世界の終わりの診断書
死人の日記を読むことは、その魂の検死解剖を行うようなものだ。皮膚にはなかった傷痕が見える。心臓が止まるよりもずっと前に、彼を殺していた癌が見えるのだ。
俺たちは《創世のクリプト》の冷たい床に座り込んでいた。青いマナの松明が揺らめき、ファイル棚に長い影を落としている。
唯一の音は、俺がめくる親父の日記の、乾いたページが擦れる音だけだった。
「アーサーさん?」
ルナが優しく声をかけた。彼女はリュックから出したペットボトルの水を差し出してくれたが、俺は飲むことができなかった。
「そこに、何て書いてあるんですか?」
俺は深く息を吸い込んだ。古紙と、腐った啓示の匂いがした。
「俺たちが悪役だって書いてあるよ」
ヴァレリアがファイルをコピーする手を止めた。グリッスルが包丁を下ろした。
「どういうことだい?」
ヴァレリアが尋ねる。画面の光が彼女の眼鏡に反射している。
「聞けよ」
俺は声に出して読み始めた。親父の筆跡は走り書きで、コーヒーと涙のシミで汚れていた。
『0年10月12日。
空は我々に嘘をついた。
我々は何十年もの間、空飛ぶ円盤に乗った緑色の小人を宇宙に探してきた。我々は純朴だった。外にある生命は生物学的ではない。概念的なものだ。それは純粋な飢餓だ。
今日、奴らは太陽系の端に到達した。我々は奴らを《エーテルを喰らうもの(イーター・オブ・エーテル)》と名付けた。奴らは惑星を欲してはいない。我々のマナを欲しているのだ。地球は満タンの電池であり、奴らはショート回路だ』
俺は一瞬言葉を切った。俺の中の寄生体が振動した。俺のものではない、古の遺伝子記憶が浮上する。寒さ。暗闇。星々を喰らう何か。
俺は続けた。
『亀裂計画は事故ではなかった。我々は手違いで地獄への扉を開けたのではない。意図的に開けたのだ。
我々には武器が必要だった。エネルギーを喰らう存在に対して、核兵器は機能しない。我々には生物学が必要だった。絶え間ない戦争の次元で進化した怪物たちが必要だったのだ。
我々は怪獣(Kaiju)を連れてきた。ドラゴンを連れてきた。魔獣を連れてきた。我々を殺すためではない。地球の番犬とするために』
ルナが手で口を覆った。
「待って……魔物たちが……私たちの軍隊だって言うんですか?」
「そうなるはずだったんだ」
俺は慎重にページをめくりながら答えた。
「だが、何かが失敗した」
『同化は失敗した。人間の生物学は共生を拒絶した。制御を失った魔物たちは、本能で行動した。奴らは人間を味方としてではなく、ひ弱な害虫として認識したのだ。輸入した免疫システムが、宿主を攻撃し始めたのである。
ソヴレニティと各国政府は真実の隠蔽を決定した。自分たちがより大きな破滅から逃れるために自ら破滅を招き入れたと認めるより、対魔物戦争をプロパガンダとして売り込み、利益を得る方が容易だったからだ』
俺は金属テーブルの上の親父の死体を見た。とても小さく見えた。とても脆く見えた。
「それであんたは、アーサー?」
ヴァレリアが張り詰めた声で聞いた。
「あんたはどこで関わってくるんだい?」
俺は日記の最後のエントリーを読んだ。日付は、彼が失踪した日だった。
『プロジェクトを死なせるわけにはいかない。人類には架け橋が必要だ。人間であり、かつ魔物である者。翻訳できる者が。
私の息子、アーサー。彼は適合者だ。彼のゲノムには劣性変異がある。
彼に《始原のプロトタイプ》を移植するつもりだ。彼はそれを憎むだろう。痛むだろう。彼は飢えと共に生きることになる。だが、彼は生き残る。
アーサーは方舟だ。もし人類が滅びても、彼は再始動のための遺伝子コードを運ぶだろう』
俺は日記を閉じた。
部屋の静寂は絶対的だった。
俺は呪われてなんかいなかった。労働災害の被害者でもなかった。
俺は生物学的なUSBメモリだったんだ。親父は種を救うために俺を怪物に変え、そして「さよなら」を言う勇気すらなかった。
熱い怒りが喉元まで込み上げてくるのを感じた。彼の骨を砕いてやりたかった。叫びたかった。
だが、寄生体が介入した。
【 データ処理完了 】
【 論理的結論:創造主(父)は絶滅の危機的強制下において行動した 】
【 観察:人間の感情(憎悪)は現時点において非効率。生存に集中せよ 】
「こいつの言う通りだ」
俺は零れ落ちた一粒の涙を拭い、囁いた。
「死人を憎んでも解決しない」
「つまり……」
グリッスルが混乱した様子で頭を掻いた。
「あたいらは、魔法を食うエイリアンからあたいらを守ってくれるはずだった魔物を殺してるってことかい?」
「基本的にはな」
俺は立ち上がった。
「ソヴレニティは惑星防衛システムを高級バッグとテレビ番組に変えちまった。その間にも、『奴ら』は」
俺は天井を、宇宙を指差した。
「まだ来ている」
「それでヘリックス・ファーマの説明がつくね」
ヴァレリアが猛烈な勢いでタイピングした。
「奴らはこの研究の一部を見つけたに違いない。奴らはヒーローを作りたいんじゃない。本物の侵略が始まる前に、生物兵器(魔物たち)の制御権を取り戻したいんだ」
「その通りだ。サニー・ナイトは、俺という存在を再現しようとした粗雑な試みだったんだ」
突然、部屋の中央にある油圧エレベーターが音を立てた。ガコン。
歯車が回り始める。誰かが上でエレベーターを呼んでいる。
「お客さんですね」
ルナがバトンを構え、紫のオーラを点灯させた。
「タクシーの運転手だと思います?」
「いいや」
俺はエレベーターのパネルを見た。
「降下コードが遠隔入力された。軍事コードだ」
ヴァレリアはラップトップを閉じ、装甲リュックにしまった。
「時間は?」
「カゴが降りてくるまで二分」
俺は計算した。
「だが出口は一つしかない。袋のネズミだ」
俺は部屋を見回した。ファイル。親父の死体。日記。
ここでは戦えない。もしこの部屋を破壊すれば、人類の歴史は永遠に失われる。
「ヴァレリア、全部コピーしたか?」
「100%だ」
「グリッスル、ルナ。棚を倒せ。エレベーターシャフトの前にバリケードを作れ。時間を稼ぐんだ」
「そのあとは?」
重い金属のロッカーを押しながらルナが聞いた。
俺はクリプトの奥の壁へと歩いた。壁に図面が貼ってある。オペラ座の湖へと排水される緊急用の雨水管だ。
「そのあとは、ウナギと一緒に泳ぐことになる」
エレベーターが降りてきた。
床に着くよりも早く、ドアが開いた。
普通の警察ではない。
五つの人影があった。光を吸収する艶消し黒の戦闘装甲を纏っている。銃火器ではなく、赤いエネルギーを纏って唸る剣と槍を持っていた。
それぞれの胸には紋章があった。短剣に貫かれた下弦の月。
《黄昏部隊》。ソヴレニティの掃除屋部隊だ。奴らは逮捕しない。消去する。
リーダーが一歩前に出た。彼のヘルメットは様式化された狼の頭蓋骨の形をしていた。
「アーサー・ヴェラス」
彼の声はデジタル的に加工されていた。
「貴様はソヴレニティの知的財産を手にしている。日記を渡せば、即死を保証してやる。抵抗すれば、生きたまま解剖して共生体を回収する」
俺は片手で日記を、もう片手でメスを持ちながら笑った。寄生体が俺の腕を黒いキチン質で覆う。
「知的財産だと?」
俺は皮肉った。
「こいつは親父の遺言状だ。それと解剖についてだが……残念ながら、俺の内臓を見るための行列は長いんでな。アンタらは予約してないだろ」
「グリッスル、やれ!」
俺は叫んだ。
オークの女が手術台を――親父の骸骨を乗せたまま――兵士たちに向かって蹴り飛ばした。
冒涜的な動きだが、必要だった。骨が散弾のように飛ぶ。部隊のリーダーは反射的にエネルギーソードでテーブルを両断した。
一秒間の陽動。
「生物学的閃光弾!」
俺は小瓶を床に叩きつけた。
黄色い煙――《幽霊唐辛子》の胞子――が部屋で爆発した。
奴らのヘルメットのセンサーが盲目になる。
「ダクトへ走れ!」
俺はすでに外しておいた部屋の奥の格子を指差した。
俺たちは下水の暗闇へと飛び込み、冷たい泥の中を滑り落ちていった。背後で赤いレーザーが煙を切り裂き、人類の歴史のファイルが燃える中を。
真実は救われた。だが今や俺たちは、自分たちの背中にある標的の大きさを知ってしまった。
俺たちはただの企業と戦っていたのではない。絶滅と戦っていたのだ。




