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第7話 家族全員、心が読めるようになった?

奈々子と古川が現れると、場の奇妙な雰囲気が一瞬にして断ち切られ、皆が二人に注目した。


「お帰りなさいませ、朔様、奈々子様」と執事が二人の上着を受け取った。


「お帰りなさい。」古川母は二人が入ってくるとすぐ、緊張した様子でソファから立ち上がり、奈々子の手を取ってそっと二人の表情をうかがった。


古川父も緊張しながら目を向けたが、表向きは威厳を保っていた。


今朝、奈々子が出かけた際、古川母は心配で古川に尋ねたが、古川は冷たい表情で「今回は母さんが関わらないで」と答えた。

古川父もただため息をつき、息子に任せることにした。


今回の件は奈々子の大きな失態だったため、息子が対応しなければ皆に示しがつかない。

最悪の場合、二人は離婚するだろうと考えていた。そもそも今日、大娘夫婦を家に招くつもりはなかったが、大娘も何か辛いことがあったようで、慌てて帰りたいと電話で話したため、仕方なく来てもらったのだ。


ところが、大娘夫婦、山本智子(元:古川智子)とその夫山本雅がとんでもない爆弾を持ち込んで来たのだ。


奈々子は記憶の中の付き合い方に従い、淡々とした様子でうなずき、世間知らずで孤高な雰囲気を漂わせていた。

古川朔も他のことには触れず、まずは大姐一家に挨拶をした。


奈々子は興味深そうに見ていたら、ソファには数人が座っていた。


意地悪そうな顔つきの年配の女性が八、九歳の男の子を抱きしめており、宝物のように可愛がっている様子だった。


小さな男の子は不安そうに見回しながら、手に持ったルービックキューブを握りしめ、少し痩せて見えた。


隣には、金縁眼鏡をかけた細身の男性が、微笑んでいるが冷たく距離を置くような雰囲気を漂わせて座っていた。

その男性の隣には、少し無理な笑顔を浮かべた温和で親しみやすそうな女性がいた。


古川父と古川母は、当面は古川朔と奈々子に結果を尋ねず、まずは大娘家の問題を解決しようと考えていた。


その時、年配の女性の古臭い声が響いた。「二人は離婚したのかい?どうして離婚したのに一緒に帰ってきたんだ?」

場が一気に冷え込んだ。


「お母さん!」智子がすぐに声を上げて制止したが、品の良い育ちのため、声にはまったく迫力がなかった。


彼女は不安げに奈々子を見やった。

一方、夫の山本雅は一言も発せず、まるで他人事のように母親の不適切な発言を放置していた。


古川朔は眉を少しひそめたが、礼儀正しく「離婚していませんから、一緒に帰るのが当然です」と答えた。


これに対して、古川父と古川母は驚き、嬉しそうに二人を見た。

ようやく良いニュースがあったのだ。


山本母は不審そうに「上流階級の社交界では彼女が過ちを犯したと広まっているけど…」と言った。


古川は不機嫌そうな顔を見せ、説明しようとしたが、奈々子が突然口を開いた。


「山本家がいつから上流階級に入ったんですか?内部の情報まで耳に入るようになったんですね?」


山本家はもともと一般家庭で、ただ山本雅が医師として成功し、青年才俊と見なされていただけだった。ここ数年は古川家の援助で共同経営の私立病院を開設し、やっと少しばかりの資産を築いたに過ぎず、豪門の仲間入りには程遠い。


山本母は顔を青ざめ、声を震わせた。


「何を言ってるの!?私たち山本家を侮辱するなんて!」


奈々子は無邪気な表情で手を振って


「年を取ると敏感になるものですね。私、どこか間違って言いましたか?どうしてそれが山本家への侮辱になるんですか?」と答えた。


【侮辱してるんだよ、侮辱してるんだよ。尻尾を振って大物ぶるなんて、いい気になってるね。】


古川は彼女の心の中の罵りを聞き取ると、口を挟むのをやめた。


山本母が無礼を働いた以上、表面上の和を保つために妻を犠牲にするつもりはなかった。


そして奈々子をそっと座らせて話を続け、立っているのも疲れるだろうと思った。


しかし座った瞬間、古川は、対面の古川父と古川母が驚愕した表情を浮かべているのが見えた。


その表情は…

古川父と古川母は目を疑った。


聞き間違いか?あの傲慢な言葉は確かに奈々子の声だったが、彼女は口を開いていないようだった!


古川の表情が微妙に変わり、すぐに大姐の智子に目を向けると、智子もまた、奈々子をぽかんと見つめていた。


一方で、奈々子と山本母の戦いは続いていた。山本母は激怒し、顔の皺まで歪んで「本当に教養がない子ね!」と罵った。


この言葉は、その場にいる古川家の顔を一瞬で曇らせた。


元々、奈々子の実家である清水家は古川家の旧知であり、奈々子は数年古川家で過ごしてから古川家に嫁いでいる身だ。


彼らにとって、他人が教養を説くなど許しがたいことだった。


古川母が反論しようとしたが、奈々子が先に


「それもそうですね。どうやって下層と対応するか教わったことはないですし。」

と冷ややかに言い放ち、山本母を頭からつま先まで嫌悪を込めて見回した。


【いつも私を嘲笑い、古川朔に親戚の娘を紹介しようとしたりして、このクソばばあがどれだけきれいごとを並べるか見物ですね。】


以前は古川に関することでは奈々子も発狂したりしたが、他の人にこうして直接対立することはなかった。


普段は付き合いにくく、基本無視する姿勢だったため、これが初めての直接の「対戦」だ。だから山本家の人々だけでなく、古川家の人々も驚愕した。


さらに古川家が驚いたのは、彼らが奈々子の「心の声」を聞いていたことだった。


古川父と古川母は驚愕して見つめ合い、自分たちだけではないことに気づき、古川に視線を送ると、古川がそっと首を横に振る仕草を見せた。


それで彼らは自分たちの問題ではないと確信した。


そういえば、山本母は毎回家に来るたびに、息子の妻である奈々子にこんなに酷い態度を取っていたのだ。無礼極まりない。


奈々子が目上の人に対して少し行き過ぎたと思っていた古川父と古川母も、すっかり彼女の味方になった。


プン!うちの息子夫婦が離婚するなんて呪わないでよ!


その時、智子が驚きを抑えきれず、「奈々子、あなた…」と口を開いた。


「姉さん」古川が突然、鋭い視線で何かを制止するかのように声をかけた。


しかし他の人には、奈々子が山本母を罵ったのを智子が止めようとしたが、古川に警告されたように見えた。


智子は戸惑い、奇妙な出来事に口をつぐんだ。


一方、ずっと黙っていた山本雅は、奈々子の「下層と対応する」発言に刺され、怒りを感じた。


母親が「あなた、あなた」と言いながら気絶しそうになるのを支え、不満げに智子を見やった。


冷たい眼鏡の奥に鋭い光が宿り、露骨に命令を含んでいるように見えた。


こんな口汚い言い争いの場面に出る必要はない、恥ずかしいからだ。だらか、妻の智子を利用して…


智子は困惑しながら、最終的に「お母さん、奈々子はまだ若いし、無邪気なんですよ…悪意はないんです」と言った。


24歳の奈々子は、智子の取りなしに思わず笑いそうになった。


だが、山本雅は智子の対応に不満そうな目を向け、叱責の表情を見せた。


智子は慌てて目をそらした。


古川父と古川母も娘が困惑するのを見かね、古川母は「山本さん、若い者と張り合わないでください。うちの嫁は今日は機嫌が悪く、少し口が過ぎたようです」と言った。


この言葉は一方的に偏ったものだったが、奈々子とは違い、古川母がこう言ったので、山本家も古川母と口論することはできなかった。


だが山本母小声でぼそっとつぶやいた。

「ふん、本当は今日おめでたい話をしに来たのに、空気が読めない人がいて、すっかり水を差されたわ。」

しかし、誰も彼女に構わず、むしろ無視され、彼女だけが気まずさを味わう羽目になった。


古川母は振り返り、優しい声で奈々子に話しかけた。「こんなに遅く帰ってきたけど、奈々ちゃんはもう食事したかしら?」


奈々子は「奈々ちゃん」と呼ばれ、少し鳥肌が立った。血のつながりがない彼女にはこんなに親しい呼び方は初めてだったが…


【古川母って本当に良い人だな。】


古川母はこの心の声を聞いてすごく嬉しくなった。普段、奈々子があまり親しげに接してくれないので、彼女の心の中で自分がこう思われていたとは驚きだった。きっと恥ずかしがり屋で、表現が苦手な子なのね。


奈々子が首を振り、まだ食べていないことを伝えると、古川母はすぐに尋ねた。「何が食べたいの?」

奈々子は「何でも」と答えた。


すると古川母はすぐに、

「桜田さん、奈々ちゃんに三品とスープを用意して。普段奈々ちゃんが好きな料理でお願いね。ご苦労様」と執事に頼み、嬉しそうに奈々子の手を取りながら、

「この子、こんなに遅くまで連れ回して、先に食事をさせてあげればいいのに。お腹が空いたでしょう?」と言った。


その横で古川は苦笑して、「母さん、俺も一緒だったんだけど、まだ食べてないよ」と答えた。


古川母はそれを聞き、「朔の分も御願いね」とついでのように付け加えた。

古川:「……」


奈々子は笑いそうになったが、古川の視線を感じ、こらえた。


その時、彼女の目の前にカットされたフルーツの盛り合わせが差し出された。

「とりあえずすこしフルーツでも食べて。」古川父は低く落ち着いた声で、自然な動作でおもてなしのフルーツを奈々子の方へ押し出した。


奈々子は礼を言った。


【古川父も若い人に気を配ってくれる、本当に優しい夫婦だな。】


古川父は姿勢をさらに正した。


智子は、奈々子の心の声と両親のほほえましい反応を聞いて、少し気持ちが和らいだ。


しかし、すぐに不機嫌そうな二つの視線が彼女に重くのしかかり、息苦しさを感じた。


彼女は、姑と夫が自分を無能だと思い、実家の家族からも無視されていると感じていることを知っていた。でも、実家の家族がそう思っていないことも理解している。


古川は、姉が困っていることに気づき、視線を変えた。


初めて少し臆病そうにルービックキューブを弄っているあの子どもに目を向けると、自閉的で自信がないように見えたが、完成間近のキューブを見ると決して頭の悪い子ではないようだった。


自分や弟も子どもの頃ルービックキューブが好きだったな。

古川は突然以前奈々子が言っていた「面白い話」が思い出した。

って彼は口を開き、「この子は誰?」と尋ねた。

ここまで読んでありがとうございます!

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