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Ormundo/オルムンド  作者: 黒綺硝子
第一章 焼けた黒曜石
2/8

二譚 黒曜王子の宴

 ミュリエルの手をとって起こした。


「メーレル...」


 ミュリエルは後ろめたい気持ちを抑えて、メーレルに話しかける。

 遠くでは、厳しい兵士たちの掛け声が聞こえる...


「ミロリーネ様から聞いたの。貴方が今までどんな景色を見てきたのか、どうしてここに来たのか...とか」


 ミュリエルは視線を外して俯いた。


「可笑しいよね。私が許されるなんてそんなの...」


 メーレルは彼女の後ろめたさの正体が心の根底では分かっていた。

 彼女はメーレルの過去を知らない故に強く当たってしまった事を悔いてるのだ...と。


「あの時の出来事は忘れられないし、心の中で永久に傷となっている。思い出すと気が狂いそうだ」


 メーレルは彼女から手を放して蒼く雲が立ち並ぶ青空を見つめ語り続ける。


「だけどなー...それに縛られてはいけないって分かったんだ。後悔しないでほしい。悔やむ必要なんてないんだ。俺を信じれるのは俺だけだ...」


 近くの木に寄り添ってメーレルは真っ直ぐ彼女を見つめた。

 するとミュリエルは彼に向かって微笑む。


「あんたって人は強いのよ...でもさ、やっぱり一人にならないでほしい。私にも信じさせてほしい。自分のこともあんたのことも信じていたい...」


 メーレルの顔がハッとした表情に変わる。


「あんたのこと私も信じてるから、あんたも私のこと信じなさいよね...」


 気付けばメーレルの頬が赤みがかっていた。


「お、俺こそ...お前のこと信じてやる...!」


 メーレルは思いっきし瞼を閉じて、その想いをミュリエルに伝えた。

 木陰から誰かが2人を見て微笑んでいる...


「ふふ...私も2人を応援してますよ〜!!」


 そこに隠れていたのはなんとあのミロリーネであった。

 ミュリエルの表情が一気に赤面になる...


「ミロリーネ様!?なぜそこに...あぁ!見ないでくださーいっ!!」


 ミュリエルはミロリーネに向かって飛び込んで、ただただもがいていた。

 メーレルは照れ隠しをするように笑った。


「こんな事が起きちまうんだな人生ってのは...全く、本当に捨てたもんじゃないよな...」


 この瞬間はメーレルの運命をより良い方向へ大きく躍進させた瞬間だった。

 彼は、今まで何一つ残酷だった人生に一輪の花が咲いたような気分でいた。


 ◇◇◇


 ——王宮。


 この日、メレンシュの中央貴族の間では、重要な行事が盛んに賑わいを見せていた。

 “仮面舞踏会”...仮面を被った男女が、足踏みをして舞踏をするパーティーである。


「来られましたね...ミロリーネ様」


 大広間への扉に、執事がミロリーネを迎える。


「ええ、遅くなりましたわ...」


 ミロリーネは慌ただしくする様子もなく、ただ平然と大広間へ向かう。

 この執事は、そんなミロリーネに問う。


「ミロリーネ様、本日の仮面舞踏会へは参加なさらないのですか?」


 その問いへの答えに、ミロリーネは遠い目をしながら言った。


「今日は弟であるファイアレムの誕生日なのよ...わたくしが出る幕より、彼が十分に披露出来る場面を作りたいと思ってますの...」


 夜の舞踏会はこれでもかと賑わっているが、その傍では静寂に包まれていた。

 ミロリーネは、大広間の大時計を見ながら、執事にこう答えた。


「もうじき、王子がきますわ...」


 執事はそれに頷いて、自身の服についていた埃を見つけると、さっと手で払い落とした。


「ファイアレム王子は、今年で十八年の歳月を迎えるので、結婚相手を見つけても良い時期かと思われます。きっと、素晴らしい舞踏になるでしょう」


 執事も、ミロリーネに続いて遠い目をした。

 舞踏会は貴族達の舞踏で盛り上がり、それを最高潮に達した時だった...


「ファイアレム王子のご入場で御座います!」


 複数の使用人を伴って、大広間にファイアレム王子が入ってきた。

 彼はモンカステラ家の長男であり、次期国王の最有力候補の1人である。

 大勢の観客が拍手で王子を歓迎した。


「あの方が、ファイアレム王子ですって!?」


「まあ!!なんと端正なこと...!!」


 舞踏会へと足を踏み入れたファイアレムは、姉と同じく美麗で端正な顔立ちをしている。

 長い睫毛に輝くような全身...まさに思い描くような風貌を見せていた。


「皆様、どうもごきげんよう。本日の仮面舞踏会へお越しくださり、誠に感謝をお申し上げます」


 王子が挨拶を交わすと、次は歓声と共に盛大な拍手が送られた。

 それもそのはず今日は王子の誕生日...実におめでたい日であるのだ。

 ミロリーネが彼を見ると、ある事に気付いた。


「彼...仮面を付けていないわ...」


 彼女の執事は、王子をまじまじと見つめる。


「そのようですね、ミロリーネ様。王子が何をご所望になられるのか、想像もつきませぬ...」


 ミロリーネがそんな執事に無言でいると、王子が挨拶を終えて言い出した。


「本日、仮面舞踏会に参加する予定でしたが、急遽国王が来られる事となりました。私の誕生日である今日、国王が所見を開くというのです!」


 王子が語り終えると、大広間が驚きの歓声に包まれた。

 男女が踊り出し、仮面舞踏会は再び賑わい始めた。


「ミロリーネ様...国王が来られるようですね...」


「えぇ...そのようですわね...」


 大盛況を見せる舞踏会の傍、二人はただ見守るように佇んでいた。

 するとそれに気付いた王子が歩み寄る。


「姉上...ここで何をしておられますか?」


「ええ、少し茫然としてたわ...」


 ファイアレムは彼女にある事を尋ねた。


「姉上、もし私が晴れて国王となったらの話を...しても良いでしょうか?」


「ええ、存分にしなさい...」


 ミロリーネがそう言うと、ファイアレムは嬉々として語り始める。

 その様子は、世界を変えるべく躍進する様だった。


「戦乱が絶えないこの世をただ治めたいのです。私は国王として最も誇らしくありたい!権威のある覇権を手に入れるべく躍進する!」


 ミロリーネはその様子に微笑み返した。


「わたくしは自室へ戻りますわ...」


 そして大広間を出て行った。

 ファイアレムは彼女が何の返答もなく大広間を出た事を不思議に思っていた。


「ファイアレム王子!国王が来られます!」


 その言葉を受けた王子は持ち場の椅子に座り出した。

 すると大広間に国王が入ってこられた。


「皆の者、よくぞ楽しまれた!そこで少し、私のファイアレムについて話をさせてもらう...」


 国王は中央の王座に腰掛け、話をした。


「今日の舞踏会、メレンシュの中央貴族の結束力が強くなったであろう。とても良い舞踏会であった。そして、私の息子であるファイアレムの誕生日に、王位継承権を与えようと存ずる!」


 すると、辺りから一斉に歓声と拍手が湧き出した。


「父上...誠に感謝致します...」


「よいよい...それで、娘のミロリーネと二人で王位について継承をしてもらう事にする。メレンシュ帝国の次期政権を支える存在となるのだ!」


 国王がそう発言すると、またもや貴族達が歓声を上げ出した。

 しかしファイアレムの顔は何処か曇っていた。


「では、早いがこれにて解散とする。皆の者、改めて本日の仮面舞踏会に来場してくれた常、心より感謝申し上げる!」


 王子と共に国王が大広間を出ると、その歓声は外にまで響き渡り、雄大に見送られた。

 ただこの時からファイアレムの中では、何か黒いものが渦巻いていた...


 ◇◇◇


 自室に戻ったメーレルは、すっかり夜になってしまった暗い部屋で、ただ一人茫然としていた。

 突然、部屋のドアが開いたと思えば、そこからミロリーネが入ってきた。


「なあ、あんた...きっとすごく偉い人なんだろ?俺の様な立場の奴と関わってて良いのかよ...」


 無言で平然を装うミロリーネに対して、メーレルは当然の様に尋ねた。

 ミロリーネは大きな本を一冊持ち込んでいる。


「昔から話す事が好きなの...だから、貴方の様な人に出会えて良かったわ。立場というのは絆を隔てるものじゃない...区分でしかないのよ...」


 ミロリーネはそういうと大きな本を開き出し、その間を見つめている。

 その様子にメーレルは勘で答えた。


「なあ、寂しいのか?なんだか反応が欲しそうな感じするし...」


 メーレルの答え方にミロリーネは少し不機嫌になってしまった。

 ただ答えただけに過ぎないが、城壁の外を見た事がないミロリーネにとってそれは侮辱だった。


「貴方って...なんでも言うわね。もしそうだとしたら何だって言うのよ...」


 ミロリーネは頬をぷくっとさせて、視線を完全に本へと向けてしまった。

 その様子にメーレルは少し反省した。


「なあすまん...その本って?」


「これは、太古からシュメイルが辿ってきた歴史を記した本なの。この国の王族には特別な血脈があって、それは“龍の血”と呼ばれているのよ...」


 メーレルはそれを受けて、中々関心が湧いてきた。

 学問とは距離がある人生だったが、彼は学ぶことへの好奇心を持ったようだった。


「龍...つまり、伝説上の存在...“ドラゴンの血”ということになるのか?」


「ええ...その不思議な血が、我がモンカステラ家の中で代々蠢いてきた。一族の中で、その加護を手にしたものは黒曜の炎を纏うと言われてるの...」


 つまり、太古に龍が残した血が代々シュメイル王族の血縁で継承されていった。

 その血脈の加護を受けるものは黒曜の火を纏うことになるという。

 不滅の火は永遠に概念そのものを燃やし続ける...


「私は寂しい代わりに、知識を得た...」


 そう口にするとミロリーネは手を翳す。


「ヴォイドルド...」


 ミロリーネが唱えた言葉に反応するかの如く側で揺らいでいた蝋燭の火が浮かび上がると、メーレルの中に宿っていく...


「貴方の心の傷を癒せる力を持ってるけれど、自分の心を癒すことは出来ないの...」


 初めて目の当たりにした不思議な状況に困惑する。


「ミロリーネ、これはなんなんだ?」

「魔法...この国より東に行けば、魔法使いの都があるのよ。ネンテルと言って、その都市ではどんな魔術だって学ぶことが出来るのよ...」


 ネンテルという地名は彼にとって聞き馴染みのない名称だった。

 オルムンドの東側に位置する大都市でそこには過去のとある伝説が隠蔽されていた。


「その都市が成り立つキッカケは紀元前の物語...一人の賢者が、とある英雄が現れるまで待ち続けているという話だわ...」


「なんか、神秘的だな...」


 とある英雄の到来...それは、この都市が学問上最大級の大都市として栄える理由でもあった。


「天使から授かった時の剣がこのネンテルの何処かでその英雄を待ち続けてるのよ...」


「英雄...か...」


 拙い物語の片鱗...それを耳にしたメーレルは英雄という綺麗な言葉に引っ掛かる。


「そうか...」


「明日、大事なことがあるの。今夜はこれでお邪魔させてもらうわ...」


 そして長話がひと段落した所でミロリーネが部屋を去ろうとする。


「おい、待ってくれ!」


 その背中に何か拭いきれない寂しさを感じた彼は、言葉で彼女を堰き止めた。


「大事なことって...」


 メーレルは懐疑な気持ちをぶつけると、ミロリーネはその素性を明らかにし始めた。

 蝋燭の灯が徐々に弱まっていく...


「公言は...禁止よ?」


 その返答に対して頷く姿勢で返すメーレル。


「わたくしは...王位を継承します。だから、もう貴方に普通に会えないかもしれない。誰にも...誰とも関われずに...」


 メーレルは咄嗟にミロリーネを見た。

 これまで冷淡な空気を纏っていた彼女の頬に彗星のように涙が滴っていた。

 その様子に心底メーレルは驚く。


「どうしたんだよ...ミロリーネ...」


 メーレルの表情から何かを感じたのか、ミロリーネは余韻を残さずに語り出した。

 その表情は静寂に満ちた表情だった。


「また、貴方と逢いたいの...」


 ミロリーネは静かに続ける...


「どんな立場になろうとも、貴方とただ話がしたいの。貴方と話すために、今まで生きてきたんだって思えた...だから...」


 彼女の瞳から新たな涙が溢れ落ちそうになる。

 その時、メーレルが遮るように言った。


「あんたの扱っていた魔法という概念、今度会えたら俺に詳しく聞かせてくれ!」


 その言葉にミロリーネは涙を浮かべながらも、嬉しげに笑みを浮かべて頷いた。


「はい...」


 メーレルがベッドから降り立ったと思えば、ミロリーネの手を取り始めた。

 蝋燭の火が消え、辺りが暗くなると、二人は薄暗い中で顔を見合わせる。


「まだ、あんたと話し切れてないことが沢山あるんだ。だから、あんたが国王になったら、立場なんて関係ない、誰でも分かり合えるような、そんな国にして欲しい...」


 ミロリーネは静かに微笑んで耳元で呟いた。


「これは貴方のため...だから、何でもする...」


 そう言うと、彼女はメーレルから離れて静かに部屋を出ていったのだ。

 蝋燭の火が...再び灯り始めた...


 ◇◇◇


 舞踏会の翌日には早くもシュメイル国王の王位継承式が開かれる事となった。

 王位を継ぐものは参政権を持ち、国の主導権を手にする事が出来る。


「これより、王位継承式を始める!」


「王子ファイアレム!王女ミロリーネ!前へ!」


 その言葉を耳に両者が国王目前に立ち、その姿勢を低く保つ。

 国王が両者を見下ろすと、遂に新たなる国王の誕生を宣言する。


「新たなる国王は皇帝へと称号を変え、権威の象徴として描かれる事となる!これより、シュメイルはエインウィル唯一の大帝国へと生まれ変わる!」


 国王が高らかに宣言するも、その場は静まり返るように静寂を貫いていた。

 それを無視するように国王は主張を突きつける。


「この新たな権威は、必ず他の国を上回るだろう!」


 鎮座する両者は返す言葉も無く、ただ沈黙の最中でその姿勢を保ち続ける。

 使用人達も含め、辺りが騒つく中の事だった...


「王位は...ミロリーネ、お前が先導するのだ」


 一瞬、辺りに衝撃が走った。

 その言葉を聞いた誰よりも早くミロリーネが訴えかけようとしたその時...


「父上...それには異論がある!」


「な...なんだ...どうしたというのだ我が息子よ」


 すさまじい剣幕で立ち上がったのは、その側にいたファイアレム王子であった。

 一瞬の歯軋りを終え、鋭い眼光を向ける...


「貴方は...貴方はこれまでの犠牲を目の当たりにしておられないのでしょうか!兵舎の人間の命が、明日には失われるこの世の不条理を!」


「辞めろ息子よ!一体、誰に諭された!」


 その勢いに駆られ、ミロリーネが立ち上がる。

 掻き消された訴えを必死に思い起こし、ただその想いを伝える。


「私は、知識があります...だからせめて、他の国との平和な外交を、国民を愛する事を許してください...」


 その発言には、国王の堪忍袋の尾が切れる。


「何故にその発言をする!貴様らは王子、王女の身分なのだぞ!この帝国の繁栄を無視して、平和な外交だと?綺麗事も大概にせよ!」


 辺りが騒めき始める、混乱の渦中に置かれた両者は互いを見合わせることは無かった。

 ただそれぞれの正義に突き進む...


「ええい!良い加減にしないか!継承権は留意とする!これは命令だ!」


 国王が宣言を撤回すると、颯爽と複数の使用人を連れて自室に戻り出した。

 取り残された両者に、新しい命令は下らないまま...


「ジェウェル...お前は私について来い...」


「はい!義兄上!」


 ファイアレムは従兄弟のジュウェルを呼び寄せ、彼と共に自室へと向かって行った。

 その場に取り残されたミロリーネに、執事が寄り添って囁く。


「ミロリーネ様...自室へと戻りましょう...」


「ええ...そうするわ...」


 二人は物寂しく、騒ぎの中で視線を集めながら自室へと戻っていった...


 ◇◇◇


 ——ファイアレムの自室。


 ファイアレム王子が、片手で顔を抱えながら肘をついて悲しむ様に椅子に座っている。

 その様子にジェウェルは寂しいと思った。


「義兄上、貴方が王位を継承出来ない事を残念に申し上げます...どうか、貴方にお力添えできない私をお赦しください...」


「...どうでもいいだろう」


 ファイアレムは跳ね除けるように即答した。


「私は...認められなかった...ただ姉上と比べられ、非凡と認識されたのだ...それが堪らなく恨めしい...」


「私は、義兄上が真の国王だと存じます」


 その言葉にファイアレムは怒号を放った。


「ふざけるなよ!この私がどれほど国の祭事に尽くしてきたか!父上はお分かりになられていない!」


「知った口を...申し訳ございません義兄上...」


 突如、ファイアレムの中で何かが変わった。

 今まで根底に抑えてきた黒曜石のような感情が、四方八方に砕け散った気がした...


「力が...力が必要だ...」


「力...?」


 ジェウェルがしかめ顔をすると、ファイアレムは急接近して顔を見合わせる。

 その眼は端正な王子とは比類にならず、猛獣のような狂気を放っていた。


「私は...母上の仰る通りに生きてきた...」


 ジェウェルがあまりの豹変に震え上がり、目を見開いてファイアレムを見つめる。

 物心を通り過ぎた景色が思い浮かび、ファイアレムの中で蘇ってくる。


「母は、私が物心ついて間も無く死に逝かれた...幼い私に母はいった...」


「なんて...?」


 ファイアレムがジェウェルを離すと、落ち着いた態度に早変わりした。

 そしてあのころの景色を彷彿とする...


「貴方は力がある...と仰られた」


 ファイアレムは幼い頃、その身分と肉体的な弱さのギャップに苦しめられてきた。

 当時生きていた彼の実母はまごう事なきこの国の王女であり、ファイアレムを救っていた。


「教舎で辱めを受けた私を...母上はその手で救ってくれた。王女として、母として。しかし、父上は私を見て見ぬふりをしていた...」


 呆然とするジュウェルに、ファイアレムはその話を語り続ける。

 過ぎ去った時だけを想うように...


「母上は寛大で絶対的だった。母上が亡くなられた時は、耐えられない苦痛を感じた。母上の死に同情もしない父上を心の底から恨んだ...」


 ふと棚から手鏡を取り出すと、その中にはかつてファイアレムが母と共にした広間があった。

 その広間は今になっては入る事が出来ない。


「母上は私に教えてくれた。姉上が知を得るなら、私は力を得れば良いと...その力が、このファイアレムの血に宿っているとな...」


 ジェウェルの感情が揺れる...

 そしてファイアレムは手鏡の鏡を取り外し、その中に入っていたまち針を取り出した。


「この針は母上が故郷で授かった遺品...一族の力を齎すと仰っていた。古代モンカステラ家の力への経路がこの針にあるのかもな」


 ジェウェルは彷彿とした伝承を口にする。


「古代から一族が受け継いだ龍の血、それに基づく力なのでしょうか?」


 ファイアレムはまち針を元に戻し、手鏡を嵌め込んで棚に戻した。

 ジュウェルに視線を送り出す。


「分かるだろう!私は既に力を手にしている!龍の血が流れている限り、このまち針が示す運命を我が物にする事ができるのだ!」


 ジュウェルはファイアレムの語るモンカステラ家の奇妙な伝承に懐疑を持った。

 その根底で得体の知れぬ恐怖も混同する...


「私はこの世界を変える力を手に入れる...国王になれないのならば...もしくは...」


 ファイアレムは鋭い視線を他の箇所に向け、ただただ好奇を伺っている様だった。

 その様子はこれから世を穿つ混沌の予兆でもあるのであった...

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― 新着の感想 ―
このエピソードで遂にあの王子が出てくるんですね。 王子×ドラゴンなんて斬新過ぎる設定、、、 この世界観でしか実現出来ませんよね。 めちゃくちゃ好き、、笑笑
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