霧と歯車の宮廷
ペトロポリスは、世界の終わりの上に浮遊していた。
オルガン山脈の標高に守られた帝国の都市は、孤立を選んでいた。リオデジャネイロが泥と魔物に沈む中、「ペドロの都」は道路を封鎖し、錬鉄と蒸気の城壁を築き上げていた。
俺たちはキタンジーニャ宮殿のポルチコ(柱廊玄関)に到着した。
かつての巨大なノルマン様式のホテル・カジノは、今や壮大な正門の要塞として機能していた。窓は銅板で装甲されている。煙突からは濃密な白い煙が吐き出され、自然の霧と混ざり合い、恒久的なカモフラージュを作り出していた。
「止まれ!」
金属的な声が守衛所から轟いた。
二人の衛兵が霧の中から現れた。
彼らは人間ではなかった。《機械化独立竜騎兵》だ。
磨き上げられた青銅の鎧は高さ三メートルあり、歩くたびに油圧ピストンがシューシューと音を立てる。顔があるべき場所には換気グリルがあり、内部の炉のオレンジ色の光で輝いていた。
彼らが構えている槍は、実際には高圧蒸気ライフルだった。
「帝国の身分証明書、または通商許可証を提示せよ」
左側のオートマトンが要求した。声は胸にある蓄音機のダイアフラムから出ていた。
「湾からの難民だ」
俺は一歩前に出て、両手を挙げた(メスは隠したままだ)。
「リヴァイアサンに関する情報と、技術スキルを持っている」
「難民は禁止されている。《衛生令》により、引き潮による汚染者の入国は認められない」
オートマトンが槍を装填した。
「回れ右をして山で死ぬか、ここで焼却されるか選べ」
「愛想がいいねえ」
グリッスルが唸り、包丁の柄を握りしめた。
「ポンコツめ、イワシの缶詰みたいに開けてやるよ」
「待って」
ヴァレリアが進み出た。彼女は武器を見ていなかった。ロボットの「脚」を見ていた。
「左膝の継ぎ目から圧力が漏れてるよ」
オートマトンが止まった。
「診断:無関係」
「大ありさ」
ヴァレリアがベルトからモンキーレンチを取り出した。
「右側に重心をかけてバランスを取ってるだろ。あと五十歩も歩けばジャイロスコープがロックして、顔から地面に突っ込むことになるよ。寒さでシーリング(密封材)が乾いたんだろ?」
青銅の衛兵が躊躇した。蒸気が苛立ちの溜息のように大きく吹き出した。
「……メンテナンスが六ヶ月遅れている。主任技師が……体調不良でな」
「二分で直せるよ」
ヴァレリアが指でレンチを回した。
「代わりにゲートを開けな」
二体のゴーレムは顔を見合わせた(あるいは換気グリルを向け合った)。
「非標準プロトコル。サボタージュのリスクあり」
「リスクなら、勤務中に俺の脚がもげることの方が高い」
もう一人の衛兵が反論した。
「メカニックにやらせろ」
ヴァレリアが近づいた。素早く正確な動きで排気バルブを締め、シーリングペースト(俺たちのトラックの溶けたエンジンから削り取ったものだ)を塗り、圧力を再調整した。
シューという音が止まった。ロボットが膝を曲げる。静かで滑らかだ。
「効率:100%。動作良好」
ゴーレムは満足げだった。
「《公共益法》に基づき入国を許可する。蒸気の都へようこそ」
重い鉄の扉が、巨大な鎖に引かれて開いた。
ペトロポリスに入ることは、カルチャーショックだった。
下界では文明が終わっていた。ここでは、文明は進化するために退行していた。
石畳の通りは清潔だった。馬のいない馬車――コンパクトで静かな蒸気機関で動く――が、プラタナスの並木道を滑るように走っている。
市民たちはヴィクトリア朝のエレガンスで歩き、長いコート、シルクハット、クリノリンのドレスを身につけていた。だが全員が、革と真鍮で作られた装飾的なガスマスクを装着し、外の世界の「道徳的汚染」を濾過していた。
電気はなかった。照明は《精製エーテル》を燃やすガス灯だ。光は黄色く、揺らめき、温かみがあったが、長い影を落としていた。
「綺麗です」
終末の影響を受けていないように見える菓子店のショーウィンドウを見て、ルナが囁いた。
「夢みたい」
「悪夢もまた夢の一種だぞ、ルナ」
俺は美しさが隠している詳細に気づき、指摘した。
通りを掃除している使用人たちはマスクをしていなかった。金属の首輪をつけていた。そして彼らの動きは……反復的だった。
分析視覚を起動する。
【 対象:清掃員45番 】
【 診断:部分的ロボトミー。延髄に運動制御インプラントあり 】
「労働者階級を生物学的なゼンマイ人形に変えたんだ」
俺は呟いた。
「ここの貴族は統治してない。リモコン操作してるんだ」
テレサ通りに到着した。かつてはファッションの中心地だった場所だ。今は高級なパーツとスクラップの市場になっていた。
ヴァレリアは天国にいるようだった。外燃機関やミスリルのピストンを眺めている。
突然、サン・ペドロ・デ・アルカンタラ大聖堂の鐘が鳴った。
普通の鐘ではなかった。骨に響くような重低音の周波数で、寄生体が俺の肝臓に隠れるほどだった。
通りのすべての動きが止まった。
馬車が停止する。歩道の貴族たちが頭を下げる。
行列が大通りを下ってきた。
司祭ではない。《テクノ・プリースト(技術司祭)》だ。
金と銅の糸で刺繍された赤いローブを着ている。ラベンダーと焦げた油の蒸気を吐き出す香炉を振っている。
そして中央、反重力プラットフォーム(ソヴレニティの失われた技術を適応させたものだ)に浮遊していたのは、カレイドスコープ大公だった。
痩せた青白い男で、レンズと鏡で覆われたスーツを着ている。右目の代わりに、宝石商用の伸縮レンズが埋め込まれており、常に回転してズームしていた。
彼は分析的な軽蔑を持って市民を見下ろしていた。
プラットフォームが俺たちの前で止まった。大公がレンズを調整し、俺に焦点を合わせた。
「よそ者か」
彼の声は増幅され、古い紙のように乾いていた。
「塩の臭いがする。そして腐った血の臭いもな」
「俺たちは医師とエンジニアだ」
俺は姿勢を正して答えた。
「サービスを提供しに来た」
大公が笑った。スーツのレンズが回転し、俺の姿を様々な角度から反射する。
「医師だと? ペトロポリスに病気はない。肉体は脆弱だが、蒸気は純粋だ。我々は欠陥を歯車に置き換えたのだ」
彼が手を上げた。その手は機械だった。磁器の指と金の関節を持つ、時計細工の芸術品だ。
「時計仕掛けの皇帝陛下は布告された。『血を流すものはすべて非効率である』と」
「病気がないなら、なぜゲートのオートマトンは主任技師が『体調不良』だと言ったんだ?」
俺は挑発した。
大公の笑顔が揺らいだ。義眼のレンズが収縮する。
「不遜な」
彼がジェスチャーをした。四体の機械衛兵が俺たちを囲み、蒸気槍を頭に向けた。
「水晶宮へ連行しろ。彼らが交換部品として役立つか……あるいは王室ボイラーの燃料になるか、皇帝陛下がお決めになる」
俺たちは水晶宮へと護送(連行)された。
19世紀にフランスから輸入された鉄とガラスの構造物は、今や内部から脈動する光で輝いていた。
中には花も展示物もなかった。
《外科工房》があった。
大理石の手術台が円形に配置されている。天井から機械アームが降りており、鋸、ドリル、針を握っている。
中央、ゆっくりと回転する巨大な歯車で作られた玉座に、彼が座っていた。
ドン・ペドロ三世、時計仕掛けの皇帝。
彼は人間ではなかった。もはや。
彼は脳と心臓だった。高さ四メートルの、帝国のベルベットと勲章で飾られた巨大なロボットのボディの胸にある、ガラス瓶の中に浮遊していた。
体は真鍮の大聖堂だった。顔は不動の、無表情な金のマスクだ。
『父よ……』
皇帝の声は玉座の背にあるパイプオルガンの管から発せられた。多声的で、音楽的で、恐ろしい声だ。
『……彼らはエントロピーを連れてきた』
カレイドスコープ大公が跪いた。
「陛下。彼らは海岸からのスクラップです。リサイクルしましょうか?」
皇帝が金属の指を一本上げた。ラチェットが回転する音がガラスのホールに響く。
『否。白衣の男……彼には異常がある』
金の顔が俺を向いた。
『お前は共生体を宿している。進化するために消費する生命体だ。非効率的だ。生物学的だ。おぞましい』
「効率は主観的なものです、陛下」
俺は一歩前に出た。床の機械の振動を感じる。
「あなたの都市は美しい。だが静止しています。死なないために時間を止めた」
「だが下のりヴァイアサンは止まっていません。水が山を登ってきたとき……蒸気では海を止められませんよ」
『リヴァイアサンは肉だ。肉は腐る』
皇帝が身を乗り出した。
『我々は永遠だ』
「メンテナンスなしで永遠の機械などありません」
俺は彼の胸の瓶を指差した。脳を維持している液体が濁っていた。沈殿物がある。
「保存液が劣化していますね。記憶を失いつつあるんじゃないですか? 名前を忘れる? 日付を忘れる?」
「『主任技師』が消えたのは、脳を殺さずに液を交換する方法を知らなかったからでしょう」
水晶宮に沈黙が落ちた。大公は恐怖に震えていた。
痛いところを突いたのだ。皇帝は《機械的アルツハイマー》にかかっていた。
『お前に……液の交換ができるのか?』
皇帝の声が揺れ、歯車の噛み合わせが悪いような音がした。
「俺はバイオハッカーです。死んだ細胞を踊らせるカクテルを作るのが専門でね」
俺は笑った。
「山の花のマナと……俺自身の改造された血液を少し使って、新しい保存液を合成できますよ」
「あと五十年は明晰さを保てるでしょう」
『代償は?』
皇帝が聞いた。
「工房へのアクセス権。ヴァレリアがリヴァイアサンに対抗できる乗り物を作るためのパーツが必要です。それと、事態が悪化した場合のミナスジェライス山脈への安全な通行権」
時計仕掛けの皇帝は提案を処理した。玉座の歯車が猛烈に回転する。
『取引を承認する。だがもしプロセス中に記憶を一つでも失えば……お前の友人たちはアフタヌーンティー用の磁器人形に変えてやる』
彼は巨大な手を差し出した。
俺は冷たい金属を握り返した。
寄生体がシューッと音を立てた。
【 警告:皇帝は単なる機械ではない。地下ネットワークに接続されている 】
【 ペトロポリスの地下に何かが眠っている。蒸気を養っている何かが 】
知っていたさ。タダのものなんてない。この都市の地熱エネルギーはどこかから来ている。
だが今のところ、俺たちには屋根と、工房と、患者としての皇帝がいる。
「ヴァレリア」
俺はモンキーレンチを彼女に投げた。
「新しいトラックの設計を始めろ。スチームパンクの最高傑作を頼むぜ」
「ルナ、音響麻酔の準備だ。ブリキの神様を開腹するぞ」




