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帰還

1972年秋、サン・マグヌスの空には変わらぬ熱帯の太陽が照っていたが、その空気には確かに「節目」の匂いがあった。三期に渡って政権を担ったビセンテ・アメナバール大統領が、ついにその任を終える時が来たのだ。


海底油田という希望が国中に灯る中、**「産油国としての未来」**が国民の期待を集めていた。プラットフォームの建設には10年近くを要するとの見通しだったが、それでも人々は「サン・マグヌスの夜明け」を信じた。


そんな中、再び姿を現したのがシルビオ・デルガド元大統領だった。




一 灰の中から

かつてサン・マグヌスをアメリカとの連携へと導いた指導者。大統領退任後も、政財界の重鎮として影響力を持ち続けてきたデルガドは、すでに70代に差し掛かっていた。しかしその声は、依然として強く、言葉には重量があった。


デルガドは出馬声明の中でこう語った。


「私は、静かに余生を過ごすはずだった。だが我が国が資源という未来を手にした今こそ、私は再びその舵を取らねばならぬ。混迷と分断を越え、国を導く義務がある。」




二 支持基盤

デルガドの再出馬を後押ししたのは、宗教右派と軍部だった。


アルナルド大司教を筆頭とする聖職界は、共産主義の影を警戒し「国家と信仰の保護者」としてデルガドを支持。国防相を退いたアグスティン・セレス将軍も、水面下で軍票を束ねた。


「デルガドのような男が、混乱の中での国家の舵取りにふさわしい」――セレスの一言が、軍人たちの票を動かした。




三 選挙戦と圧勝

左派は長年の弾圧とSLAの影により組織が弱体化し、候補を出すことすら困難だった。野党となった宗教穏健派が候補を擁立したものの、デルガドの経験とネットワークの前に支持は伸びなかった。


選挙結果は予想通りのデルガド圧勝。退陣を控えたアメナバール大統領は「国家の未来は安泰だ」と語ったが、政治評論家の中には「過去への回帰だ」と懸念を示す者もいた。




四 再び玉座に

就任式でデルガドは壇上に立ち、国民に訴えた。


「私は約束しよう。サン・マグヌスは決して奴隷にならぬ。だが我々は現実と共に歩む国民であり、夢とともに生きる国家である。神と祖国と自由の名のもとに、この国を導く!」


宗教歌が国中に流れ、教会の鐘が鳴った。サン・マグヌスの再建者デルガド、再び大統領に就任。


だがその足元には、油田開発という新たな資源を巡る国際利権と、依然として燻る国内の分断という火種が確かに存在していた。

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