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第7話 逮捕と浄化

言い訳も、逆ギレも、もう通用しません。 パトカーのサイレンが、彼らの「退場」を告げます。 さようなら、お義姉さん。二度と来ないでください。

「署で詳しい話を聞く。任意だが、断れば公務執行妨害や証拠隠滅の恐れありとして逮捕状を請求することになるぞ」


 年配の警官の低い声が、玄関ホールに響いた。

 もはや「家族の話し合い」という逃げ道は塞がれている。


「ふ、ふざけないでよ! これは罠よ! 美智子が私たちを嵌めたのよ!」


 美月が髪を振り乱して喚く。


「偽物の権利書を置いておくなんて、性格が悪すぎるわ! 教唆きょうさじゃないの!? 私たちが被害者よ!」


 私は冷ややかな目で見下ろした。


「罠? いいえ、それはただの防犯対策です。私の大切な家に泥棒が入らないようにね。勝手に金庫を開け、勝手に偽造したのはあなた自身でしょう?」


「ぐぬっ……!」


「それに、あなたたちが『普通の親族』として振る舞っていれば、その罠は永遠に発動しなかったはずよ。自業自得ね」


「美智子ぉぉぉ……!」


 美月が私に掴みかかろうとするが、若い警官が素早く制止し、その腕を後ろ手にねじり上げた。


「暴れないでください! 公務執行妨害も追加しますよ!」


「離して! 私は悪くない! 父さんが! 父さんがやれって言ったのよ!」


 見苦しい責任のなすりつけ合い。

 義父の英三も、義母の佳代も、もはや反論する気力もなく、青ざめた顔でガタガタと震えている。


「ワ、ワシはただ……老後の面倒を見てもらおうと……」


「嘘つき。お金を奪って、私と花梨を追い出すつもりだったくせに」


 花梨が冷たく言い放つ。


 結局、三人は抵抗虚しく、左右を警官に固められてパトカーへと押し込まれた。

 赤色灯が夜の住宅街を赤く染める。近所の家々の窓が開き、何事かと人々が顔を覗かせていた。


 あの見栄っ張りの義姉たちにとって、この「ご近所への顔向けができなくなる状況」こそが、何よりの罰になるだろう。


 パトカーのドアが閉まる直前、花梨が近づき、窓越しに美月へ向かって手を振った。


「バイバイ、おばちゃん。……あ、もう『他人』だから、二度と来ないでね」


 美月が窓ガラスをバンバンと叩きながら何か叫んでいたが、車は無慈悲に発進し、闇の向こうへと消えていった。

 遠ざかるサイレンの音。

 それが完全に聞こえなくなった時、家の周囲に本来の静寂が戻ってきた。


「……行ったね」


「ええ、行ったわ」


 私と花梨は顔を見合わせ、大きく、本当に大きく息を吐き出した。


「やった……やったあぁぁぁ!!」


 花梨が私の腰に抱きついてくる。


「お母さん、勝ったよ! あいつら全員いなくなった!」


「ええ、私たちの完全勝利よ。よく頑張ったわね、花梨」


 私は娘の頭を撫で、強く抱きしめ返した。

 半年前から張り詰めていた緊張の糸が切れ、目頭が熱くなる。

 けれど、感傷に浸っている場合ではない。まだやるべきことがある。


「さあ花梨、大掃除よ! あいつらの痕跡を、塵一つ残さず消し去るの!」


「うん! やる!」


 私たちは家の中へ戻ると、直ちに「浄化作戦」を開始した。


 まずはリビング。

 美月が持ち込んだ派手な色のクッション、義父のゴルフバッグ、義母の健康器具。

 それらを全てゴミ袋に詰め込む。


「これ、どうする?」


「着払いで実家に送り返してやりましょう。受け取る人がいなければ処分されるだけよ」


 次にキッチン。

 義母が勝手に並べた調味料や、安っぽい食器を全て廃棄。

 シンクも冷蔵庫も、アルコール除菌スプレーを一本使い切る勢いで磨き上げる。


 そして、二階。

 花梨の部屋を占拠していた美月の荷物を、廊下へ放り出す。

 布団もシーツも即座に粗大ゴミ置き場へ。

 窓を全開にし、淀んだ空気を入れ替える。夜風がカーテンを揺らし、カビ臭いような義姉の香水の残り香を運び去っていく。


「あー、スッキリした!」


 花梨が自分の勉強机を撫でながら、晴れやかな笑顔を見せる。


「私の部屋、おかえり!」


 最後に、私は玄関に盛り塩をした。

 二度と穢れたものがこの敷居を跨がないように。


 時計の針は深夜を回っていたが、私たちの心は朝日のように明るかった。

 リビングのソファに二人で並んで座る。

 そこにはもう、誰の遠慮もいらない、私たちだけの空間が広がっていた。


「……お母さん、お腹空いた」


 花梨が小さく呟く。そういえば夕食もまともに食べていなかった。


「そうね。……あいつらが残していった寿司があるけど、どうする?」


「やだ。あいつらが触ったものなんて食べたくない」


 花梨は即答し、嫌悪感を露わにした。


「だよね。捨てちゃいましょう」


 私はもったいない精神を封印し、手つかずの寿司桶ごとゴミ袋へ放り込んだ。

 代わりに、戸棚からカップ麺を取り出す。


「今日はこれでお祝いしましょ。明日は、もっと美味しいものを食べに行こう」


「うん! 焼肉がいい!」


「ふふ、いいわよ。一番高いコースにしちゃおうか」


 お湯が沸く音さえも、心地よいBGMに聞こえる。

 湯気と共に立ち上る平和な香り。

 私たちは顔を見合わせ、久しぶりに心の底から笑い合った。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました! 皆様の応援のおかげで、無事に完結することができました。


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