入国審査、税関、そして魔法的骨粗鬆症
かつてクリチバでの生存における第一のルールは「傘を持て」だった。新しいルールはこうだ。「チューブ型バス停を直視するな」。
俺たちはこの街の名物であるチューブ型バス停の一つを通り過ぎた。未来的なガラスと金属の外装は健在だが、その内部は緑色の蛍光液体で満たされていた。中には数十体のグールが、ピクルスの瓶詰めのように活動停止状態で浮遊し、眠っていた。
「冬眠式公共交通機関か」
俺は脳内ノートにメモを取りながら推測した。
「効率的だ。日中の新鮮な肉の消費を抑えられる」
「ただ気持ち悪いだけですよ」
ルナがバンの窓に鼻を押し付けながら言った。
「アーサーさん、骸骨が犬の散歩をしてます。いや、待って……犬の方も骸骨だ。声帯がないのにどうやって吠えてるんですか?」
「聴覚幻影魔法か、骨共鳴音だろうね」
ハンドルを握るヴァレリアが緊張した声で答えた。
「ポータルに着くよ。準備しな。書類を見せろと言われたら、撃つんだ」
サンタ・フェリシダーデ地区の古い観光用ゲートが道を塞いでいた。だが、かつての木材とコロニアル様式の瓦は、ドラゴンの肋骨と灰のモルタルで補強されている。
巨大な背骨で作られた遮断機が行く手を阻んでいた。
検問所の脇にいたのは警官ではない。
空っぽの鎧が、地面から五十センチほど浮遊し、クリップボードを持っていた。
「デュラハン(首なし騎士)だ」
俺は識別した。
「ランクB。通常は攻撃的だが、こいつは……退屈してるように見えるな」
ヴァレリアがバンを止めた。デュラハンが運転席の窓まで浮遊してくる。話すための頭はないが、胸当てから亡霊のような声が響いた。金属が擦れるような音だ。
『訪問の目的は?』
ヴァレリアが膝の上の隠しショットガンに手を置いた。
「観光さ」
レンガのような繊細さで彼女は嘘をついた。
『ネクロポリスで観光だと?』
鎧が「溜息」をついた(蒸気が抜けるような音がした)。
『影の評議会からの通行証を持たぬ人間は立ち入り禁止だ。回れ右をしろ。さもなくば通行料として貴様らの魂を没収せざるを得ん』
「やってみな、ポンコツ屑鉄」
ヴァレリアが安全装置を外した。
「待て」
俺は彼女の銃の上に手を置いた。
「俺に話させろ」
ドアを開けて降りる。冷気が即座に顔を切り裂く。
俺はデュラハンへと歩み寄った。その後ろ、検問所の中に動きがあった。紫色のベルベットのボロ布を纏い、錆びた鉄の王冠を被った背の高い人影が、こちらを観察している。
リッチ(死霊の王)だ。高い知能と魔法能力を持つアンデッド。
彼が影から浮き出てきた。皮膚は頭蓋骨に張り付いた羊皮紙のようで、眼窩の中では青い炎が燃えている。
「私の門番が無礼を働いたようだ」
リッチの声は乾いていて教養があり、疲れた大学教授のようだった。
「私はオシアン判事。北部国境の監査官だ。君たちからは『生』の臭いがする。そして『生』とは、私が今日処理したくない種類の官僚的手続き(ペーパーワーク)なのだよ」
彼が骨だけの手を上げた。周囲の空気が壊死魔法でパチパチと音を立てる。
「手早く死んでくれたまえ。終わらせねばならない報告書があるのだ」
グリッスルとヴァレリアがバンから降り、武器を構えた。
だが俺は彼の手の魔法を見なかった。手首を見た。
リッチの尺骨に、緑がかった染みがあった。大抵の者はただの汚れとして無視するであろう、微細な変色。だが俺はそのテクスチャを知っていた。
「左腕にマナカビが生えてるぞ」
俺は声を張り上げた。
リッチが止まった。目の炎が揺らぐ。
「何だと?」
「マナカビ。学名《フングス・アルカヌス(Fungus Arcanus)》。最初は皮膚がないから掻くこともできない幻肢痛のような痒みから始まる。次に、魔法カルシウムのマトリックスを腐食させる。治療しなければ、三週間以内に腕が落ちるぞ。そしてアンタが左利きであることを考慮すれば……」
俺は彼の横に浮いている羽ペンを指差した。
「……監査官としてのキャリアは終わりだ」
オシアン判事は自分の腕を見た。そして俺を見た。殺気が薄れる。
「……関節に、ある種の脆さを感じてはいた。墓場の蝋で磨いてみたが、効果がなかったのだ」
「蝋は湿気を閉じ込める。カビの餌になるだけだ」
俺は医者の口調で、咎めるように首を振った。
「素人のミスだな。アルカリ性の掻爬処理と、《太陽の塩の華》の軟膏塗布が必要だ」
リッチが腕を庇うように後退した。
「太陽の塩だと? アンデッドにとっては呪い(アナテマ)だぞ。焼かれてしまう」
「焼くのはカビだ。エンチャントされた骨は焼かない。化学療法みたいなもんだよ。痛いが、治る」
俺は腕を組んだ。
「今すぐ処置してやってもいいぞ。交換条件として、『特別訪問者』のビザを四つ、それから通行料の免除をもらう」
ルナが背後で囁いた。
「アーサーさん、私たちを殺そうとしてる怪物を治療するんですか?」
「医療外交だよ、ルナ」
リッチは考え込んだ。永遠の命は長い。腕を失うことは、永遠の不便を意味する。
「五分だけやろう、人間よ。もし腕が落ちたら、貴様らの首は私の棚に飾られることになる」
手術はその場で、バンのボンネットの上で、ヘッドライトと満月の光の下で行われた。
俺は銀のキュレット(匙状の器具)を使って――リッチは不快感にシューシューと音を立てたが――骨の緑色の層を削り取った。魔法のカビの粉末が雪に落ち、溶けていく。
「グリッスル、酢をくれ。ヴァレリア、彼の腕を押さえてろ。震えてる」
「魔法の死体の腕を押さえるなんてね」
ヴァレリアが不満を漏らした。
「母さんはあたしに歯医者になって欲しかったんだ。まあ、近いところまでは来たかね」
俺は塩とハーブのペーストを塗布した。
リッチが精神的悲鳴を上げ、バンの窓ガラスにさらにヒビが入った。
『ギャアアアアッ! ナガッシュの墓に懸けて! 沁みるぞ!』
「沁みるのは寄生体が死んでる証拠だ」
俺はラベンダーオイル(臭い消し用)と中性マナを染み込ませたガーゼで骨を包帯した。
「終わった。二世紀ほど乾燥させておけ。それと来週いっぱいは、あまりジェスチャーをするな」
オシアン判事は包帯を巻かれた腕を見た。骨の指を屈伸させる。動きは滑らかで、以前のようなきしみ音はない。
彼は安堵の溜息をついた。
「見事だ。大抵の聖職者は私を浄化しようとするだけだからな」
彼が指を鳴らした。遮断機のデュラハンが道を開ける。
リッチはローブから黒鉄のパスポートを四つ取り出し、緑色の炎の印章を押した。
「技術顧問用ビザだ。有効期限は72時間。『肉の地区』は避けろ。グールどもが発情期で縄張り意識が強くなっている。宿を探しているなら、シビック・センターにある『三つ首の犬』という宿屋が中立地帯だ」
彼は俺にパスポートを渡した。
「ようこそクリチバへ、ドクター。死なないようにしたまえ。良い整形外科医は希少なのでな」
俺たちはバンに戻り、遮断機を通過した。
都市が目の前に開けた。
放棄された廃墟ではない。適応したメトロポリスだ。
通りは清潔だった(おそらく清掃スライムのおかげだろう)。ビルの明かりは、ファサードで栽培された発光苔によるものだ。
通りには「人々」がいた。破れたスーツでブリーフケースを持つゾンビ、暗い軒下で談笑する吸血鬼、歩道を掃くスケルトン。
それは凍りついた時間の中で、死によって歪められた人間生活のパロディだった。
「……組織化されてますね」
ルナが衝撃を受けて言った。
「信号機までありますよ」
「魔物の社会は実力主義になりがちだ」
新聞配達をしているオーガを観察しながら俺は説明した。
「強い者が命じ、役に立つ者が生き残る」
「で、どこへ行くんだい?」
ヴァレリアが尋ねた。
俺は『肉の福音書』の地図を取り出した。
「《創世のクリプト》を見つける必要がある。伝説によれば、旧オペラ・デ・アラメ(ワイヤー・オペラハウス)の地下にあるらしい。だが、現地のガイドなしじゃ入れない。トンネルを知り尽くした誰かが必要だ」
俺は前方のタクシー乗り場を指差した。車はナイトメア(黒炎馬)が引く霊柩馬車だ。
だが、一台の黒いシボレー・オパラ(78年型)にもたれかかり、葉巻を吸っている人狼がいた。サングラスにレザージャケット、タクシー運転手の帽子を被っている。
「あそこに俺たちの交通手段がいる」
俺は笑った。
「狼男は世界最高の天然GPSを持ってるからな。嗅覚だ」
バンをオパラの横に付けた。
狼男が空中の臭いを嗅ぎ、毛深い頭を向けて唸った。
「深夜零時過ぎの南ゾーン行きはお断りだ。それとシートにゲロ吐いたら、テメェらの肝臓を食うぞ」
「そっちも良い夜を」
俺は窓を開けた。
「オペラ座まで頼む。支払いは特上肉だ」
グリッスルの冷蔵庫にあったオーガのステーキ肉の塊を見せた。
狼男の耳が立った。車内で尻尾が無意識に揺れているのが見えた。
「乗りな、旦那。メーター回すぜ」
ネクロポリスは世界の終わりじゃなかった。単なる新しい生態系だ。
そして俺たちは、この街で最も危険な外来種というわけだ。




