遺伝子制御室と第零号患者(ペイシェント・ゼロ)
高さ100メートルの脊髄をよじ登るなんていう訓練は、医学部では教わらない。リヴァイアサンの脳脊髄液――あるいはこの塔に栄養を供給している何らかの液体――が、呼吸をするたびに俺の肺を焼いた。人間である右手は皮が剥け、血を流していた。一方、黒水晶の左手は、痛みとは無縁の機械のような冷たさで、巨大な骨に突き刺さっていた。
ついに上部の弁――縦穴と上の階を隔てる筋肉の括約筋――に辿り着いたとき、俺は繊細さなどに時間を割かなかった。ミスリルのメスで青白い肉を切り裂くと、オゾンの匂いがする温かい羊水のシャワーが俺の上に降り注いだ。
その裂け目から体を引き上げ、俺は「遺伝子制御室」の床に膝をついた。
血まみれの液体を白衣から滴らせながら、ゆっくりと立ち上がる。左目が明滅し、デジタル・インターフェースがこの場所の異様な建築構造を処理しようとしていた。
この部屋は、都市『起源』の脳だった。キーボードやガラスの画面はない。壁は半透明の膜であり、神経の電気インパルスを介して生体認証のグラフを投影している。太い動脈が、床からドーム型の天井へと純粋なマナを送り込んでいた。
そして、巨大な有機的な窓のそばに立ち、俺のチームが外で起こしている火災を見下ろしているのが、俺の父親だった。エリオ・ヴェラス。
彼にパニックを起こしている様子はなかった。両手を後ろで組み、白いスーツは依然として汚れ一つない。
「お前の友人たちは随分と騒々しいな、アーサー」彼は振り返らずに言った。「温室での13年間に及ぶ慎重な交雑作業を台無しにしている。バイオマスの無駄遣いだよ」
「定期的な剪定だと思ってくれ」俺は答えた。広々とした空間に、冷たく金属的な声が響く。「さっき、下の階でアンタの下水道を掃除してきたところだ。アンタの『失敗作たち』がよろしくと言っていたぞ」
エリオが振り返った。父親のような微笑みは消え去り、分析的な苛立ちに取って代わられていた。
「欠陥品のクローンは必要だったのだ。進化には犠牲が伴う。他の誰でもない、お前ならそれを理解できるはずだ。ここまで来るのに、いくつの怪物を解剖してきた? リオデジャネイロにあるあのガラクタの島を救うために、何人の人間を見殺しにしてきたのだ?」
「俺は生き残るために殺す。生態系のおままごとをするためじゃない」俺は彼にメスを向けた。水晶の腕が致死的なエネルギーで羽音を立てる。「もう終わりだ。笛吹き男は死んだ。そしてアンタは、次に排除されるべきシステム・エラーだ」
エリオはため息をつき、ゆっくりと部屋の中央へ歩み寄った。
そこには、すぐには気づかなかった構造物があった。下の階にあったチューブとは異なる、巨大な繭だ。安物の膜でできているわけではない。純粋な黒水晶の根と、鮮やかな赤の動脈が絡み合って編まれていた。それは巨大な心臓のように脈打ち、都市全体に栄養を供給している。
「自分自身が最高傑作だと思っているのか、アーサー?」エリオは繭の表面を撫でた。「ロット42。初の可動性を持った成功例。人間と貪食者の完璧なハイブリッド」
「だが、システムには『錨』が必要なのだ。あの愚かなサイラス・ヴィレラの用語を借りるなら、中央サーバーとでも言おうか。誰かが大地のエネルギーを処理し、庭師たちや植物、肉の城壁に栄養を与えなければならなかった」
俺の中の寄生体が激しく収縮した。
怒りではない。服従だ。アルファ捕食者、あるいは母体に対する本能的な反応。
【 接近アラート。母体。源。検知しました 】
「その中には何がいる?」喉の奥に塊ができるのを感じながら、俺は尋ねた。臨床医としての冷静な態度が揺らぎ始める。
「起源計画の『第零号患者』だよ」エリオは微笑んだ。その目は敬虔な狂信で輝いている。「古いことわざを知っているだろう? 偉大な男の後ろには……常に強固な土台があるものだとな」
彼は手のひらを繭に押し当てた。
水晶の根が後退する。膜が中央から静かに裂け、冷たい蒸気と白い胞子の霧を放出した。
内部の姿は、脊椎や肺に直接入り込む何百ものチューブによって吊るされていた。
怪物ではなかった。一人の女性だった。
人間としての身体は腰から上が完璧に保存されており、青白く半透明の皮膚をしていた。腰から下は塔の生物学的コアと融合し、根やケーブルが彼女を永遠の静的な苦痛の中に縛り付けている。彼女の目は開いていたが、白濁し、虚ろだった。
メスが右手から滑り落ち、虚ろな音を立てて床に落ちた。
息が詰まるのを感じた。
ヘレナ・ヴェラス。俺の母親だった。
俺が12歳の時、謎の病気で「死ぬ」のを見た女性。エリオがその異常な研究を始める動機となった、あの同じ病気。
「アンタ……母さんを、死なせなかったのか……」俺の声は、引き裂かれた囁きのように漏れた。
「死ぬだと? 死とは設計ミス(デザイン・エラー)なのだよ!」エリオは自身の残虐行為に魅了されたように叫んだ。「癌が彼女を殺しつつあった。私は彼女に治療法を提示したのだ。最初の寄生体、『アルファ貪食者』を彼女に移植した。彼女は拒絶反応を示さなかったが、その身体は可動性に耐えられないほど弱かった。だから、私は彼女を新しい世界の『土台』に変えたのだ」
「彼女は痛みを感じているのではない、アーサー。彼女は『すべて』を感じているのだ。彼女は一本一本の木であり、すべての庭師であり、エデンの1ミリメートル単位のすべてなのだ。彼女は女神なのだよ」
母親の動かない顔を見た。青い血の混じった太く一筋の涙が、その青白い頬を伝い落ちた。
彼女はそこにいた。何十年もの間、自分自身の身体に幽閉され、サイコパスの生物学的なバッテリーとして使われ続けていたのだ。
ショックが引いた。
ショックは、はるかに暗い何かへと道を譲った。恐ろしいほどの明鏡止水。『バベルのコード』がシナプスにまだ潜伏したまま、寄生体の混沌とした怒りと混ざり合う。
「アンタは、俺の母親を発電機に変えた」俺は顔を上げた。左のサイバネティックな目が完全に真っ黒に染まる。「アンタは、俺の家族を『病気』に変えたんだ」
エリオはため息をつき、白いスーツのボタンを外した。
「お前は小さいな、アーサー。人間すぎる。進化の美しさを理解できないというのなら、お前の遺伝物質はリサイクルさせてもらう。ロット43を作るとしよう」
彼の白いスーツが背中から裂けた。
グロテスクなコウモリの翼も、触手も生えてこなかった。エリオ・ヴェラスの共生は、寄生体が常に追い求めていた「完璧」そのものだった。
彼の皮膚は生物学的な磁器の甲殻へと硬化し、液体黄金の静脈が埋め込まれた。前腕からは4本の純白の骨の刃が突き出し、その両目は純粋なマナの炎と化した。
彼は沼地の怪物ではない。洗練された、優雅な破壊の存在だった。『頂点』だ。
「来なさい、我が息子よ」エネルギーを帯びたエリオの声が部屋に反響した。「外のゴミどもから何を学んだのか、見せてもらおう」
俺は答えなかった。黒水晶の腕が、耳障りな周波数で唸り声を上げる。
前へと歩み出た。人類の生存のためではない。外にいるチームのためでもない。
俺自身の母親の「安楽死」のために。
創造主との最終決戦が、幕を開けた。




