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緑のシナプスと骨の地下壕(バンカー)

森は呼吸しない。窒息させるのだ。


俺たちは二日間、徒歩で進んでいた。俺たちの忠実な戦車であった装甲トラックは、三キロ手前で放棄せざるを得なかった。ジャングルの密度は、ヴァレリアの荒っぽい工学技術をもってしても突破不可能になったからだ。ビルのような太さの幹を持つ木々が道を塞ぎ、その根は中世の城壁のように絡み合っている。


「相対湿度99%」


ヴァレリアが曇ったバイザーを拭きながら、腕時計を読み上げた。


「要するに泳いでるのと同じさ。垂直にね」


「それもバクテリアのスープの中をな」


俺はメスで太いつるを切りながら付け加えた。蔓からは乳白色の液体が滲み出し、金属に触れるとジュッと音を立てた。


「手袋なしで触るなよ。ここの光合成は攻撃的だ。植物は太陽を待ったりしない。近くを通るあらゆるものから化学エネルギーを奪おうとする」


静寂が最悪だった。


鳥のさえずりはない。コオロギの鳴き声もない。


あるのは、地面から響いてくるような、一定の超低周波の唸りだけだ。


「アーサーさん」


ルナが足を止めて囁いた。彼女は青ざめていた。手の中のソニック・バトンが独りでに振動している。


「聞こえますか?」


「何がだ?」


「ネットワークです」


彼女は目を閉じた。


「音じゃありません。……データです。木々が……会話しています」


俺は見上げた。百メートル上空の樹冠キャノピーが空を完全に遮っている。差し込むわずかな光は濾過され、緑色で、病的な色をしていた。


寄生体によって強化された分析視覚を起動する。


目にした光景に、俺は立ち止まった。


地面の「根」は単なる木材ではなかった。内部に《天然光ファイバー》のフィラメントが走っている。青い光のパルスが木から木へと移動しているのだ。


この森は植物の集合体ではない。サーバーだ。物理的なニューラルネットワークだ。


【 環境分析:大規模バイオコンピューティング 】

【 構造検知:森林はハイヴマインド(集合精神)である 】


「ガイアか」


俺は呟いた。


「理論は正しかったな。森は情報を処理するために進化した。森は思考している」


「で、森はあたいらのこと、どう考えてるんだい?」


グリッスルが不安そうに、肩に止まろうとした手のひらサイズの昆虫を叩き潰しながら聞いた。


「ウイルスだと思ってるさ」


俺は答えた。


「そして今、免疫系が作動しようとしている」


突然、足元の地面が抜けた。


穴ではない。地面が口のように開いたのだ。


筋肉のような根が俺たちを包み込む。


ヴァレリアが悲鳴を上げ、下へと引きずり込まれる。グリッスルが根を切ろうとしたが、それは鋼鉄のケーブルのように硬かった。


「抵抗するな!」


俺は柔らかい土の中へ引きずり込まれながら叫んだ。


「抵抗に反応するぞ! 筋肉をリラックスさせろ!」


俺たちは地下の暗闇へと飲み込まれた。


カビの臭いがする湿った有機的なトンネルを滑り落ちる。数秒が数時間にも感じられた。


鈍い音と共に、硬く冷たい表面に着地した。


赤い非常用照明が明滅し、苦しげに点灯する。


俺は立ち上がり、土を吐き出した。


「全員無事か?」


「プライドを脱臼した気がするけど、他は大丈夫」


ヴァレリアが立ち上がり、埃を払った。


「一体ここはどこだい? 洞窟?」


周囲を見回す。


自然の洞窟ではない。


壁は鉄筋コンクリート製だが、ひび割れ、光る根に侵食されている。苔に覆われた古いコンピュータ・コンソールがある。ひっくり返ったオフィスチェア。腐った白衣を着た人間の骸骨がワークステーションに座ったまま、肋骨を貫いて成長した植物によって椅子と融合していた。


地下壕バンカーです」


ルナがバトンで壁のプレートを照らした。


プロジェクト・ジェネシス - アマゾン前哨基地

生物学的封じ込めセクター

ステータス:放棄(ゼロデイ + 5年)


「またアンタの親父さんのラボかい?」


グリッスルが聞いた。


俺は中央コンソールへ歩いた。画面の苔を拭き取る。


「いいや。親父は人間への適応(寄生体)を担当していた。ここは……」


机に散らばっていた物理ファイルを読む。


「……ここは惑星そのものを研究していたんだ。もし寄生体が失敗した場合に備えて、侵略に対抗するための生態学的兵器エコロジカル・ウェポンを作ろうとしていた」


「で、成功したのかい?」


ヴァレリアが聞いた。


「上を見ろ」


俺は指差した。


バンカーの天井が部分的に崩落していた。その穴から、グロテスクなシャンデリアのように《コア》がぶら下がっていた。


巨大な、脈動する心臓だ。木材、肉、そして電子回路基板でできている。それはバンカーのケーブルと、外の森の根に接続されていた。


そしてその心臓の中心に、活動停止状態で囚われている存在があった。


女性だ。


あるいは、かつて女性だったもの。皮膚は緑色で、目からは花が咲いている。脊椎にはケーブルが直接挿入されていた。


庭師ガーデナー


制御卓の骸骨の名札を読む。イザベラ・メンデス博士。


「彼女はシステムと融合し、森を制御している。彼女がアマゾンのCPUになったんだ」


突然、木の中の女性の目が開いた。


人間の目ではない。純粋な緑色のマナの光だ。


バンカーが震えた。壁の根が動き出し、出口を塞いでいく。


部屋に声が響いた。彼女の口からではない。古いスピーカーと、空気そのものの振動から発せられた。


『灰の臭いを連れてきたな』


声は多重的で、重なっていた。


『ブラジリアの臭いだ。王の臭いだ』


俺は一歩前に出て、両手が空であることを示した。


「メンデス博士? 俺はアーサー・ヴェラス。エリオの息子だ」


クリーチャーが俺を見た。蔓が天井から降りてきて、俺の顔の数センチ前で止まり、俺のDNAと寄生体の臭いを「嗅いだ」。


『エリオ……人間を怪物に変えようとした男か』


庭師が笑った。乾いた葉を踏みしめるような音だ。


『私は違う道を選んだ。私は世界そのものを兵器に変えたのだ』


「アンタの兵器は遅刻だ」


俺は厳しく言った。


デバウアーは目覚めた。ブラジリアは落ちた。バリアは消えた。今こうして話している間にも、奴は現実を食っている。もしアンタが手を貸さなければ、アンタの森はデザートになるだけだ」


『森はデバウアーを恐れない』


存在は言い返した。


『我々は最終適応形態だ。もし奴が我々を食おうとすれば、我々は次元を貫く棘を進化させる』


「何世紀かかると思ってるんだ!」


俺は叫んだ。


「人類には数百年もない! 数日しかないんだ!」


『人類など無関係だ。お前たちは失敗した』


根が包囲網を狭め始めた。


『お前たちが奴らを招いた。お前たちが奴らを餌付けした。今度は、お前たちが新時代の肥料となる番だ』


グリッスルが咆哮し、包丁を持って突進したが、太い根が彼女を布人形のように壁に叩きつけた。


ヴァレリアが銃を抜こうとしたが、植物が彼女の腕を拘束した。


ルナが音響攻撃の構えを取る。


「止めろ!」


俺はルナに命じた。


「攻撃するな! 彼女はここの酸素を制御している。その気になれば、二秒で俺たちを窒息させられるぞ」


俺は庭師を見た。


「人類は失敗したと言うが、アンタはまだ人間のテクノロジーを使ってデータを処理してるじゃないか。まだこのバンカーに繋がってる」


「アンタは純粋な自然じゃない、メンデス博士。植物性サイボーグだ。そしてどんな機械でも……データが必要なはずだ」


俺はブラジリアから盗んだドライブを取り出した。王のリアクターのデータが入ったドライブだ。


「ここにはデバウアーの周波数署名シグネチャが入ってる。奴がどうやって捕食するのか。何が奴を傷つけるのか、俺は知っている」


「もし俺たちを殺せば、この情報は俺たちと共に死ぬ。アンタは盲目のまま奴と戦うことになるぞ」


根が止まった。


庭師は興味深そうに首をかしげた。


『お前は……自然と取引をするつもりか?』


「俺は共生体シンビオートだぞ、忘れたか?」


寄生体が俺の顔を骨のマスクで覆う。


「敵対的な宿主との交渉は、俺の専門分野だ」


「奴の弱点データをやる。代わりに、アマゾンの《ポイント・ゼロ》までの安全な通行権と……アンタがあそこに隠している兵器を寄越せ」


『なぜ兵器のことを知っている?』


「親父の日記に書いてあったからな」


嘘だ。カマをかけただけだ。だが彼女の反応がそれを肯定した。


「彼は言っていた。アマゾンには、エイリアンでさえ消化できない何かが隠されていると」


庭師は長い間沈黙した。バンカーの照明が明滅する。


ついに、友人たちを拘束していた根が解かれた。


『いいだろう、アーサー・ヴェラス』


触手が降りてきて、俺の手からドライブを受け取り、幹の中へと吸収した。


『データは……美味だ。恐怖。飢餓。虚無。ああ、これに対する毒を合成することは可能だ』


バンカーの奥の壁が開いた。根が退き、青い発光キノコに照らされたトンネルが現れた。さらに深く、地底へと続いている。


『ポイント・ゼロへの道は開いた。だが知っておけ』


庭師が目を閉じた。


『あそこにあるのはテクノロジーではない。我々が鎖で繋いだ古き神性だ。もし解き放てば……デバウアーの王など些細な問題になるかもしれんぞ』


「俺はいつだって、まだ知らない方の問題トラブルを選ぶタチでね」


俺は答えて、チームを呼んだ。


俺たちはトンネルへと歩き出した。


臭いが変わった。カビ臭さではない。オゾンと……新鮮な血の臭いだ。


「下に何があると思います?」


痛む手首をさすりながらルナが囁いた。


「鎖に繋がれた神性だってさ」


俺は繰り返した。


「そして俺の家族の運の悪さを考えれば……十中八九、親父が解剖しようとして失敗した『何か』だろうな」


俺たちは闇の中へ入った。


頭上の森は沈黙の戦争計算を続けている。だが今や、俺たちはその盤上の駒となった。


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