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副作用(サイドエフェクト):最後の審判

天使はラッパを吹かない。奴らは天井をぶち破る。


警告はなかった。俺たちの三十メートル頭上にある、植物園の強化防弾ガラスのドームが内側に向かって爆散した。数千の破片がカミソリのひょうのように降り注ぐ。


ガラスの雨の中心、霧を蒸発させる黄金の光線に乗って降臨したのは、ミゲル・ポラルドだった。


彼が温室の床に着地した。衝撃でクレーターができ、周囲の食虫植物が粉微塵になる。衝撃波で俺たちは吹き飛ばされ、研究所の制御パネルに叩きつけられた。


俺は血を吐きながら立ち上がった。耳鳴りがする。


奴を見た。


ミゲルには羽毛の翼はなかった。彼の翼は《固体光ハードライト》の投影であり、銀色の鎧の背部エミッターから噴出する純粋なエネルギーの刃だった。顔のない滑らかなヘルメットを被り、目があるべき場所には輝く十字架だけがある。


右手には《地平線のホライゾン・ブレード》を握っていた。物理的な刃を持たず、磁場で封じ込められた超高温プラズマでできたロングソードだ。


『アーサー・ヴェラス』


彼の声はヘルメットからではなかった。強制的テレパシーによって、あらゆる方向から同時に俺たちの頭蓋骨に直接響いた。


『ソヴレニティは貴様を「癌」と認定した。私はその化学療法ケモだ』


「詩的だな」


俺は骨が折れていないか確認しながら皮肉った。


「アンタら聖騎士パラディンは昔から演技過剰ドラマチックな才能があるよな」


ミゲルが剣を掲げた。その熱気で、周囲の巨大シダ植物が瞬時に萎れる。


『タンクから離れろ。その忌まわしきモノは浄化される。貴様もろともな』


ルナが震えながらバトンを構えた。ヴァレリアは火炎放射器を装填したが、無駄だとわかっているようだった。グリッスルは唸り声を上げたが、奴から発せられるランクSの聖なるオーラに本能的に後ずさった。


「わかってないな、ミゲル」


俺はゆっくりと横に移動し、彼と検体ゼロのタンクの間に割って入った。


「そのガラスの中にいるのは悪魔じゃない。マナの天敵プレデターだ。もしそのエネルギー剣をそいつの近くで使えば……」


『黙れ、異端者』


ミゲルが膝を曲げた。


『光は闇を恐れぬ』


彼が消えた。


人間の目には速すぎた。だが、寄生体は見逃さなかった。


【 警報:極超音速移動 】


アーサー(寄生体)が俺の体を勝手に動かした。俺は左へ飛び込んだ。


一ミリ秒前まで俺の頭があった場所を、ホライゾン・ブレードが空気を切り裂いて通過した。斬撃の後に残された真空が、衝撃音ソニックブームを生む。


ドォォォン!


背後のコンソールテーブルが真っ二つになり、金属の切断面が溶けたオレンジ色に輝いた。


『遅い』


ミゲルが手首を返し、二撃目を繰り出す。今度は俺の足を狙っている。


「ルナ! 音響閃光弾ソニック・フラッシュバン!」


俺は叫んだ。


ルナがバトンを床に叩きつけた。白い音のパルスが炸裂する。


ミゲルを傷つけることはできなかったが、一瞬だけ彼の翼の飛行センサーを不安定にさせた。彼が躊躇する。


必要な時間はそれだけだった。


奴を攻撃するためじゃない。俺は馬鹿じゃない。メスで大天使を殺せるわけがない。


だが、戦場の環境を変えることならできる。


俺はきびすを返し、一番重いメスを投げた。


ミゲルにではない。


タンクにだ。


スーツの全出力で強化されたミスリルのメスが、封じ込めシリンダーのガラスを直撃した。


ピキッ。


嫌な音がした。ガラスに蜘蛛の巣状のヒビが入る。


『何をした?』


ミゲルが止まった。剣が唸りを上げている。


「檻のドアを開けたのさ」


俺は血に染まった歯を見せて笑った。


「光は闇を恐れないんだったよな? その仮説を検証してみようぜ」


ガラスが砕けた。


青い液体が漏れ出し、床を浸水させる。


そして、検体ゼロが解放された。


咆哮はなかった。エーテル・デバウアーは音を立てない。音を「引き算」するのだ。


星を内包した闇の塊が、壊れたタンクから浮遊し出た。水に落としたインクのように、空間へと広がる。


ミゲルは傲慢にも、その生物に斬りかかった。


『滅せよ!』


彼はプラズマの剣を完璧な弧を描いて振り下ろした。


刃が黒い塊に触れた。


そして、消えた。


切断は起きなかった。剣のエネルギーは単に……飲み干された。


闇がプラズマを飲み込んだ。そして成長した。


『な……!?』


ミゲルが後退し、光を失った自分の剣を見つめた。


検体ゼロは、大天使という巨大なエネルギー源を感知した。黒い塊が変形し、真空の触手を作り出してミゲルへと鞭打つ。


「走れッ!」


俺はチームに向かって叫んだ。


二体の巨人が激突する中、俺たちは温室の出口へと全力疾走した。


背後では絶対的なカオスが展開していた。ミゲルは光の翼を再起動し、聖なる槍の雨で生物を爆撃し始めた。闇に触れる槍はすべて消滅したが、過負荷オーバーロードによって生物は重力歪みの波を「ゲップ」し始めていた。


地面が揺れる。植物が根こそぎ引き抜かれ、戦闘の中心へと吸い込まれていく。


「バンは!? バンはどこだ!?」


ヴァレリアが叫び、庭園のドアを蹴破った。


外には人狼ベトのオパラがエンジンを吹かして待っていた。ベトが窓から顔を出し、恐怖に遠吠えしている。


「早く乗れ! あいつの臭いで毛が抜け落ちそうだ!」


俺たちは車に転がり込んだ。


「踏め、ベト!」


俺は命じた。


車はタイヤを鳴らし、砂利の上でスピンしながら植物園の出口へと疾走した。


リアウィンドウ越しに見る。


温室のガラスドームが強烈に――目を焼くような黄金色に――輝き、そして内側へ向かって爆縮インプロージョンした。闇の球体が構造物全体を飲み込み、ガラスも、金属も、光も食らい尽くす。


その後、球体は自壊し、耳から血が出るようなポップ音と共に消滅した。


「あいつ、死んだ?」


座席で縮こまっていたルナが聞いた。


俺は腕時計のデータを見た。


【 検体ゼロのエネルギー反応:消滅(過負荷による散散) 】

【 大天使の反応:生存。損傷甚大だが、活動中 】


「いいや」


俺は苦い味を感じながら答えた。


「化け物の方はエネルギーを食いすぎて破裂した。だがミゲルは生き残った。数分後には瓦礫から這い出してくるだろう。そして、とてつもなくご機嫌斜めだろうな」


ベトは狂ったようにクリチバの通りを走り、街の南出口を目指した。


ネクロポリスは厳戒態勢に入っていた。霧の警報フォグ・サイレンが鳴り響いている。


「どこへ行くんだい?」


グリッスルが顔のすすを拭いながら聞いた。


俺はポケットから親父のデータが入ったドライブを取り出した。触れると温かかった。


「北だ。獣の心臓部へ向かう」


俺はダッシュボードに投影されたブラジリアのホログラム地図を見た。


ソヴレニティは今、その力の一端を見せつけた。たった一人の男に、俺たちは殺されかけた。そして首都には、そんな奴らの軍隊がいる。


だが今、俺たちには奴らが予期していない武器がある。


奴らの起源を知った。そして、奴らが血を流すことも知った。


「次のステップは、過激な外科手術ラジカル・サージェリーだ」


俺の中の寄生体が落ち着きを取り戻した。疲弊し、傷ついているが、進化している。戦うたびに学習しているのだ。


俺も同じだ。


前途は長い。だが初めて、俺たちは盲目的に逃げているのではない。


戦争に向かっているのだ。

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