戦場の内視鏡と内なる海
「中にいる」という概念は相対的だ。
部屋に入れば、四つの壁の中にいることになる。リヴァイアサンに入れば、新しい地理の中にいることになる。
ドレッドノートは怪物の巨大なエラに向かって突進した。
怪物の「首」の側面にある垂直の裂け目は、一つ一つがサッカースタジアムほどの大きさがあり、リズミカルに開閉している。
吸引流があまりに強力で、ヴァレリアは加速する必要がなかった。逆に、《鰓弓》――クジラや船をプランクトンのように濾過する巨大な櫛状の骨格――に激突しないよう、ブレーキをかける必要があったほどだ。
「捕まって!」
操縦桿と格闘しながらヴァレリアが叫んだ。
「フィルターを抜けるよ!」
トラックが乱気流の中で回転する。
摩天楼サイズの骨の歯をかすめて通過した。金属が削られる音が響く。ギギギギギッ!
俺が生成したキチン質の装甲は持ち堪えたが、ヒビが入った。
そして、通過した。
外洋の光が消えた。
エーテルのヘッドライトを点灯する。
光のビームが《内なる世界》を照らし出した。
通常の動物の食道のような、赤く湿ったチューブではなかった。
広大な生物発光の洞窟であり、有毒な霧が充満し、天井と床の半透明な水路を青い血液の「川」が流れている。
車ほどの大きさがある小型の寄生虫が肉の壁を這い回り、ゴミを掃除していた。
【 環境分析:内部大気は強酸性 】
【 巨視的抗体の存在を検知 】
「血管の中ですか?」
ルナが窓の外を魅了と嫌悪の入り混じった目で見ながら聞いた。
「いいや」
俺はバイオスキャナーを確認して答えた。
「リンパ系だ。体の下水道システムだよ。もし主要動脈に入っていたら、血圧でトラックは瞬時に押し潰されていただろう」
「ヴァレリア、リンパの流れに従え。それが《中央結節》、つまり心臓へ直結しているはずだ」
ドレッドノートは黄色い粘液の川を航行した。
「地面」は柔らかく、脈動している。
突然、ルナのレーダーが警告音を鳴らした。
「動体反応! 壁から白いものが来ます!」
《巨大白血球》だ。
ホッキョクグマほどの大きさがある、不定形でゼラチン質の白い細胞が、組織から剥がれ落ちて異物(俺たち)を攻撃しに来たのだ。
目はない。ただ金属を飲み込み溶解しようとする仮足があるだけだ。
「免疫系が作動した!」
グリッスルが叫び、ハープーン砲塔(今は密閉され、遠隔操作されている)へ上がった。
「薬の時間だよ、ブサイク!」
グリッスルが発射した。骨のハープーンが最初の白血球を貫く。クリーチャーは酸で満たされたシャボン玉のように破裂した。
だが何百体もいた。奴らはトラックに群がり、窓を腐食性のゼリーで覆い尽くそうとする。
「ヴァレリア!」
俺は叫んだ。
「ヒートショック(熱衝撃)だ! セラフィムの冷却システムを使え!」
ヴァレリアがパネルの赤いボタンを押した。
トラックのボディにある噴射ノズルから液体窒素(盗んだ生命維持装置の副産物だ)が発射された。
車両周辺の温度が一瞬でマイナス100℃まで低下する。
白血球は凍結し、砕け散り、肉の雹となってトラックから落ちた。
「洗浄完了!」
ヴァレリアが加速した。
「でも窒素はあと十分で切れるよ!」
さらに深く進む。
リンパ管が開け、巨大な空間に出た。
心臓だ。
心臓ではなかった。《テラフォーミング工場》だった。
中央の臓器は強烈な紫色の光で脈動していた。単に血液を送り出しているのではない。汚染されたマナを外の海へポンプで送り出しているのだ。
心臓には数十個の透明な「卵」――妊娠中のリヴァイアサンのクローン――が接続されていた。
そして心臓を守るように、内部の虚空に浮かんでいたのは、《意志の核》だった。
家一軒分ほどの大きさがある黒真珠が、猛烈な勢いで回転している。
それは重力バリアを放出し、いかなるものも生命維持器官に触れさせないようにしていた。
「あそこだ!」
俺は指差した。
「黒真珠。あれが奴の分散型脳だ。あれを破壊すれば、リヴァイアサンは脳死し、体は崩壊する」
「どうやって?」
ルナが聞いた。
「あの重力バリアは近づくものすべてを押し潰しますよ。ハープーンさえ通りません」
「物質は通らないな」
俺は同意し、シートベルトを外した。
「だが概念なら通る」
「アマゾンでやったことを覚えているか? 神の炎を使って飢餓を焼いた」
「ここでは、奴自身の生物学を奴に対して使う」
俺はトラック後部の減圧室へ向かった。
「アーサー! 何をする気だい!?」
ヴァレリアが叫んだ。
「外に出る」
俺は静かに言った。
「俺自身の寄生体を真珠に注入する」
「俺の共生体は《適応型捕食者》だ。もし真珠に触れれば、こいつは真珠を食おうとする。そして真珠はこいつを食おうとする」
「生物学的パラドックスを作り出すんだよ。『無限の癌』だ」
「どちらがどちらを食うか決定しようとして、奴のシステムは崩壊する」
「死ぬよ! 外の圧力であんたはペーストになっちまう!」
寄生体が俺の全身を覆った。単なる鎧ではない。高密度の黒いキチン質による完全密閉の繭だ。目は覆われ、口は封じられた。俺は生きた黒曜石の像となった。
【 完全露出モード:起動 】
【 生存推定時間:3分 】
「ハッチを開けろ」
無線越しの俺の声はこもっていた。
「そして逃げる準備をしろ。真珠が割れたら、こいつは史上最悪の痙攣を起こすぞ」
ハッチが開いた。
圧力が神の拳のように俺を打った。
俺は心臓室の酸性真空に放り出された。
黒真珠に向かって漂う。
重力が俺を押し潰そうとする。鎧の中で骨がきしむのを感じた。寄生体が痛みに絶叫し、重力が破壊するよりも速く組織を再生しようとする。
治癒。破壊。治癒。破壊。
バリアに到達した。
手を伸ばす。
黒真珠は目の前で回転し、千頭の死んだクジラの声で唸っていた。
『オマエハ……ココニ……ゾクサナイ……』
『俺はお前の遺伝子コードのエラーだよ』
俺は思考した。
真珠の表面に触れる。
寄生体を解放した。
爆発はなかった。伝染があった。
黒い静脈が俺の手から伸び、水に落ちたインクのように、真珠の滑らかで完璧な表面に広がっていった。
真珠が回転を止めた。
紫の光が揺らぎ、灰色に変わる。
リヴァイアサンのシステムがパニックに陥った。
【 エラー。エラー。自己免疫不全 】
真珠は加速的な速度で腐敗し始めた。俺が注入した魔法の癌は指数関数的に増殖し、重力を維持していたマナを食い尽くしていく。
バリアが落ちた。
心臓が露出した。
「今だ、ヴァレリア!」
意識が遠のくのを感じながら、俺は無線で叫んだ。
「魚雷だ!」
ドレッドノートが旋回した。後部が露出した心臓に向けられる。
ヴァレリアが精製エーテル燃料タンク(ペトロポリスから盗んだものだ)を射出した。
グリッスルがハープーンを発射し、タンクをミサイルのように押し出した。
タンクはかつてバリアがあった空間を飛翔した。
脈動する心臓に直撃する。
ズドォォォン。
炎の爆発ではない。壊死の爆発だ。
エーテルがリヴァイアサンの血液と反応した。心臓は瞬時に石化し、死んだ石へと変わった。
リヴァイアサンが絶叫した。
音はすべての肉の壁から響いた。世界全体が震えた。
部屋が崩壊を始めた。
衝撃波で俺は吹き飛ばされた。
トラックがどこにあるのかわからなくなった。
暗闇の中を漂っている。スーツが機能を停止し、酸が入り込み始めている。
『これまでか……』
俺は思った。
突然、機械のアームが俺を掴んだ。
ドレッドノートが横を通り過ぎ、サイドドアが開いていた。グリッスルがルナに支えられながら身を乗り出し、俺をゴミ袋のように中に引きずり込んだ。
「出口だ!」
落ちてくる有機的な瓦礫の間でトラックを操縦しながら、ヴァレリアが叫んだ。
「排出括約筋が閉じるよ!」
「出口?」
キャビンの床に倒れ込みながら俺は呟いた。
「どこからだ?」
「こいつが死ぬ時に出る唯一の場所さ!」
グリッスルが引きつった笑いを浮かべた。
「腸からだよ!」
ドレッドノートは心臓の下にある暗く悪臭を放つトンネルへと急降下した。
俺たちは消化管の終わりにある光(あるいは光であってほしいと願うもの)に向かって加速した。
リヴァイアサンは死にかけていた。そして俺たちは……排泄されようとしていた。




