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骨への帰還と大陸規模の隔離(クアランティン)

塩、ヨウ素、そして石化した神の肉の匂いが、これほど安らぎを与えてくれると感じたことはなかった。


ドレッドノート・トラックがオルガン山脈の最後のカーブを下りきると、夜明けの光がグアナバラ湾を照らし出した。そこにあった。レヴィアタニア。死骸の大陸カルカッサだ。


起源ジェネシス』の無菌で対称的な悪夢と、内陸部の錆と粘土の群れを経験した後では、骨と蒸気とヨーロッパの水晶でできた俺たちの街は、忌まわしき者たちの楽園のように思えた。


ヴァレリアは数日ぶりに肩の力を抜き、ため息をついた。トラックは見るも無惨な状態だった。前面装甲は屍食いハキリアリの酸で溶け、左側面は粉々に砕け、エーテル・エンジンはヘビースモーカーのように咳き込んでいた。


「このゴミの山を見て、これほど嬉しいと思ったことはないね」彼女はそう言いながら、大陸と島を繋ぐ黒水晶の橋へとトラックを導いた。


橋を渡る。ファンファーレによる歓迎ではなく、俺たちが二度と戻らないのではないかと恐れていた歩哨たちの、緊張の入り混じった安堵の出迎えだった。


俺たちが不在の間に、街は変化していた。地元の生存者たちと『脱出艦隊』の難民たちの融合が加速している。機能停止した反物質の板で補強された、鯨の骨の小屋が見えた。かつての『空洞ホロウ』――笛吹き男から解放されたヨーロッパの兵士たち――が両生類のミュータントと肩を並べて働き、水上居住区を温めるための蒸気パイプを設置していた。


【 熱帯性ネクロ・サイバーパンク 】は生き延び、脈打っていた。


リヴァイアサンの頭蓋骨の空っぽの眼窩にある、俺のクリニックの中庭にドレッドノートを停めた。


キャビンから降りると、重いブーツがすり減ったカルシウムを踏みしめた。黒水晶の腕が羽音を立て、怪物の死骸に残る残留マナを自動的に補給している。


「ヴェラス先生!」かつてヨーロッパの将校だった若者が、今は有機的な眼帯とレザージャケットを身につけ、クリップボードを持ってこちらへ走ってきた。「エーテルのレベルは安定し、今週の配給食の生産量は12%増加しました。さらに……」


「生産性レポートはキャンセルだ、中尉」俺は遮った。その声は肩の水晶よりも冷たかった。母親を失った痛みはまだ開いた傷口であり、純粋なアドレナリンと皮肉だけで辛うじて止血されている状態だった。「評議会を招集しろ。今すぐだ。ボイラー室でな」


30分後、俺たちは錆びた金属の戦術テーブルを囲んで集まっていた。


いまだに大鉈の緑色の血を拭いているグリッスル。タールのようなコーヒーを飲んでいるヴァレリア。心配そうな視線を俺に向けているルナ。そして街の派閥の代表者たち――ヨーロッパ艦隊のキャプテンと、『石油のセイレーン』カルトのリーダーだ。


「中心部の腫瘍は切除された」俺は単刀直入に始めた。テーブルに広げられたボロボロのブラジルの地図を指差す。「エリオ・ヴェラスは死んだ。ジェネシスは崩壊した。大陸の内陸部を人質に取っていたシステムは、多臓器不全に陥った」


安堵と驚きのざわめきが部屋に広がった。ヨーロッパのキャプテンが微笑む。


「それは、大陸の脅威が去ったということですね。内陸部へ向けて農業の拡大を始めることが……」


水晶の手をテーブルに叩きつけた。その鋭い音で、キャプテンは即座に黙り込んだ。


「俺の話を聞いていなかったのか。システムは『破綻』したんだ」


俺は一人一人の顔を見た。「体が死ねば、寄生虫と腐肉食動物が支配権を握る。ブラジル内陸部は今や、地球上で最大の晩餐会だ。そして、そのテーブルの主賓席に座っているのは『粘土の女王』だ」


ルナが身震いした。「狼サイズの巨大アリよ。あいつらの甲殻は弾丸を弾き返すし、吐き出す酸はウチのトラックの血の鋼鉄ブラッドスチールを数秒で溶かしたわ。それに、数百匹なんてもんじゃない。何百万匹もいるのよ」


グリッスルが床に唾を吐いた。「バイオマスや魔法なら何でも食いやがる。地獄の掃除機みたいにミナスジェライス州を掃討してるんだ。さて、南半球で一番デカい、魔法がたっぷり詰まった死肉の塊はどこだと思う?」


部屋が静まり返った。全員が下を、自分たちが踏みしめている骨の床を見た。


レヴィアタニアは単なる島ではない。石化した肉の山なのだ。


屍食いハキリアリにとって、俺たちは要塞都市ではない。巨大なウェディングケーキなのだ。


「奴らはこっちに向かっている」腕を組みながら断言した。「縄張りを持つ動物は境界線で止まるが、アリに縄張りはない。あるのは『兵站ロジスティクス』だけだ。ジェネシスの灰を片付け次第、奴らは南へ行軍してくる。先陣が海岸に到着するまで、2週間もないだろう」


「虫の大陸を相手に、どうやって戦うというのだ?」セイレーンのリーダーが、恐怖で黒い瞳を広げながら尋ねた。「艦隊の反物質兵器をすべて使っても、それほどの数を分解することはできんぞ」


「戦わない。隔離クアランティンを行う」バベルのコードの残滓で変数を計算しながら、左目が明滅した。「ヴァレリア、『最後の吐息』の反物質コアの状態はどうなっている?」


ヴァレリアは顔をしかめ、エンジニアとしての思考を俺の狂気と同調させた。


「巡洋艦のコアは安定してるけど、爆弾として使うなら、地球の半分を蒸発させずに起爆することはできないよ」


「爆弾は要らない。忌避バリアが欲しいんだ。防疫線コルドン・サニテールをな」


俺は地図に身を乗り出し、シエラ・ド・マール(海岸山脈)の麓に沿って架空の線を引いた。


「ハキリアリはバイオマスと魔法を食う。だが反物質は『存在』の対極にある。虚無バキュームだ。ヴァレリア、ヨーロッパ艦隊の兵器を解体し、俺たちと大陸を隔てる海峡沿いにエミッターを設置してくれ。黒い光のフェンスを作るんだ。もし粘土の女王が渡ろうとすれば、群れは虚無へと落ちる」


「可能だね」暗算をしながら、ヴァレリアはゆっくりと頷いた。「でも、数日でウチのエネルギー備蓄を食いつぶしちゃうよ」


「そのためのリヴァイアサンの脂肪じゃないか」グリッスルが自分の胸を叩いて笑った。「リアクターに動力を供給するために蒸気ボイラーを使うんだ。アリを遠ざけるために、自分たちが踏みしめてる床を燃やすのさ」


大虐殺を予期して、俺の中の寄生体が身震いした。


【 防衛プロトコル:絶対包囲 】

頂点種エイペックスは自身の巣を防衛する 】


「もう一つある」俺はルナを見た。「粘土の女王はフェロモンと地震の振動で群れを操っている。有機的な指揮統制システムだ。ルナ、君には女王の周波数を突き止めてもらう必要がある。彼女の通信を妨害できれば、群れは崩壊し、混乱の中で共食いを始めるはずだ」


ルナは杖を握りしめ、生唾を飲み込んだ。「やってみるわ。でも、彼女の声は……山が軋むような音なの。ビルくらいの大きさの増幅器アンプが必要になるわよ」


「君には海軍の全艦隊と、海の神の骨格が自由にある」俺は彼女に言った。「必要なものは何でも作れ」


姿勢を正し、評議会と向き合った。疲労は骨に食い込む錨のようだったが、目を閉じている暇はない。親父は俺に、残酷な最後の教訓を教えてくれたのだ。進化は決して眠らないと。


「街の準備をしろ。橋を補強しろ。リヴァイアサンの死骸から誰も出すな。外の世界はたった今、感染した手術室と化した」


「大陸規模の隔離クアランティンへようこそ、諸君。診察の始まりだ」


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