鋼鉄の天使たちの降下
水晶宮は包囲戦に耐えるようには作られていない。ガラスとは、その定義上、壊れるからこそ美しいのだ。
「燃料を持ってここから出られると思うな!」
カレイドスコープ大公が叫んだ。彼は鉄の柱の陰に隠れ、衛兵たちが俺たちのトラックに発砲していた。
蒸気マスケット銃の弾丸が、ドレッドノートのミスリルとキチン質の装甲に当たって跳弾する。音は耳をつんざくようで、金属の雹が降っているかのようだ。
俺はまだ中央のプラットフォームにおり、手は皇帝の脳が入った瓶の上に置かれていた。
「最後のチャンスだ、大公!」
俺は叫んだ。
「ゲートを開けて、工場の難民を連れて行かせろ。さもなくば皇帝陛下をインペリアル・オムレツに変えるぞ!」
大公は躊躇した。彼は瓶詰めの神を見、次に俺の戦争用トラックを見た。
だが彼が答える前に、頭上のガラス天井が爆発した。
弾丸ではない。天使たちだ。
三つの人影が空から降下し、鋼鉄と加圧キャンバスの翼で構造物を粉砕した。《蒸気セラフィム》だ。火炎放射器と回転鋸を足に装備した、エリート飛行オートマトンである。
『近衛隊は寄生虫とは交渉しない!』
天使のリーダーが宣言した。声はトランペット型のスピーカーから出ていた。
彼が俺に向かって急降下した。
「アーサー! 跳んで!」
運転席からヴァレリアが叫んだ。
俺は皇帝の脳を放し(純粋な外科的悪意から、《壊死性アドレナリン》を微量注入しておいた。これで彼は向こう十年間、明晰な悪夢を見ることになる)、走った。
セラフィムの鋸が黄金の玉座を真っ二つにするのと同時に、プラットフォームから飛び降りる。
ドレッドノートの屋根に着地した。ハッチが開き、グリッスルが俺を中に引きずり込む。
「ずらかるよ! キッチンが火事だ!」
「ヴァレリア! 北の壁をぶち破れ!」
俺は助手席に滑り込みながら命じた。
ドレッドノートが咆哮した。宮殿の備蓄から盗んだ《精製エーテル》を燃料とするV12エンジンは、山をも動かすパワーを持っていた。
トラックが加速する。戦車の履帯が大理石の床を粉砕する。
ガシャアアアン!
俺たちは宮殿の奥の壁を突き破り、皇居の庭園へと飛び出した。
外では、グリッスルの革命が完全なるカオス状態にあった。
何百人もの骸骨のように痩せた労働者と食肉工場の難民たちが、盗んだ貨物トラックや蒸気荷車に乗り込んでいる。
「黒い戦車に続け!」
グリッスルが無線で咆哮し、即席の船団の指揮を執った。
「遅れた奴はハムにされるよ!」
コンボイは石畳の通りを疾走し、ガス灯やベンチをなぎ倒して進んだ。
背後では大聖堂の鐘が総員警報を鳴らしている。
そして空には、五十体の蒸気セラフィムの群れが形成され、真鍮のイナゴのように月を覆い隠していた。
ペトロポリスの山下りは、その急カーブと致死的な断崖で有名だ。
それを夜間に、時速120キロで、戦車を操縦し、空飛ぶロボットに追われながら行うことは、その体験を別の次元へと引き上げていた。
「六時の方角に爆撃機!」
ルナが音響レーダーをモニターして叫んだ。
「爆雷を落としてきます!」
爆発が背後の道路を揺さぶった。難民のトラックが一台被弾し、カーブで横転して部品と人を撒き散らした。
グリッスルが「被保護者」たちが死ぬのを見て唸った。
「ヴァレリア、ハープーン砲だ!」
俺は叫んだ。
「ルナ、翼のジャイロスコープを狙え!」
俺は手動砲塔へと上がった。
風が顔を切る。火薬とオゾンの臭いが強い。
二連装ハープーン(ヒドラの骨で作った鏃に改造済みだ)を群れに向ける。
一体のセラフィムが急降下し、過熱蒸気を噴射してきた。
『死ね、異端者!』
「診断:内圧過多!」
発射。
ハープーンが鋼鉄の鎖を引きずりながら飛翔した。
セラフィムの胸を直撃し、メインボイラーを貫通する。
ロボットは青い火の玉となって爆発した。
俺は鎖を引き戻し、ロボットの残骸をフレイル(モーニングスター)のように使い、空中で振り回して後続の二体の天使を叩き落とした。
「ストライク!」
俺は歓声を上げ、再装填した。
だが数が多すぎる。
そしてコンボイの先頭、奈落の上に吊り下げられたU字カーブで道を塞いでいたのは、カレイドスコープ大公だった。
徒歩ではない。
彼は《青銅の巨像》を操縦していた。高さ五メートルの戦闘用メカが道を塞いでいる。ロボットは巨大な空気圧ハンマーを持っていた。
『道はここまでだ!』
大公が増幅された声で告げた。
『エーテルを渡して飛び降りろ!』
ヴァレリアは減速しなかった。
「アーサー! ブレーキは三つ前のカーブで壊れたよ! あれにぶつかったら、崖下に真っ逆さまだ!」
「止まるな!」
俺は叫んだ。
「グリッスル、砲塔を頼む! ルナ、前へ来い!」
キャビンに戻る。
「コロッサスは蒸気駆動だ。蒸気にはバルブが必要だ」
「ルナ、《水晶共鳴周波数》を使ってくれ」
「でもあれは青銅ですよ!」
ルナが抗議した。
「レンズだ!」
俺は指差した。
「大公は光学マニアだ。コクピットは照準をつけるために強化ガラスで作られている。ガラスを割れば、気圧差で奴は死ぬ」
ドレッドノートが金属の悪魔のように咆哮して突進した。
コロッサスがハンマーを振り上げ、俺たちを押し潰そうとする。
「今だ、ルナ! 人生で一番高い音を歌え!」
ルナが深く息を吸った。彼女はトラックの音響システムのマイクを握った。
彼女が高音を放った。
人間のものではない。黙示録のセイレーンの声だ。
キィィィィィィィィィィィン!!!
音波がコロッサスを打った。
青銅が振動する。だがガラスは……。
レンズと鏡で満たされた大公のコクピットのドームは耐えられなかった。
パリーン。
キャビンが外に向かって爆散した。
自分自身のレンズの破片で目をくらませられ、大公が叫んだ。急激な減圧が彼を座席から外へと吸い出す。
「ヴァレリア! 衝角だ!」
俺は命じた。
ヴァレリアが魔法ニトロを起動した。
ドレッドノートがバランスを崩したコロッサスの脚に激突した。
衝撃は残忍だった。金属が金属を引き裂く。
巨大ロボットが後ろに倒れ……崖へと落ちていった。
大公とその機械が、下のアトランティック・フォレスト(大西洋岸森林)の闇へと数百メートル落下していくのが見えた。
道は開いた。
難民のコンボイはロボットの脚の残骸を乗り越え、下りを続けた。
残ったセラフィムたちは、リーダーが落ちるのを見て、さらにグリッスルの対空砲火に直面し、雲の中へと撤退していった。
太陽が昇り始めた頃、俺たちは山麓に到着した。
景色が変わった。冷たい霧は去った。空気は再び熱く、塩辛くなった。
海抜ゼロメートルに戻ったのだ。いや、リヴァイアサン・レベルと言うべきか。
ヴァレリアが放棄された展望台にトラックを停めた。エンジンが冷えて音を立てている。
難民たちが車両から降り、汚れた地面にキスをして、「シルクハットの人食い人種」から逃れられたことを喜んでいた。
アーサー(寄生体)がついにリラックスした。
【 戦闘終了 】
【 資源獲得:精製エーテル(満タン) 】
【 新車両:実戦テスト合格 】
俺はトラックを降り、顔の油を拭った。
振り返って山を見る。ペトロポリスはまだ上で輝いていたが、今は火災の煙が見える。俺たちが後にした革命は、あの都市を永遠に変えるだろう。
「二百人は救ったね」
グリッスルが子供たちにレーション(王室の食料庫から盗んだ本物の食べ物だ)を配りながら言った。
「始まりとしては悪くないさ」
「メインイベントのための燃料も手に入れたよ」
ヴァレリアが焦げたドレッドノートの側面を叩いた。
「このエーテルは強力だ。調整すれば、トラックを陸上魚雷として使える」
「陸上じゃない」
俺は訂正し、かつてリオデジャネイロがあった水没した地平線を見た。
リヴァイアサンのシルエットがまだそこにあり、廃墟をパトロールしていた。
「リヴァイアサンは深海モンスターだ。深海の圧力に耐える甲羅を持っている。外から何を投げても貫通しない」
「デバウアーの王の時と同じことをやらなきゃならない。中から攻めるんだ」
「また飲み込まれたいんですか?」
ルナが信じられないという顔で聞いた。
「趣味になったんですか?」
「いいや。今回は飲み込まれない」
大公のオフィスから盗んだ地図を取り出した。君主制時代の古い地図で、山脈から海岸線まで続く採掘トンネルが記されている。
「下から攻撃する。海底から侵入し、奴の腹に穴を開けるんだ」
「逆帝王切開だね」
グリッスルが笑った。
「気に入ったよ」
「一時間休め」
俺は命じた。
「リオデジャネイロは落ちた。ペトロポリスは燃えた」
「残っているのは俺たちだけだ。そして俺は、自分よりデカいものから逃げるのにはもう飽きた」
太陽がドレッドノートを照らした。それは戦争の準備を整えた金属の甲虫のように見えた。




