優しい委員長はモテない野郎共のオアシス。信者が多いんだ。デマでも校内でひと騒動が起きるレベル。


「仕方ないか。いつもしてくれているからな」

「よろしい。交渉成立なり」


 俺は格好つけてお姫様へ騎士のように傅き細い手の甲へ接吻した。

 委員長へ感想聞くと、きしょいの一言で終わる。でも折角の相合傘はいつの間にか雨がやみご破算。

 夕陽が紅く委員長を照らしていた。やっぱ私も短冊に願い事を書こうかなっと呟く。

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