缶詰肉の秘密
オークの空腹は、人間の空腹とは違う。
人間にとって空腹は警告だ。オークにとっては羅針盤だ。
アーサーが水晶宮で手術器具を準備し、ヴァレリアが新しいトラック(今は「山脈の弩級戦艦」と名付けられている)のシャシーに帝国ミスリルのプレートを溶接している間、あたいは帝都の石畳の通りを彷徨っていた。
霧はラベンダーと石炭の臭いがした。何かを隠すために作られた人工的な臭いだ。
あたいの鼻は香水を無視した。タンパク質を探していた。
だがペトロポリスには動物がいなかった。
野良犬も、鳩も、馬車を引く馬も見当たらない(すべて機械仕掛けだった)。
「食い物はどこだい?」
空のオイル缶を蹴飛ばしながら、あたいは自分自身に唸った。
ケーラー通りのエレガントなショーウィンドウの前で足を止めた。『帝国菓子店:生体機械エリートのための洗練された栄養』とある。
中ではケーキやタルトが輝いていた。だが小麦粉や砂糖の臭いはしない。
鉄の臭いがした。そして血漿の臭いだ。
機械化された貴族が店に入り、深紅色の「カップケーキ」を買った。
彼は齧る代わりに、青銅の首にあるハッチを開け、菓子を直接給餌チューブに挿入した。
吸引音と処理音が聞こえる。ガラスのヘルメットの中に浮かぶ彼の有機的な「脳」が、満足げに光った。
「味を楽しんでるんじゃないね」
あたいは気づいた。
「生物学的な部分を生かしておくために食ってるんだ」
臭いを辿った。
菓子店からではない。裏手からだ。蒸気パイプが地下へと続く暗い路地からだ。
錆びた金属のプレートがあった。『バイオマス・リサイクル処理セクター - 立入禁止』。
二体のサービス・オートマトンが重そうな黒い袋を貨物用エレベーターに運び込んでいた。袋の形が……間違っている。
ゴミじゃない。死体だ。
エレベーターが降りていく。
あたいはエレベーターを呼ばなかった。鋼鉄のケーブルに飛びつき、包丁を歯で咥えて闇の中へと滑り降りた。
ペトロポリスの地下はエレガントではなかった。工業的な屠殺場だった。
ここの熱気は窒息しそうだ。蒸気はラベンダーの臭いではない。銅と、排泄物と、恐怖の臭いがした。
金網のキャットウォークを歩き、眼下の生産ラインを観察する。
ベルトコンベアが「原材料」を運んでいた。
門番に拒絶された難民たちだ。通りを掃除するには老いすぎたロボトミー手術済みの使用人たちだ。政治犯たちだ。
彼らは裸で、薬漬けにされ、フックに吊るされていた。
プロセスに残虐性はなかった。あるのは効率だけだ。
丸鋸と粉砕機を備えたオートマトンが遺体を処理していく。
**血とマナ**:脳を維持するために貴族が使う「生命流体」を作るために抽出され、精製される。
**骨**:砕かれて、機械の体の磁器を作るために使われる。
**肉**:調理され、加工され、「タイプA栄養ペースト」として缶詰にされる。
**魂**:最も恐ろしい部分だ。工場の中心に巨大な炉があった。《魂のボイラー》だ。人間のエッセンスの「無用な」残滓がそこで燃やされ、都市を動かす蒸気を生成していた。
「豚の丸焼きかよ……」
あたいは吐き気を催しながら囁いた。
「人を食ってる。人を燃やして街灯をつけてやがる」
オートマトンが「新しい家畜」のグループを選別しているのが見えた。
その中に、人間の子供がいた。泥だらけの少女で、おそらく低地から来たのだろう。布の人形を抱きしめている。
ロボットの肉屋が少女の片足を持ち上げ、赤いレンズで分析した。
『純度レベル:85%。分類:皇帝の晩餐用珍味』
少女が泣き出した。ロボットが腕の丸鋸を起動する。
あたいの視界が赤くなった。
アーサーのような戦術的視覚じゃない。オークの《血の視覚》だ。
あたいらは怪物だ、確かに。生肉も食う。だがオークは無駄にしない。そしてオークは子供を殺さない。部族の掟だ。
あたいはケーブルを放し、十メートルの高さから飛び降りた。
肉屋ロボットの上に着地した。
衝撃で奴の青銅の頭蓋骨がひしゃげた。
刃が振り下ろされる。
シュパッ。
鋸の腕を切り落とす。少女に触れる寸前だった。
「キッチンは閉店だよ!」
あたいは咆哮した。
頭がなくても稼働し続けるロボットが、あたいを掴もうとした。
体を回転させ、包丁を奴の胸、内部ボイラーがある場所に突き立てる。
横に引き裂き、金属を裂く。高圧蒸気が爆発し、回路を蒸し焼きにした。
少女が床に落ち、震えている。
あたいは片腕で彼女を抱き上げ、背中に乗せた。
「しっかり捕まってな、チビ助。グリッスルおばさんがここから出してやるからね」
工場が停止した。
サイレンが鳴り響く。回転する赤色灯。
すべての側面のドアから、数十体の《蒸気センチュリオン》が現れた。四本の腕と赤熱した刃を持つ戦闘モデルだ。
『食肉セクターで汚染を検知!』
システムの声が響いた。
『侵入者を滅菌せよ!』
あたいは空いた手で床から肉屋のフックを拾った。右手に包丁、左手にフック。
笑みがこぼれた。
「やっとだね。礼儀正しすぎるのには退屈してたんだ」
あたいはポンコツ軍団に向かって突進した。
最初のセンチュリオンが突きを繰り出してきた。避け、奴の脚をフックで引っ掛け、引く。奴が倒れる。
包丁を首の継ぎ目に振り下ろす。クランチ。
「アーサー!」
無線に向かって叫びながら、別のロボットを肉挽き機の中に蹴り込んだ(詩的な皮肉だね)。
「アーサー、計画変更だ!」
「こいつらの『飯』は人間だよ! 燃料は魂だ!」
「そしてあたいは今、地下で反乱を始めたところさ!」
地上、水晶宮にて。
アーサーはメスを、露出した皇帝ドン・ペドロ三世の脳から数ミリのところで止めた。
グリッスルのメッセージが彼の耳元で弾けた。
アーサーは動かなかった。表情も変わらない。
中庭で新しいトラックのピストンを調整していたヴァレリアも聞いた。彼女は溶接の手を止めた。
皇帝を落ち着かせるために穏やかなメロディを歌っていたルナは、わざと音を外した。
手術を見守っていたカレイドスコープ大公が、雰囲気の変化を察知した。義眼のレンズが高速回転する。
「何か問題でも、ドクター? 手元が狂いましたか?」
アーサーは脈動する脳から視線を上げた。
彼は笑った。寄生体の冷たい笑みだ。
「いいえ、大公。診断が完了しただけです」
「皇帝は自然劣化に苦しんでいると思っていました。ですが、これは食中毒ですね」
「あなた方は彼に、蒸留された苦痛を与え続けている。それが大脳皮質に霊的毒素を蓄積させているんです。だから自分が誰かも忘れてしまう」
アーサーは指の間でメスを回した。
「治療には、劇的な食事療法の変更が必要です」
カレイドスコープ大公がフリントロック式のレーザーピストルを抜いた。
「気づかれましたか。残念です。あなた方は素晴らしい部品になったでしょうに」
「ヴァレリア!」
アーサーが叫んだ。
「ドレッドノートの準備は?」
『エンジンは慣らし運転もしてないけど、ハープーン砲は動くよ!』
ヴァレリアが無線で答えた。
「ならガラスの壁をぶち破れ!」
外から、戦車の履帯を装着したV12ディーゼル・マナ・エンジンの咆哮が聞こえた。
新しいトラック、黒と金の鋼鉄の怪物が加速した。
ガシャアアアン!
ドレッドノートが水晶宮の壁を突き破り、ダイヤモンドの雨のようにガラスの破片を撒き散らした。
トラックはドリフトしながら手術ホールの真ん中で停止し、砲塔が回転して大公に狙いを定めた。
「なっ……何だこれは!?」
大公が後ずさった。
アーサーはその隙を逃さなかった。
彼は大公を攻撃しなかった。共生体の手袋に覆われた手を、露出した皇帝の脳の上に直接置いたのだ。
「やめろ!」
大公が叫んだ。
「触れれば死んでしまう!」
「その通りだ」
アーサーは部屋に雪崩れ込んできた衛兵たちを見た。
「俺の指先に、この街の皇帝陛下という人質がいる」
「誰か一歩でも動けば、即席ロボトミー手術を行って、陛下をとても高価な文鎮に変えてやる」
皇帝(ロボットの体)が動こうとしたが、アーサーが脳を軽く圧迫した。体が麻痺する。
『ドクター……』
皇帝の声が震えた。
『恐怖を……感じている。百年ぶりに恐怖を感じているぞ』
「恐怖は生きている証拠だよ、ペドロ」
アーサーは囁いた。
「さて、交渉といこうか」
「グリッスルが下から『原材料』を連れてくる。アンタはゲートを開けるんだ。奴隷を解放しろ。そして備蓄している精製エーテルをすべて俺たちに渡せ」
「断れば?」
大公が聞いた。銃口はアーサーの頭に向けられている。
「この脳みそを握り潰す」
アーサーは割れたガラスのドームに額を押し当てた。
「ペトロポリスはその神を失う。そして神がいなければ……アンタらはただ錆びるのを待つスクラップだ」
遥か下で、床が揺れた。
グリッスルが貨物用エレベーターで上がってきていた。彼女一人ではない。工場の工具で武装した何百人もの「廃棄物」たちが、彼女に続いていた。
《缶詰肉革命》が始まったのだ。
「チクタク、大公」
アーサーは笑った。
「時計は進んでいるぞ」




