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第21話 真実

【ってことは、この件は斎藤日奈が初めて斎藤夜のものを奪ったことになる。】


古川陽明は顔色を少し変え、そっと斎藤夜を見た。


古川陽明と斎藤夜は同級生で、あの事件が起こった時、夏のキャンプがちょうど斎藤日奈が治療を受けていた国で行われていた。


当時、二人はまだ十歳の子供だったが、二人の祖母の取り決めにより婚約者となっていたため、古川家と斎藤家は自然と面会を重ねることになった。


それが、古川陽明が初めて病室に閉じ込められ、まるで小さなお姫様のように育てられている斎藤日奈を見た瞬間だった。


【斎藤日奈は初めて古川陽明のようなカッコイイな男の子を見て、彼が姉の婚約者だと聞いて、姉のものだと思っていたので、古川陽明と一緒にいたいとわがままを言い出した。】

【嫉妬って怖いものだ!斎藤夜よりも、父母から完璧な愛を受けていたはずなのに、それでも斎藤夜のものを奪おうとした。なぜなら、斎藤日奈は斎藤夜がいなければ、それらのものが全て自分のものだと思っていたからだ。】


古川陽明は息を呑んだ。

違う、日奈はそんな子じゃない、彼女は……


その時、斎藤日奈は確かに病室で泣きわめいていた。

古川陽明はただ、病気の女の子が可哀想で、誰かと遊びたがっているのだろうと思った。

そして、斎藤夜と似た顔を見て、彼はとても同情した。


でも、今、奈々子が言ったことを思い出すと……斎藤日奈は父母から完璧な愛を受けていた……その時、斎藤夜は何を得た?

彼女には、彼……彼女の婚約者だけだ。

その考えが頭に浮かぶと、古川陽明はまるで頭を殴られたような感覚に襲われ、頭がぼーっとした。


【本来は古川陽明と斎藤夜が参加するはずだったイベントだが、入院していた斎藤日奈がどうしても参加したいと言って、姉を連れて行かせないようにした。そのイベントは急に参加することはできないから、最終的に斎藤家の両親は斎藤夜に参加を諦めさせ、代わりに斎藤日奈を連れて行かせ、古川陽明に世話を頼んだ。】


古川陽明は顔色が複雑になり、彼はその時大した事ではないと思ったため。斎藤夜のことを考えず、即座に斎藤家の両親の頼みを受け入れた。

彼は当然、斎藤夜が妹を優先するべきだと思っていたし、彼女もそうするだろうと思っていた。

その時、斎藤夜がどんな表情をしていたのか、古川陽明はもう覚えていなかった。


当時、古川家は、姉が病気の妹に遊ぶチャンスを与えたと聞き、姉妹の深い絆を感心していた。

しかし、実際には両親が強制的に決めたことで、妹が姉を排除した結果だった。


そう考えると、古川陽明が事故に遭った時、そばにいたのは斎藤日奈のはずで、命を救ってくれたのはなぜ斎藤夜だったのか?


古川陽明もそれが理解できなかった。

彼はまだ覚えていた。


彼らのキャンプは茂みの多い森の中で、スタッフと一緒に森を散策し、植物を識別し、野外でのサバイバル技術を学ぶというものだった。

でも、いたずら好きで、斎藤日奈とこっそり行動していた。

結果、うっかり急な坂道から転げ落ち、重傷を負った。

その時、斎藤日奈が山の上から泣きながら叫んでいたのを覚えている。


意識が朦朧として、もうすぐ死ぬかもしれないと思ったその時、再び斎藤日奈の姿を見た。

斎藤日奈は泣きながら彼を見つけ、必死に彼を背負って山の中を引きずり出し、救助隊に出会うことができた。


日奈に違いない。


【多分斎藤家夫婦もかなり無力感を感じていたのだろう。古川陽明は人の世話を全くできないし、斎藤夜のように体調が良ければまだしも、斎藤日奈はどうだろう?古川陽明が事故に遭った後、斎藤日奈は泣きながら戻り、体力が弱くて倒れてしまい、外で待っていた斎藤家の両親は慌てて病院に運んだだけで、古川陽明が事故に遭ったことすら知らなかった。】


古川陽明の瞳孔が縮まった。


【斎藤家夫婦は本来、斎藤夜と一緒にキャンプ場の外で待っていたが、次女が戻ったことで長女がまだ車に乗っていないことを忘れてしまい、斎藤夜はキャンプ場の外に残された。】


【古川陽明の運が良かったね。この世界で、古川家の人々を除けば、おそらく斎藤夜だけが彼を心から思っていたに違いない。妹の日奈が出てきたので、古川陽明が出てくるはずだと思い、入って行った。その時、活動はまだ終わっていなかったので、誰も古川陽明が事故に遭ったことを知らなかった。もし斎藤夜が再び戻らなかったら、みんなが気づいた時には、古川陽明はすでに失血でショック状態になっていたかもしれない……】


古川陽明は胸に矢が刺さったように感じた。

聞いていた古川家の人々も心の中で恐怖を感じていた。

彼らは目を合わせ、感謝の気持ちで斎藤夜をそっと見つめていた。

そのせいで、ゲストたちも、婚約が本当に変わるのではないかと憶測を始めた。


奈々子は興味津々で、さらに面白そうに見守っていた。


【救助隊は古川陽明の行方不明を知ると、すぐに行動を開始した。本来なら斎藤夜は参加しないはずだったが、彼女は密かについてきた。そして、古川陽明の物と思われる忘れ物を見つけ、山の中で昏睡状態の古川陽明を発見し、彼を背負って出てきた。その驚きと恐怖で、疲れ果てた斎藤夜はその場で高熱を出し、病院に運ばれた。】


これで、古川家の人々は全員、頭の中に疑問符が浮かんだ。

だから、どうして……それが斎藤日奈になったのか?


【小さな女の子がこんなにも多くのことを乗り越えたが、熱が下がるとその出来事をすっかり忘れてしまった。そして、古川陽明は自分が見たのが斎藤日奈だと思い込み、目を覚ました後、斎藤日奈を探し始めた。斎藤家はそのひらめきを得て、嘘が始まった。最終的に、斎藤夜も妹が古川陽明を助けたから疲れて病気になったと思い込んだ。そして、キャンプのスタッフにとっては、倒れていた小さな女の子が回復した後、心配して戻っただけのことだった。すべてが完璧に繋がり、証拠がなければ完全に無罪だ。まさに…なんてドラマティックなんだろう。】


古川陽明は体が固まったように感じた。

奈々子が話していることはあまりにも現実的で、彼のすべての記憶が崩れそうな気がした。


でも、何年もかけて積み上げた事実が嘘だと信じたくなかった。

斎藤家の両親はなぜこんなことをしたんだ?

古川家の人々も困惑していた。彼らは斎藤家の両親の行動を理解できなかった。


奈々子は心の中でしばらく文句を言った後、やっと話した。

【実は前から彼らは婚約相手を交換したかったんだ。次女の幼稚で自己中心的な言葉だけでなく、斎藤夜が健康で、どんな人と結婚しても問題ないと考えていた。しかし、斎藤日奈は体が悪いので、良い家に嫁いで、彼女を支え、病気を養い、彼女を嫌わないようにしなければならないと考えたんだ。】


古川家の人々はようやく気づいた。名門家の子供たちは、家族のために結婚するのが当たり前だった。


斎藤家には二人の娘しかいなかったので、ビジネスための結婚が避けられなかった。


本来、古川家には婚約を結ぶの習慣はなかった。

斎藤家の祖母は古川家の祖母と何年も粘ってからこそ婚約が決められた。


【その時、斎藤家の祖母が斎藤夜の婚約者に古川陽明を選んだと聞いて、彼らはとても不満だった。祖母が長女のことばかりを考え、次女のことを考えていないと思った。斎藤家の祖母はすぐに反論して言った:『どうせあなたたちは次女ばかり気にして長女のことを考えない。私が生きているうちに長女のことを考えなかったら、いつになったらあなたたちが長女のことを考えるのか?』】

【ああ、いいこと言った!】


古川家の人々は心の中でため息をつき、古川陽明をちらりと見た。

彼の顔色は暗く、信じているのかどうかは分からなかった。

なにしろ、古川陽明は頑固な性格だから。

古川陽明はやはり信じたくなかった。


奈々子が言っていることはなんだ!証拠はあるのか?奈々子の言うことがすべて正しいのか?


斎藤日奈が彼を助けたという真実の方がもっと納得できる。

古川陽明は奈々子を激しく睨みつけ、何とも言えない怒りを感じ、もうすでに言葉を失いそうになった。


その時、古川朔が突然彼の視界を遮った。

古川陽明は不満げで腹を立てながらも、古川朔を見つめた。


古川朔は少し眉をひそめた。

愚かな弟にはかかわりたくないが、先ほど奈々子の心の声を聞いたとき、確かに証拠とは言えない証拠を発見した。


古川朔は考え込み、周りがまだ騒がしいうちに低い声で言った。


「君が10歳のとき、今の望よりだいぶ背が高かっただろう。」


古川陽明はその言葉に気持ちが遮られ、兄を不思議そうに見た。


古川朔の目が沈んだ。

「君を背負って歩ける女の子は、あまり多くないんじゃないか?」


健康な斎藤夜。

病弱な斎藤日奈。


誰が君を背負って山の中を出ていけるんだ?

古川陽明の顔から血の色が少しずつ消えていった。

もしかしたら、人の潜在能力、生命の奇跡かもしれない、もしくは……


斎藤夜と斎藤日奈の顔が古川陽明の頭の中で次々と浮かんだ。


斎藤夜は棚に手を挟まれて冷や汗を流しながらも、何も言わずに耐えていた。

斎藤日奈は足首をひねって、目を腫らして泣いていた。

斎藤夜は実験器具を運ぶとき、男の子に手伝いを申し出られたが、断って、細い体でも持ち運んでいた。

斎藤日奈は演技で子供を背負うと、3秒しか持たず、その後は電話で「疲れた」と文句を言い、彼におねだりして脚本を変更してもらおうとしていた。

……

歓迎会は、まるで映画のように進んでいき、最終的には終わりに近づいていた。



「斎藤社長も帰りですか」と誰かが聞き。

斎藤先生は笑いながら言った。「少し用事がございますので、残ります。」

それを聞いた皆はあの婚約がどうなるのか気になって仕方がなかった。

帰ろうとしている人たちは名残惜しそうにしていた。


しかし、その時、突然に誰かが乱入してきた。

「夜、夜!聞いたぞ、お前たちが婚約を解消するんだってな!それなら今日は俺が斎藤家に結婚を申し込む!どうせお前は俺のものだ、もう俺が責任を取る!!」

斎藤夜と古川陽明は同時に顔を上げ、その方向を見ると、化粧室で斎藤夜を困らせていた男が酔っ払って再び現れた。


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