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『この世界は優しすぎる』  作者: SM
第1章:転生、そして優しすぎる世界
9/22

第9話「勇者と影の来訪者」

夜市の賑わいが終わり、城下町は静かな夜に戻っていた。

遼は牧場の小屋で横になりながら、天井を見つめていた。


(占い師が言ってた「真の敵が町に潜んでいる」って……)


剣を枕元に置くと、いつものようにひんやりとした声が聞こえた。


『その言葉に偽りはない。お前は、もう選べぬ』


「うるさいな……俺は、まだ何もしてないぞ……」


遼は剣に背を向け、目を閉じた。


 


◆ ◆ ◆


 


深夜。

遼は物音で目を覚ました。


「……誰だ?」


外を見ると、牧場の門の前に、黒いフードを被った人影が立っていた。


剣が低く唸った。


『来たぞ、勇者よ』


 


遼は剣を手に、小屋を出る。


影の人物は、霧のように揺れながら、遼を見つめていた。


「勇者……勇者……」


低い声が、夜風に混じって聞こえる。


「……お前が、真の敵か?」


「違う……私は……証人……」


遼が剣を構えると、影がひらりと避け、牧場の奥、例の「影の厩舎」へと消えていく。


「待て!」


 


◆ ◆ ◆


 


影の厩舎の扉は、開け放たれていた。


遼が中へ入ると、ゴロゴロゴーレムが、目を閉じて横たわっていた。


「……ゴーレム?」


その隣に、影の人物が立っていた。


「……勇者よ……見よ……」


影が手をかざすと、ゴーレムの体に黒い紋様が浮かび上がる。


それは、まるで呪いの鎖のようだった。


「この町の人々は、優しい……だが、その優しさは、この呪いに支配されている」


「どういう意味だ……」


「お前が、その鎖を断ち切れるかどうか……見せてもらおう」


そう言い残すと、影は霧に溶けるようにして消えた。


 


◆ ◆ ◆


 


翌朝。


遼は眠そうな目をこすりながら、リオに声をかけられた。


「勇者様ー! 朝食できましたよー!」


「ああ……ありがとう……」


テーブルにつき、温かいスープをひと口飲む。


(この人たちが「呪いに支配されてる」って……そんな風には見えないけどな……)


剣が、ぼそりと囁く。


『真実は、勇者の剣でしか見えぬ』


「……俺が、確かめるしかないってことか……」


遼は剣を握りしめ、深く息をついた。


 


——第1章 第9話【終】



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